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異世界はスマートフォンとともに。  作者: 冬原パトラ
第32章 めぐり逢えたら。
607/637

#607 旅行の準備、そして出発。





「さて、明後日には『日本』に出発するわけだけど、みんな注意することはわかったかな?」


 僕が尋ねると、ソファに座った十人の子供たちが一斉に『はーい!』と答えた。返事はいいな。返事だけは。


「ステフ、赤信号は?」

「とまれ!」

「正解!」


 正解したステフに周りから拍手が飛んでくる。ステフも、むふー、とドヤ顔でふんぞり返っていた。

 ユミナたちの日本教育はそれなりに覚えているようだ。交通ルールや一般常識の他に、魔法を使ってはいけない、というルールもある。

 使ってはいけないというか、魔素の少ない地球では使えないんだけどね。

 それでもたとえば【ファイアボール】ならライターほどの火を、【ウォーターボール】ならゴルフボールほどの水を生み出すことができる。

 こっちの世界では大したことのない力だが、向こうでそれを使っているところを見られたら大騒ぎになってしまうからな。

 最悪旅行は中止、二度と地球へは行けなくなってしまう。そこはしつこいくらいに念押しした。

 魔素がほとんどない世界であるため、琥珀たちはもちろん、ポーラ、メカポーラことパーラ、そして王冠であるシルヴァー、ゴールドもお留守番だ。あんな喋る剣やロボットなんぞ持っていけるわけがない。

 僕と奥さんたちは、世界神様が結婚指輪に付与してくれた力で、日本語どころか地球中の言葉を翻訳して会話できるが、子どもたちはそうはいかない。

 そのため、代わりになる翻訳アイテムを作らないといけなかった。

 僕が作っても付与した魔力が地球で霧散してしまい、使い物にならなくなってしまうので、工芸神であるクラフトさんに頼んで地球でも使える翻訳道具を作ってもらった。お土産に向こうの世界の工芸品を頼まれたが。工芸の神様のお眼鏡に適うものがあればいいけど……。

 翻訳機能を何に付与するかでちょっと迷った。

 初めはスマホケースを頼もうとしたのだが、この子たちだと落としそうでさ……。結局ブレスレットに落ち着いた。これで子供たちも向こうで会話ができる。


「本当に連れて行って大丈夫かなぁ……」


 今さらながら不安になってきた……。日本映画をいくつか見せて、ある程度どういう世界かということは教えてあるけども……。


「大丈夫でしょ。それぞれ一人ずつ、自分の担当の子の面倒をちゃんとみれば」


 僕の不安をエルゼがそんなふうにはね返す。

 基本的に子供たちはマンツーマンで面倒をみる、という形になった。

 当然子供の母親がその担当になるが、僕とユミナだけは変わっていて、ユミナがアリス、僕が久遠の面倒を見る。逆でもよかったのだが、やはり女は女同士、男は男同士の方がなにかとやりやすいかとこうなった。女子トイレとか女湯に入るわけにもいかないからな……。


「もしもはぐれたらすぐに電話すること。スマホを無くしたり落としたりで電話できない時は、人の邪魔にならないところに移動して、その場で僕らを待つこと。それから……」

「ちょっとダーリン。さすがに細かすぎるわよ」


 リーンから呆れたような声をかけられてしまった。ううむ、細かいかな……。

 というか余裕がある感じだけど、君らだってそこまで地球の常識に詳しいわけじゃないだろ。まあ、『外国人だから仕方ないか』で許されるレベルだけれども。

 

「ところで冬夜さん。今回も子供の姿で行くんですか?」


 リンゼがあまり考えないようにしていたことをズバリと聞いてきた。


「うーん……世界神様に聞いてみないとわからないけど、たぶんそうなるかなぁ……」


 今の姿で行くのは確実にマズい。僕を知っている人に会ったり、写真なんかを撮られて気付かれてしまってもマズいのだ。監視カメラなんかも町の至る所にあるだろうし。

 前回は新婚旅行だったからアレだったけれども、思いっきり老けて老人という姿はどうだろう?

 おじいちゃんとたくさんの孫、という設定で。無理があるか?


