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1Rの花嫁
作:秋風



16、「新婚さん」な僕ら


初めての夫婦の営み・・・。
お互いレンアイ小説ぐらいしか、情報ソースが無い。
そしてそれらの情報は、余りに断片的で、デフォルメされていて、実際、ほとんど役に立たなかった。


初めはまずまず良い雰囲気だったのだが、僕のほうが緊張でうまく行かない。
彼女はもっとよく分かんなくって、

どうしたらいいのかしら??

って感じで、目をパチパチさせながら、僕が何かするのをじっと待ってる。
僕は待たしているので焦ってしまい、余計ダメ。

そんなことしているうちに、ドキドキもどこかに行って、ものすごく冷静にことを進める。
結局、ムードも何も無い、とにかく、一応やることはやりました!という、出来だった。



一通り終わって、放心状態で暗い天井を見つめる僕。なんかすごく惨め。
彼女、どうしたのかしら??と、横から僕の顔を覗いている。
「茂夫さん、元気ない・・。どうしたの?」
「ま、まあ・・。」
彼女、僕のこと情けないと思っているに違いないと思ってたら、その様子を見ていると、どうもそうではないみたい。
「わたし、ちょっと怖い・・・って思ってたけど、怖くなかった。茂夫さん優しかった!」
とても安堵した様子。
「これだったら、わたしも好きになれそう!!」
彼女、とっても嬉しそうにそう言った。

・・・優しかった・・・か・・・。

そういうことになるのかもしれない。

僕はてっきり、茂夫さん、しっかりしてよ!! とか、もっと、憐れみに満ちた目で見られるとか・・そうなると思ってたんだけど。
彼女、何にも知らないから、こういうものなんだと納得したみたい。
そして、彼女は怖くなかったということで、とにかく、大満足だったらしい。

後から思ったことだけど、いわゆる、僕が思い通りノリノリでやっちゃったら、彼女は知らないのに、こっちが一方的に無理やりする感じになって、ショック受けたのかもしれない。
怪我の功名というのは、こういうことを言うんだろう。

まあ、とにかく彼女がこんなに喜んでくれるんだから、こっちとしては全然ダメだったけど、良いことにしようか・・。


ホッとすると、僕も眠くなる。
ホッカホカでツルツルでフワフワの彼女を胸に抱いたまま、僕はいつしか眠っていた。


・・・・・・・・・・・・・


ハッと気付いて、時計を見ると、もう起きる時間になっていた。
僕らは床にひいた毛布に包まって、一緒に寝ていた。
何の妨げもなく伝わってくる彼女自身の感触・・・。
明るくなって、様子がはっきりしてきたのもあって、ドギマギしまくり。

彼女も、そのうち目を覚まして、真っ赤になってる。
そして、ゴソゴソと探し物・・・。うろうろするのに、何もなしというわけにも行きませんので。


二人とも、ずっと顔を赤くして過ごす。

・・・顔を赤くして、時々、手を止めてふっと物思いに拭けながら、朝食を作る彼女。
・・・顔を洗いながら、ふと物思いにふけって、手を止めてしまう僕・・・。

そんなに早く起きたわけでもないから、早く支度しなけりゃならないのに、めちゃくちゃ時間の掛かった朝だった。


よく分かんない「初めて」だったけど、二人の距離感はぐっと近くなった。
気が付くとユニット・バスで着替えてなかったり、横に座ってもビクっとしなくなったり。

それどころか、その横に座った彼女の腰を思わず抱いてしまったり、そんでもって、ふと見詰め合ったらチュっとしたり、出かける前に、バイバイの代わりに力いっぱい抱きしめたり・・・。
そして、
「茂夫さーん、早く帰ってきてね (はあと)」
「わかったよー、じゃあね バイバイ (はあと)」

すっかり、「新婚さん」になってました・・。

・・・・・・・・




そういうわけで、夢の続きのような気分で、研究室に向かう。
ふと気が緩むと、昨日の晩の情景や感触がよみがえる。

廊下を歩きながら、頭かきむしる。
い、いかん、これじゃあ今日、仕事にならないぞ・・。


研究室が近づくに連れ、聞きなれた声が、何か大声でしゃべっているのが聞こえてくる。
小林だ。
小林が僕の研究室に乗り込んできて、なにやら熱心に説明している。

「昨日な、コンビニでコミック読んでたらな、大田のやつがやって来て・・」
は? 僕か?
「ほら、うわさをすればなんとやらだ!」
「おお、大田! 良く来た。」
お前に登校して誉められる筋合いはないわ!

