「ねえ、おかあさん、きょうはどんなおはなしをしてくれるの?」
「そうねえ、こんなお話はどうかしら?」
世界が破滅に向かった頃、生き残っていた親子が話していました。
母親は憔悴しきった顔をしながらも子供へと物語を紡ぎ始めました。
まだ私たちが生まれていないころ ここには巨人が2人しかいませんでした。
1人は男の人、もう1人は女の人、男の人が一歩踏み出すたびに地面ができ、女の人が同じように一歩踏み出すとそこには草木が生えました。
そうして2人は世界を作っていたのです。
「あーあ、暇だなぁ」
空までありそうな身長を持った女性が言った。その近くで同じく空まで伸びる身長を持った男性が苦笑しながらも歩く、そこから土が盛り上がり地面になった。
その後ろをつまらなさそうに女性が歩くと、地面の上に小さな草木の命が宿った。
「仕方ないだろう生、僕らはそういう存在なんだ」
そしてまた一歩を踏み出す。
「わかってるよ終、でもいつまでこれを続ければいいの?」
生は同じように一歩を踏み出す。
同じことの繰り返し、ここにはまだ朝も昼も、ましてや夜もないそんな中、不毛な星に地面を作り、生命を宿らせる。
彼らは世界を創造する神だった。いつからそうなったのかも分からない。
しかし2人しかいないこの世界は、あまりにもつまらなく、寂しすぎた。
「わからない、でも終わりはいつだって告げられるものさ」
わかっているだろう? 終や生は世界の歴史を知っている、前の終と生の記憶を持っているからだ、いつだって創った世界は必ず出てくる“人”というものに壊されてしまう、自己中心的な精神を持ち、他の生命を殺し、世界を滅ぼした。
そして終と生が生まれる。
終が世界を白紙に戻し、荒れた土地を生が癒す。
そして2人は世界を創り直す。それは星に定められた運命――。
「私は始まりを告げるだけ、いつ終わりは来るの? ねえ、終」
「僕を呼んでいるのかどうかわからないよ生、でも、ほら」
「あぁ、終わりが来たのね」
光が、射す。薄い膜が星を覆っていくのがわかる、それは星を守る膜、再生が、始まった。
その光を見た終は生を抱きしめた。互いの目から流れ出す涙は乾いた大地に海を作った。
2人の体が透けてくる、2人の役目が終わったのだ、生は消えることに対して震え、恐怖した。
そんな生を抱きしめた終が生を自分の方へと向かせて、口付けた。
「お別れだ、生」
「最初のキスが終わりのとき、なんて面白くないわね」
「ははっ、まったくだね、それじゃあまた」
「えぇ、またあなたと出会えるのを楽しみにしているわ」
互いに別れの言葉を告げ終わった頃、2人は小さな小さな光になり弾けた。
それらは全ての源たる命を振りまき、また世界は動き出す。
創世神は消え、その命は世界になるそしていつか創世神は世界が滅んだ頃、また生まれる。
その繰り返しをする世界は前よりもほんの少し、賢くなっていくのだろうと願いながら。
「そして、神は願いを形にするためにもその命を世界、に……」
「おかあ、さん?」
母親の声が途切れ、子供が驚いて母親を見上げる、しかし母親は冷たくなっていくだけだった。
泣く子供。しかし誰もいない、彼ら以外全てのモノは死んでしまったから。
泣き叫んでも何も来ない、それをわかっていながらも泣く子供は、光の射さなくなった星に光が射すのを見た。
「わぁ……!」
泣くのをやめた子供は光へと手を伸ばし、光に届いたと思われた瞬間に、子供は骨になった。
寄り添っていた骨になっている母親の腕に抱かれながら、あれはただの残留思念、それが今、消えた――。
世界が消え、そして生と終が生まれる――。
|