「いっそのこと女の子の姿とかなら誰も気が付かないんじゃない?」

「リーンさん、それ有り寄りの有りです!」

「無し寄りの無しだ!」


 悪戯っぽく笑うリーンに向けてグッと親指を立てているリンゼに思いっきり反対する。

 アホか! 万が一知り合いに気付かれたら地獄だわ! というか、父さん母さんにそんな姿を見せられっかい! 

 やっぱり子供の姿でいこう。その方がいろいろと便利だし。久遠とも一緒に行動しやすいだろう。


「そういえば久遠の魔眼ってあっちでも使えるのか……?」

「効果は薄いと思いますが使えると思いますよ。使った後の疲労も大きくなるので頻繁には使えないでしょうけれども。私の時もそうでした」


 僕の疑問にユミナが答えてくれた。一応使えるんだな。

 ただ魔眼は純然たる体内の内部魔力で発動するから、地球むこうで無理に使うと体調を壊して寝込んでしまうかもしれない。

 体内の魔力を使いきってしまうと、魔素の薄い地球ではなかなか回復できないのだ。

 久遠にはそこんところを説明して魔眼を使わないように言っておかないとな。

 子供たちも日常的に魔力を使っているから、それを使わないようにしないといけない。魔力が足りなくなって倒れたりしたら大変だ。

 年長組はまだちゃんと理解しているから大丈夫だと思うのだけれども、年少組が……特にリンネ、アリス、ステフの三人は、無意識に身体強化を使ったりするからなあ。

 戦うような機会はないと思うけど、はしゃぎすぎて暴走しないか今から心配だ……。よく見ておかないとな。

 


          ◇ ◇ ◇



 次の日、明日には出発ということでみんながいろいろな用意をする中、僕はとても大事なことに気がついた。

 お金。銭。マネー。

 地球の、というか日本のお金がない。前回の時は、世界神様にお金を用意してもらったけれども、あれはあくまで結婚の御祝儀みたいなものだと思う。

 どこかに出かけるにもお土産を買うにもお金がかかる。一文無しじゃ楽しい旅行も楽しめない。お金は絶対に必要だ。

 さて、どうするか。やっぱり金とか銀とか宝石とかをあっちで売るか?

 少しの量ならさほど問題は……って、ダメだー! 身分証がない! 売ること自体できない!

 【モデリング】を使えば硬貨は偽造することができるかもしれないけど……さすがにそれはなあ。

 それに硬貨ばかりあっても使いにくいだろうし。

 まずラスベガスあたりに行って、ちょいとイカサマでひと儲けしてから……って、いかんいかん。なんでお金を稼ごうとすると犯罪に走りそうになるんだろうな……。楽だからだろうな……。

 なら普通にアルバイトでもして……って、だから身分証がないんだよ!

 どうしたもんかと執務室で頭を抱えていると、目の前に置いたスマホが着信を知らせる。

 世界神様から? ちょっ、ひょっとして……。


『お困りのようじゃのう』

「見てたんですか……」

『お金のことなら心配いらんよ。換金はこっちでやるからの。手頃な宝石がいくつかあればよい』


 僕は言われるがまま、【ストレージ】に入れっぱなしになってた宝石をいくつかテーブルの上に取り出す。あまり大きくない方がいいか? こっちだとビー玉クラスの宝石もゴロゴロあるからなあ……。

 大きいのは避けて、地球で一般的な大きさの宝石を三つほど残す。

 目の前の宝石が、ふっ、と消えてドサドサッ、と万札の束が落ちてきた。うおう……。

 えっと、これって百万円の札束? 五つもあるぞう……。五百万……?

 スマホをスピーカーに切り替えて、目の前の札束を手にすると、ずっしりとした重みを感じる。


「これはもらい過ぎでは……」

『もらうもなにも、換金といったじゃろ。もともと君のお金じゃ』


 いや、なんだろうな……。こっちの世界で金持ちと言われるレベルになってずいぶんと経つけど、日本円で手にすると重みが違う感じがするな……。幼少期からの金銭感覚ってなかなか抜けないからな……。


「というか、このお金って使って大丈夫なお金……?」


 どっかの闇資金とか、世の中に出せないお金じゃないよね……?


