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1Rの花嫁
作:秋風



15、「妻」な彼女


カチコチカチコチ・・・・
時計の音が響く。

ドクドクドクドク・・・
僕の心臓の音が、部屋中に響いているんじゃないかというぐらい、高鳴っている。

床に座ってベッドによかかっている僕の肩には、幸せそうにもたれている良子さん。
優しく閉じた目、ほんのりピンク色の頬っぺた、小さなピンクの唇・・・。

僕の腕の中にある、優しく暖かい彼女。
僕の高鳴る心臓の音は聞こえているに違いない。
戸惑いまくっている様子が、もろにばれているであろうこの状況、なんとも気恥ずかしい。


でも、やっぱり、こうして良子さんとくっついているのが嬉しくって、時間を忘れてそのままでずっと座っている僕。
良子さんも嫌がるでもなく、そのままじっとし続けている。

・・・・・・・・

相当な時間が過ぎた。
良子さんも綿で出来ているわけではない。・・・・・結構な重さがあるのだ。
初めに腕がしびれてくる。動かないでいると、次にお尻がジンジンしてくる。
ちょっとでも動くと、良子さんが・・・それじゃあ・・・・って感じで行っちゃうかなあと思う僕は、この状況を動かさないように、ひたすらに刺激を控えてきた。

・・・でも、腕がちぎれそう・・・お、お尻が痛い・・・。

僕は決心して、そっと姿勢を動かしてみた。

良子さん、どうするだろう・・・・。

・・・・良子さん、どうもしない。
不思議に思って、ちょっとゴソゴソ動いてみる。それでも動かない。ホッペをツンツクしてみる。

・・・・もう、ぐっすり寝ていた。

なんか、気が抜けた。

ほんの少しだけ、これから先の展開も期待してみたけど、まだまだ可愛らしい良子さんなのだ。きっと、この後の展開なんか、考えもしていないんだろう・・・。そう思った。

愛し合ってのこその男と女の関係と思っている僕。寝込みを襲う気は毛頭無い。
・・・今日はこれでお開きみたいだ。

ここで、お姫様抱っこしてベッドに寝かしてあげたらかっこいいんだが、ひ弱でパワーの無い僕。逆に落っことして頭打ったりしさせたら最悪なので、彼女を起こしてベッドに行ってもらうことにする。

ゆっさゆっさ揺さぶって、彼女名前を呼んだ。
「良子さん、良子さん、ベッドに行って! ねえ、良子さん。」

・・・・・起きない・・・・・

「良子さんたら!!」

こんなに起きないんだ、良子さん。彼女の眠りの深さに困り果てる。そういえば今まで、朝も彼女はいつも僕より前に起きていたので、彼女を起こしたことがなかった。

まあ、こんなに深く寝てるんだったら、少々ゴソゴソしても大丈夫だろうと、力技で彼女をベッドに寝かすことにする。

掛け布団をめくって、彼女をベッドによっかからせて座らせる。
そんでもって、彼女の両脇に手を入れて、抱きかかえて寝かせることにした。

よし、セット完了。
彼女の脇に手を入れる。というか、やってみるとこの体勢、ひしと抱き合う形だったりする。
いやそれよりか、これからどう力を入れる??
足を投げ出して座っている彼女をまたいで、僕が脇に手を入れて抱いている状態でフリーズ・・・。
ここから持ち上げると、すごい腰にすごい負担来そう・・・。できるかな・・・。

とにかくしなきゃあと、腰に気をつけて、「一斉のせ」でやる。
よーし、いっせいのせ!!

僕はウッっとちからを入れて、彼女を持ち上げた。
すると、スウェットの上がずれ上がって、おへそ丸見え。それだけではなく、ベッドのかどに彼女のはいているスウェットのズボンが引っかかって、微妙に下りてしまった。そこに見えるは・・・・!!

うわー!うわー!! 焦りまくる!!! 

