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十剣の魔導師  作者: 名瀬
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第12話 「訓練場」

訓練場の使用は〝予約制〟である。


理由は三つあり、

審判員の手配と魔物の手配、

そして使用順によるトラブルを未然に防ぐためだ。

(一パーティ当たりではなく全体で)一日に三戦まで予約が出来、

入学・進級したばかりの慌しい期間という状況から、

今日中に彼らはレベル3まで受けられる事となった。

(勿論、勝ち進んだらの話、ではある。)


「うわぁ、緊張してきた・・・・・・。」

思わず、ぶるっと身体を震わすクノ。

訓練場は魔物を扱うという事もあり、地下の奥深い所に存在している。

魔物の搬入については、軍人が転移魔法により運び込む。

「レベル1は、ウォーミングアップに過ぎない。

問題は、レベル2から・・・・・・。」

ユクールも少なからず緊張しているようだ。

「ね、ミラ君は緊張しないの?」

二人の空気を察した会長が、悪戯っぽく聞いてくる。

「いえ、緊張してますよ。ただ現実味がないというだけで。」

なんとも白々しい台詞ではあったが、会長の様子を見るに、

どうにか誤魔化せたらしい。


そんな会話をしている内に、最奥部の訓練場へとたどり着いた。

(魔法加工された)小さな扉を開けると、

地下とは思えない程の大きな空間が目の前に広がっていた。


「・・・・・・聞いてはいたけれど、これは・・・・・・。」

会長も驚いているようだ。

広さで言えば、小中学校の敷地面積。

しかし、特筆すべきは、その天井の高さ。

「ビル何階建て分の高さなんだろ、これ・・・・・・。」

クノがあんぐりと口を開けて、見上げる。

高さ五十メートルの天井が、更に緊張感を高める。

「・・・・・・一体、どんな敵と戦うってんだ。」

「・・・・・・巨体モンスターに、飛行モンスター。

様々な種族との戦闘に対応出来る大きさ、らしい。」

ミラのつぶやきに、ユクールが答える。

「物理だけなら兎も角、魔法で戦うとなると、

これくらいの広さは必要、だと思う・・・・・・。」

そんな彼女も、驚きを隠せないようだ。


「よく来ましたね、生徒のみなさん。」

ふと気付くと、そこには軍人らしき人が立っていた。

「・・・・・・初めまして、イズと申します。

本日はよろしくお願い致します。」

ハッとして襟を正し、会長は丁寧に頭を下げる。

続いて、他の三人も短い挨拶をする。

「うんうん、礼儀正しいのは好きだよ。」

ニコニコと笑顔を絶やさない。

ミラは、この男と何度も面識があった。


「僕はノゼア、防衛軍に所属する者だよ。

一日でレベル3まで挑戦するんだねぇ、こんな事今までなかったよ。」

笑う中に値踏みするような目つき。

それに気付けたのはミラ一人だけだった。


「さっそくだけど」と前置きをし、広い空間に十体の魔物がその姿を現す。

「え、あんなに・・・・・・!?」

「クノ、大丈夫。あれはとても弱い。」

「遠距離攻撃は私に任せてね。」

「わかりました。」


そして、四人の長いようで短い三連戦が始まった。


現れたのは十体とも〝ゴブリン〟で、

危険度E(最低ランク)に設定されている魔物だ。

「攻撃パターンは物理攻撃のみで、離れていれば、脅威ではないわ。」

「安心して、クノさん。

危なくなっても、きっとミラ君が守ってくれる。」

「は、はい・・・・・・!」

「会長・・・・・・。」

冗談を言ってる間にも、魔物たちはこちらへと向かってきている。


・・・・・・ミラは戦力差を冷静に判断し、ここは守りに徹することに決めた。


一つは、対召喚獣との戦闘経験で、彼女達の能力に信頼を寄せたからだ。

(レベル4相当を相手に、倒れずに戦い続けた。)


そしてもう一つは、やはり戦闘スタイルだ。

パーティが危険だと判断した場合は、その限りではないが、

極力、戦い方を見られたくは無かった。


・・・・・・仮にイズの目は誤魔化せたとしても、

何度も同じ戦場で共に戦った防衛軍大将、

ノゼアの目を誤魔化せるとは、到底思えなかった。


戦いは、意図せずとも自分のクセが出てしまう。

今日の三連戦で、そのクセは出したく無い・・・・・・。

明日のレベル4戦では担当官も変わっているだろうから、

何とか今日のところは、防御に徹したい。


それがミラの考えだった。

そして、ミラが察した通りかどうかはわからないが。

ノゼアは、ミラの動きにしか目を向けてなかった。


(彼、だね・・・・・・試験で部下を倒したというのは。

お手並み拝見といこうではないか。)

挿絵(By みてみん)

本来、大将のような位の高い軍人が、

訓練場の担当官としてやってくる事は無い。

勇者たちが死に、その後間もなく、優秀な人間が現れた。

ノゼアは何かしら、繋がりがあるのではないか。

そんな根拠のない直感が、彼の中で渦巻いていた。


・・・・・・勝敗は一分で決していた。

言わずもがな、学生たちの勝利に終わった。

ユクールが六体、イズが四体。

息を切らせる事もなく、あっさりと片付けていた。


「さすが、やるねぇ。

二日でレベル4まで挑戦しようと考えただけはある。

・・・・・・さぁ、休憩は挟むかい?」

四人は目で会話をし、イズがノゼアに答える。

「いえ、レベル2の準備をお願い致します。」


レベル2、危険度Dの〝オーガ〟三体、危険度Cの〝サハギン〟二体。

数は減るものの、先ほどよりも格段に戦力が上がった。

しかし、クノの活躍もあり、パーティは無傷で勝利した。


「・・・・・・すごいね、あっという間じゃないか。」

そう声を掛けるノゼアの目の奥は、冷静なままだった。

「ありがとうございます。

レベル3・・・・・・お願い致します。」

パーティに目をやり、イズが答える。


当然だが、レベル3では更に魔物の危険度が増す。

そして、ミラはどこか楽観視していた。

訓練場と言っても、所詮学生の戦闘訓練。

レベル3までは自分が手を出す事も無いだろう・・・・・・と。


しかし、その考えはすぐに、改めさせられる事となった。

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