『ちゃんと使えるお金じゃよ。心配せずに旅行で使いなさい』


 うん、深く聞くと悩みそうだから、ありがたく受け取っておこう。僕は札束を【ストレージ】にストンと落とした。

 あれ? よく考えたら父さんらに会った後で、代わりに換金してもらえばよかったのか? ま、まあ、なにか足がつくかもしれないから、世界神様に換金してもらった方がいいよな。


『それとな、地球に行く際の君の姿じゃが……今回は御両親に実際に会うわけじゃから、子供の姿で固定というのもどうかと思っての』


 いやっ……! そこは子供の姿で行きたいんですけども! この姿で行ったら間違いなくヘッドバット以上のものが飛んでくる気がする……!

 僕が一人(おのの)いていると、目の前にカラン、と銀色のブレスレットが落ちてきた。

 ちょっと幅広いブレスレットには、丸い水晶のようなものが嵌められている。


『工芸神と時空神に頼んでな、簡単な変身道具を作ってもらった。それを身につけて、水晶に神気を流すと子供の姿になる。もう一度流せば元の姿に戻る』

「へえ……」


 変身ブレスレットか。確かにずっと子供の姿ってのも疲れるからな……。

 僕はスルリと左腕に通し、神気を流し込んでみた。ポン! と煙が立ち、前回同様一瞬で子供の姿になってしまう。うおお、服がずり落ちる!


『あっと、言い忘れておったが、一回変身すると丸一日経たないと起動させられんからの』

「え!? ちょっ、そういうことは先に言って下さいよ!?」


 もう一度ブレスレットに神気を流し込んでみたが、うんともすんともいわない。嘘ん……。

 ブレスレットはサイズが自動調整されるのか、子供の腕でもピッタリだった。


『どうせ明日出発なんじゃからさして問題はないじゃろ。いいかね、くれぐれも元の姿で外をうろついたりしないようにの。丸一日、御両親と家の中で家族団欒でもしてなさい』


 ああ、元の姿に戻ったら、今度は丸一日経たないと子供の姿に戻れないのか。時間切れで戻ることはないようだし、元の姿になるのは父さんたちと会う時だけでいいよな。それ以外は子供の姿でいよう。

 かわいい息子のかわいい時期の姿なら母さんの怒りも鎮まると思う。というか鎮まってくれ……。


「あれ? そういえば、母さんたちは僕らが戻ることを知ってるんですか?」

『いや、知らんよ。今回は伝えておらん。…………伝えるのが怖いからの』


 小さな声て最後の方に本音を漏らす世界神様。ぬう。と、いうことは、僕らが直に会いに行かなきゃならないってことか。いや、電話してじいちゃんの家に来てもらえばいいだけなのかもしれないが……。


「気が重い、なぁ……」


 いや、会いたくないわけじゃないんだよ? お説教とセットになっているってのが、どうにもこうにも……。


『なんというか……君のおふくろさんはこちらの世界に生まれていたら、間違いなく女傑・英雄のたぐいになっていたと思うのう……』


 それな。

 あの破天荒なじいちゃんの娘だからな……。とにかく容赦がない。やるとなったら徹底的にやる。そこに妥協とか配慮とか、そんなものは微塵もない。

 昔、会社に勤めていた時、同僚の女子社員にしつこいセクハラをし続けていた上司を、社会的に容赦なく抹殺したとか父さんから聞いたことがある。

 内容を聞いたら『そこまでやるか……?』と若干引いてしまった。父さんは苦笑しながら、『冬夜君はつづりさんにそっくりだよ』と言われたが。どこが?