かくして、慌てふためいた僕は、彼女を抱いたまま、彼女を下にしてベッドのうえにダイブ!!
どすんと、二人ともベッドの上に身を投げ出された。
 
「あ、あ・・・」
彼女が声を出した。
さすがに良子さんも、少し目が覚めた・・・。
目をシバシバさせてる。何がなんだか分からないみたい。そして、目の前に僕の顔があること、さらに、ちと乱れた服装の自分の上に、僕が乗っかっていることに気付く。

「し、茂夫さん・・・。」
パッと顔が赤くなり、目をまん丸に開く・・・・今、完全に覚めたみたい。

僕は、反射的に彼女から飛びのいて、とにかく謝る。
「ご、ごめん!!・・・・ちょっと、ベッドに移ってもらおうとしてたんだけど・・・。」

・・・言い訳するか? でも、なんか嫌だ・・・。

彼女、服装を直すみたいなので、僕は何も言わず彼女に背を向けて立ち尽くす。

しばらくして、ちゃんと服を調えたのか、彼女は、
「じ、じゃあ、おやすみなさい・・・。」
そう言って寝てしまった。

怒ってるんだろうな。なんかさっきはすごくいいムードだったんだけど、これで、
「茂夫さん、わたし、あなたがそんな人だったなんて、知りませんでした!!」
とか言われて、とっちめられるのかな・・・。

さっきまでのドキドキは吹っ飛んで、しょげた僕はイジイジと毛布に包まって寝転ぶ。

寝られない・・

寝返りを、あっちに一回、こっちに一回、足を毛布から出したり引っ込めたり・・。
あーあ、やっちゃたよ・・・。ため息ばかり。

そんな僕だったが、そもそも寝付きの言い僕、いつしか夢の世界に落ちていった・・・・。



僕は、夢の中で夢を見ていた。
ものすごく嬉しいことがあった・・・・。
良子さんが僕の恋人になったこと。
奥さんになるのと順序は逆だったけど、そんなことはどうでも良かった。
すごく喜んでいる自分。
うれしそうにしている彼女。
僕、すごい幸せ・・・

でも、幸せな夢って覚めるんだよな・・・
夢の中で、褪めてる僕。
そして、それが夢だったと、夢の中で気付く・・・。

うわ、やっぱ夢落ち・・・・最悪。



なんかうなされて、目が覚める。
まだ、暗い。
でも、目の前に何かある。
あれ?
これなに?

まだ夢見てるんだろうか・・・・。

すると、それは正座した良子さんのひざだった。

ハッとして、顔のほうを見上げる。
そこには、優しい瞳で僕をじっと見つめる、良子さんがいた。

僕は彼女の行動の真意が分からない。
「何、してるの・・。」
さっきのことが気まずかったが、聞いてみた。

「茂夫さん、さっきはびっくりしましたよ・・。」
「あ、ああ・・」
いやあ、やっぱまずかったか、困ったな。
「ちゃんと、心の準備、させてください・・。」
そりゃあ、準備なければ誰でもびっくりするって・・・え、えええ?

そう言うと、意を決したように僕の包まっている毛布の端をめくって、寝転んでいる僕の胸に、すがり付いてきた。
僕は毛布の中で、ピトッと僕にくっついている彼女に戸惑う。第一、僕の両腕どうしたら良い!?
彼女、ちょっと固くなってじっとしている。

僕らは夫婦なのだ。
ここで止めたら、彼女をどれほど傷つけるか。
・・・
いや、そうじゃない。僕は彼女と本当に結ばれたい。
僕は彼女が大好きだから!

僕も意を決し、彼女を毛布の中でしっかりと抱きしめた。
スウェットの下に、はっきりと分かる優しく柔らかい彼女の体。
鼻をくすぐる、彼女の髪の毛。鼻がモゾモゾする。
高鳴る僕の心臓とともに、伝わってくる彼女の鼓動・・・・彼女のそれも、とても早かった。
かすかに聞こえる息の音。

全身で、彼女という存在を感じている。


「良子さん・・・いいの・・・かな・・?」

「茂夫さん、わたし、あなたに嫁いできた。
あなたの妻になりたいって、ずっとそう思ってた。
そして、あなたと暮らしていくうちに、そんな気持ちはもっともっと大きくなって・・・・。

わたし、あなたを一人の男の人として大好きなの。
茂夫さんが、ずっと一緒にいて欲しいわたしのご主人。
だから、わたしを一人の女として、妻として・・・・。」

とつとつと話してくれる、その告白の言葉から、彼女が心に秘めていた、悲しみと痛みが伝わってくる。
妻として来たのに、見向きもされない日々・・・。

・・ああ、胸が痛い。

ゴメン、良子さん。
愛してる。
僕にとって、たった一人の女性であり、妻である君を・・・。

僕は彼女を抱きしめ、辛い告白を続けるその唇を、僕の唇でふさいだ。




こうして僕らは、その夜、名実共に、夫婦となった。


           












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