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序章

 およそ三十年前。

 日本から世界へと大きな変革がもたらされた。

 二〇二〇年代前半、当時日本では自国の領海排他的経済水域りようかいはいたてきけいざいすいいきに眠る深海資源の発掘が盛んに行われていた。

 ありの大群のように多くの掘削船が海に出払い、石油や天然ガスなどのエネルギー資源、リチウムやコバルトといったレアメタルなど、国の財布の懐を温めるほどの量が連日採掘されていた。

 深海発掘ブームの到来である。

 そんなブームの中、ある新種のレアメタルが発見された。

 フォーチュンメタル略してFMエフエム、そう名付けられた希少金属は人や草花などの自然物の意思を読み取り、従来型の情報端末機器の演算速度を何十倍、何百倍と加速させる性質を有していた。

 珍しくも優れた性質を持ったFMが情報端末機器に使われ、その機器が一般家庭にまで普及するのに有した時間は電光石火の如く急速的なものだった。

 必然的に、技術革新が起こった。

 ARやホログラフィなど、近未来的映像技術の発展と急速な宇宙開発などに伴い、それらの関連事業が増加した。

 街中で立体映像を見かけることなど今となっては何ら変哲も無い日常の風景だ。まして宇宙エレベーターという大層な塔を世界各国が所有するのが当たり前の時代になったのだ。

 またFMが社会へと急速に普及していくのと時を同じくして、FMと同等の世界に衝撃を与える新種の粒子が発見されていた。

 スペルゲン粒子。

 通称スペルゲンと呼ばれる一固体では何の意味もなさないその粒子は、同じ仲間であるスペルゲンが接近するだけで勝手に結合する。更に、結合したスペルゲンに回転を加えてやると爆発的なエネルギーを生み出す。

 その質量は、原子力発電で生み出すものよりはるかに多い。

 放射線廃棄物を排出することなく無限大のエネルギーを生み出し、尚且なおかつ、有害物質によって汚染された部分に放つと瞬時に汚染物を吸収し浄化を行ってくれる。

 当然のことながら、そんな万能粒子を人類が放っておくはずもなかった。

『エコでクリーンな新エネルギー』というキャッチーな宣伝文句でスペルゲンは石油に替わる主要資源として全世界に広まっていった。

 それからは早かった。

 スペルゲン粒子が発見されてからわずか数年、世界のエネルギー事情は必然とスペルゲンを中心としたものへとシフトしていった。

 自動車や航空機などの様々な乗り物の動力源として、電力を生み出す主要資源として、また携帯型端末の半永久持続電池として活用されていくようになった。

 世界的な新エネルギー革命である。

 FMとスペルゲン粒子の発見と実用化。これら二大要素が人類を新たなステージへと導き、文明を急速に発展させていった。

 世界の中心で世界の警察であるアメリカが超大国の座を日本へと譲り渡した理由も、この二大要素がもたらした結果だと今日では言われている。

 理論上仮説に過ぎなかったタキオン粒子の存在が確認された理由の一つに、FMとスペルゲンが大きく関係していると述べる学者もいるほどだ。

 科学技術の発展。

 新エネルギー革命。

 超大国日本の誕生。

 そして、FMとスペルゲン粒子は人類に副産物をもたらした。

 超能力。

 そんな空想じみた力が現実の技術として確立したのだ。

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