「自分で電話して奥さんたちと子供たちで来ているって報告するのか……。意味わからんよな……」


 まさか新婚旅行から一年ほどで子供が九人とか、なんの冗談かと思うよ。説明してわかってもらえるかどうか。

 まあ、二人とも漫画家に絵本作家なんだから、そのへんは柔軟に受け入れてくれるとは思うんだけども。


『まあ、ゆっくりと家族旅行を楽しんできなさい』

「最初の難関さえ突破すれば楽しくなるとは思うんですがね……」


 神様との電話を切って、【ストレージ】から子供用の服に着替える。取っておいてよかった……。

 久しぶりに視点が低くなると部屋が広く感じるな。


「よっ、と」


 手を伸ばしドアノブを引いて扉を開ける。やはり小さいと不便だ。

 廊下に出ると、バッタリとゴールドを連れたステフに会った。


「やあ、ステフ。旅行の準備は終わったのか?」

「……だれ?」


 ステフが怪訝そうな顔でこちらを見てくる。

 しまった。今は子供の姿なんだっけ……。


「あー、えっと、お父さんです」

「音尾サン?」

「違う。とーさまです。君の。子供の頃の」

「え!? とーさま!?」


 ステフはびっくりした顔をしつつもこちらへと駆け寄ってきた。

 僕の周りをぐるぐると回りながら、ステフにジロジロと上から下まで楽しげに見られる。興味津々といった感じだ。


「これ【ミラージュ】?」

「いや、幻影じゃなくて実際に変身してる。一日はこのままらし、」


 い、と言うやいなや、ステフは僕の手を引いて走り出す。速い速い! 廊下で【アクセル】を使っちゃいけません!


「みんなー! とーさまが子供になってるー!」


 廊下を爆走するステフに引き摺られるようにして、僕はリビングの中へと連れ込まれた。

 リビングでは明日の旅行の準備をするために、母子おやこが勢揃いしていた。

 子供たちは目を見開いて驚き、母親たちもそれほどではないが同じように驚いた顔をしている。


「え? もう子供の姿になってるの? ちょっと気が早いんじゃない?」

「気が早いというか、ちょっとした手違いでね……。まあ、どうせこの姿になるんだから、一日くらい早くても問題ないんだけど」

「ええー……。女体化パターンを見たかったです……」


 呆れたようなエルゼに一応言い訳のような言葉を口にすると、残念そうな声が双子の妹さんから放たれた。ないからな!? そんなパターンは!

 世界神様からもらったブレスレットを見せて、一応一日経てば元に戻れることを説明する。


「戻れても外に出られないんだけどね……」

「神気を使った【ミラージュ】をまとって別人に変わったら?」

「いや、途中で神気が尽きて万が一にも元に戻ったら……と考えると、ね。危険な橋は渡りたくないよ。せっかく世界神様が一年に一回は里帰りできるようにしてくれたのに」

「それもそうね……。ご両親と再会した後なら子供の姿に戻れば自由に動けるわけだし……あえて危険を冒す必要はないわね」


 リーンの提案は僕もちょっと考えたが、やはりやめておいた方が無難だろう。一日家に籠っていればいいだけなのだから、そこまで難しくはない。付き合わされてしまう子供たちには申し訳ないが。


「お父様、ちっちゃい! 弟ができたみたいですわ!」

「いや、久遠がいるだろ……」


 僕を見てアーシアがはしゃいでいる。むむむ、身長で負けているな……。確かに弟に見えるかもしれない。

 身長はだいたい久遠と同じくらいか? 勝っているのはステフだけか。

 ふむ、と僕を見ながら八雲が尋ねる。


「向こうでは我々は兄弟姉妹きょうだいということにするのですか?」

「いや、アリスもいるし、そこは普通に友達でいいんじゃない?」


 正直、自分の子供たちを『お兄ちゃん』『お姉ちゃん』呼びするのはかなりキツイ……。僕のガラスのハートが羞恥心で砕け散る。

 だいたいそれを母さんたちに知られたら、間違いなくからかわれる。それは勘弁してほしい。


「みんなの準備はできた?」

「ええ。【ストレージ】が使えませんので、なにかあったときのためのものを最低限リュックに」


 ヒルダがソファの上に九個並んだリュックに目を向ける。ずらっと並ぶと壮観だな。ここにないアリスの分も含めて、リュックはそれぞれ色が違うので、間違うこともあるまい。

 僕が【ストレージ】で預かればいいんだろうけど、万が一はぐれてしまった場合、子供たちだけでしばらくどうにかしないといけないからな。

 中身は水筒とか簡単な非常食、照明器具に雨合羽、着替えなど、内容物は防災リュックとあまり変わらない。

 このリュックに【ストレージ】を付与できたら楽だったんだけどな。いや、それ自体はできるんだけど、魔素の少ない地球に持っていった時点で効果が無くなるらしく、異空間に入れてあった品物が全て消滅してしまうらしい。