「いやあ、俺が言ってるのは、大田さんのことだ。」
「ああ、彼女・・」
小林ー、何考えとんのや・・・なんだか関西弁・・・。

「今、みんなに彼女のこと、話しとった。」
「で?」
「すごい美人で、何か俺、惚れたかも・・・。」
「ま、まて、それは止めといた方が良い・・・。」
「なんで、お前にそんなこと言われんといかんのや!」
「何でって言われてもそれは、僕のお・・。」

僕の話なんか、誰も聞いていない。
みんなで小林のことをはやし立てる。

「で、大田さんのこと、もちょっと僕らに教えてくれ。」
またいきなり僕か。
「だから、彼女は僕の奥さんなんだ。」

みんな、一瞬、黙る。

次の瞬間、大爆笑!!!
笑いに途切れ途切れ、言いやがった。
「大田、傑作、それ良い!! お前にしては、結構、良いよ、それ!!」

誰も信じてないし・・・。

笑いの渦が、何派も何派もやってくる。
相当時間、笑いが止まらないみんなであった。

「あー、笑った笑った・・。」
みんな涙流してる・・・。彼女が僕の奥さんだと、そんなにおかしいか!

結構、傷つく僕だった。

「まあ、おもろい話はそれまでや。とにかく、彼女連れて来てくれ。ここへ!」
へ??
「で、何するの。」
「色々、聞いてみたいし、まず何より、俺がどんなに言っても、彼女の美しさは伝わらん。こいつなんか、はなっから妄想だとか言っとるから・・」
小林の隣に座っている、うちの研究室の上田の頭をこずく。
「見せてやる。ほんまやって。」

「でも、彼女、首を縦に振るかなあ・・。」
「絶対に振らせろ!!」
ものすごい気迫。・・・その気迫が一番、心配。
「じゃあ、聞くだけ聞いてみる。」
そんな弱気でどうする!! 大田、絶対連れて来い!! ギャラリーからの野次が飛ぶ・・。

さてさて、困ったことになった。


その日、家に帰って、さてどうしたものかと、考え込む。
「茂夫さん、どうしたの?」
良子さん、考え込んでいる僕に話しかける。見ると、見たことのない服を来ている。可愛い柄のブラウス、フレアスカート。
「あれ、服、どうしたの?」
「これですか、昨日のだと、外にしか着ていけないから、今日買ったの・・。いけませんでした?」
チョット心配している。
「いいや、全然そんなことなないよ。・・・ふうん、そうなんだ・・。」
ずいぶん積極的になったなあと、感心する。そんな積極性があったら、学校での話できるかもしれないと、重い口を開いた。
「あのね、昨日コンビニであった小林、あいつが、君を学校に招待したいんだって。」
「え??」
「あいつだけでなくって、あいつの話を聞いた、僕の同僚達もそういってた。」
「そうですか・・・」どうしようかなあと迷う彼女。
「茂夫さんはどうしたらいいと思いますか?」
うーん、どうかなあ・・。
「行くと、結構取り囲まれて色々根掘り葉掘り聞かれると思うよ。」
「えっ、そ、そうなんですか・・。」
「でも、行かないと収まりつかない雰囲気ではあったなあ・・。」

さあ、どうしようか・・。
しばらくあーでもないこーでもないと、頭を抱えて考える。

「わたし、行ってみます。あなたの勉強しているところ、見てみたいし。」
彼女、今までに無い明るい顔で、そう言った。

そうか、彼女は学校に行ってみたいんだ。
引き篭もりだった彼女。
ここに来てから、僕と一緒じゃなかったら、行きなれた店にしか行かなかった。

それが、中学以来まともに行ったことの無い「学校」というものに、それまでのとは違うにしろ、積極的に行ってみたいと思っている。
すごく大きな変化ではなかろうか・・。

僕、なんだかムズムズと嬉しくなる。

夫婦としても新しいステージに入った僕らだったが、彼女はもう一つ大きな世界に飛び出そうとしている。



・・・当然、これからたくさんのドラマに首を突っ込むことになります・・・・。

      












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