第三話:始まりの日
俺がどのくらい眠っていたか、分からないから、とりあえず数日前。
異端による、大型AI襲撃があった事は、言うまでもない。
事の起こりは、その後だった−−
異端者達が引き上げた後、半壊とまではいかないが、それなりに傷が付いているAIを見上げていた時だった。
『…‥…ぃ‥‥ょ!…』
突然、女性の声らしきモノが聞こえた。それも意思のある声。
ガーディアンの中には想いを伝えようなんて奴はいない。だから異端の生き残りだと思った。
でも、何処で声がしてるか、何を言っているのか判らなかった。
耳の奥で聞こえるような−−そう、頭の中で響くような声に気分が悪くなりそうになる。
「引き上げだ。早く撤収準備に掛かれ」
感度の良い小型無線機からは指揮官からの撤退命令。
(‥相変わらずマニュアル通りだな。)
ふ、と頭に浮かんだ思考。…有り得ない。ガーディアンである自分がこんな事を想うなんて。
困惑している自分に気付き、更に驚愕する自分が居る。
己の事が理解出来ずにいて、思わず脱力して傍にあったAIに手を付いたその時−−
『−−目覚めなさい、救世主よ!』
今度はハッキリと聞こえた声。瞬間、ナイフで貫かれた様な激しい頭痛に襲われる。痛みで朦朧とする意識の中、聞こえたのは非常警報の音と『“個”を、取り戻して…』という言葉だった。
「異端の侵入が確認された。現在位置、AI周辺。各員、緊急戦闘体制に移行。速やかに行動せよ」
無線から指揮官の声が流れてくる。
今自分が一番近い位置に居ると思い、消えかける意識に鞭打って辺りを見回す。が、人影は見つからず不思議に思っている時に、無線から新たな情報が流れてきた。
「異端者は名をルオン・スターティッド。ガーディアン所属。コイツは例外だ、生け捕りにしろ」
「!!!?」
まだ痛む頭では何も理解出来ず、更に混乱するばかりだった。
そんな時、遠くから自分目掛けて発砲があり、数発が肢体を掠る。
(あぁ……本当に自分を狙ってるんだな)
と思う。焦燥感というか、身体が逃げ出したいと言っているようだった。
コレが“恐怖”なんだと、初めて解った。
気付いた時、身体は動き出していた。
何処へ向かって、どう逃げてきたのか分からなくなってきた頃、既に体力の限界を越えていた俺は、気力だけでガーディアンを振り切り、廃都へ辿り着いた。
警備の薄そうな所に身を隠そうと手近な場所を探し歩き、そのうち緊張の糸が切れたのか、何分もしないうちに意識が途切れた…。
そして、気が付いた時には異端の本部に居た−−
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