「じゃあ明日は早いから、夕御飯を食べてお風呂に入って早く寝ような」

『はーい!』


 子供たちが元気に返事をする。明日から二週間の家族旅行。何事もなく終わるといいな。

 楽しい思い出を作って、子供たちには未来へと帰ってほしい。

 ぞろぞろとリビングを出ていく子供たちを見ながら、僕はそんなことを思った。

 ……まあ、僕にはまずお説教が待っているんですけども。

 この姿ならワンチャンお説教免除の可能性もある。そこに賭けてあとは神に祈るのみ。

 いや……神様に祈っても今回は無理かなぁ……。



          ◇ ◇ ◇

 


 翌朝。

 空は晴れ晴れと澄み渡り、雲ひとつない青空。

 まあこっちの天気は旅行には関係ないんだけども、気分はいい。

 アリスとともにエンデとメル、ネイにリセも見送りにやって来た。城のみんなも見送りに来てくれている。

 久遠に駆け寄るアリスを横目に、エンデは僕を物陰に連れて行くと、


「くれぐれも、くれぐれもアリスから目を離さないように! 向こうの未開人たちが可愛いアリスに何かしようとしたら、斬り捨ててかまわないから!」

「物騒なこと言うなや」


 日本には銃刀法ってもんがあってだな。というか、地球人を未開人扱いするのやめろ。

 心配症の親父にこれ以上絡まれる前にさっさと出発するか。


「よーし、みんな集まってー」


 それぞれ色違いのリュックを背負った子供たちと、手ぶらの奥さんたちが僕の周りに集まってくる。総勢二十人だ。家族旅行というより、社員旅行の気分になってくる。

 みんな向こうに合わせての私服に着替えている。これなら変な目で見られることもない。

 転移先はじいちゃんの家だ。前回の鍵はまだ持っているし、今回も拠点にさせていただく予定。前のように世界神様が電気水道ガスなどは使えるようにしてくれている。広い家なので二十人でもなんとか大丈夫だろう。

 神気を薄く周囲に張り巡らす。これで万が一転移時に誰かいても気付かれないはずだ。よし、いくぞ!


「【異空間転移】」


 ヒュオッ、と一瞬だけ宙に浮く感じがして、すぐに地面に着地する。

 景色が一変し、煉瓦造りの古びた洋館が目の前に現れる。じいちゃんの家だ。懐かしいな。まだ一年くらいしか経ってないんだけどな。


「ここが地球?」

「本当に魔素が少ないのね」

「あのおうちがとーさまのおじーさまのおうち?」


 子供たちが初めての地球にわいわいと賑やかだ。奥さんたちも懐かしそうに洋館を眺めている。

 とりあえず中に入って、一休みするか。まだなにもしてないけど、【異空間転移】はそれなりに魔力神力を使う。一回休憩させてほしい……。


「冬夜さん、あれ……」

「ん?」

「玄関に貼り紙がしてありますけど……」


 ユミナの言う通り、家の玄関の扉には貼り紙がしてあった。豪快な筆文字で、


『来たらすぐに連絡よこせ、馬鹿息子』


 と書かれている。

 うええ、完全にこっちの動きが読まれてるやん……。

 電話はちょっと怖いので、メールでもいいかな……。



 







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■スラムで暮らす私、サクラリエルには前世の記憶があった。その私の前に突然、公爵家の使いが現れる。えっ、私が拐われた公爵令嬢?
あれよあれよと言う間に本当の父母と再会、温かく公爵家に迎えられることになったのだが、同時にこの世界が前世でプレイしたことのある乙女ゲームの世界だと気付いた。しかも破滅しまくる悪役令嬢じゃん!
冗談じゃない、なんとか破滅するのを回避しないと! この世界には神様からひとつだけもらえる『ギフト』という能力がある。こいつを使って破滅回避よ! えっ? 私の『ギフト』は【店舗召喚】? これでいったいどうしろと……。


新作「桜色ストレンジガール 〜転生してスラム街の孤児かと思ったら、公爵令嬢で悪役令嬢でした。店舗召喚で生き延びます〜」をよろしくお願い致します。
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