第二話:エリエ
ルオンの心臓目掛けてナイフが大きく振り下ろされる。
それを反射的に阻止しようと手を伸ばすガルグ。
「−−! 放してっ!」
ガルグは、ナイフがルオンの心臓に届くより数瞬速くエリエの手を掴んでいた。
「……もう止すんだ。エリエ」
怒りから平静さを失っている様に見えるエリエ。
「気持ちは解る! だがここは我慢してくれっ!!」
続けて言う。その瞳には、優しいけれども悲しい光が灯っていた。
「意味分かんない! 我慢なら今までいっぱいしてきたよ!? 敵討ちくらいさせてよ!!」
パァン‥‥
ガルグとエリエの口論の中、何気なくユイが二人の方へ歩いて行き、エリエの頬を叩く。
叩かれたエリエは勿論の事、ガルグまでもがびっくりしていた。
「いい加減にしなさい、エリエ。貴女がそんな事してもジャックは喜ばないに決まってるでしょ」
ユイはエリエを見据えて言った。
その長い黒髪の奥に存在する黄金の瞳は、威圧感を醸し出していた。
医療室の中が静まり返る。
放心状態のエリエ。ユイはガルグに目配せをする。
ガルグは頷き、エリエからナイフを取り上げて、医療室から出るように促してエリエとともに退室する。
ドアが閉まり、静寂が戻ってくる。
「さっき、何か言いかけてたわね? 何て言おうとしてたの?」
エリエの奇襲攻撃の事は忘れたかの様に平然と流して喋るユイ。
「ガーディアン、所属‥だった。今、はガーディアンに…追われてる」
麻酔が抜けてきたのか段々と言葉が繋がるようになる。
「どうゆう事??」
眉根を寄せるユイ。その顔には疑いよりも驚きの方が多かった。
「理由は、異端者と認定、されたから」
「じゃぁ、その時の事を詳しく聞こうかしら」
ユイが事情聴取の様に淡々と話しをリードしていく。
だが、その内心の思考は立体高速道を車が行き来する様な、あちこちを飛び回る盛大な戸惑いでいっぱいだった。
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