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サンタの来ないクリスマス

作者:天崎 剣
 これは、ぼくが子供のころの話。
 ぼくはそのころものすごくすさんでいて、ものすごくやなヤツだった。
 やなヤツだったぼくは、とくにクリスマスやサンタクロースが大きらいだった。
 ぼくの家には、サンタが来なかったからだ。

 サンタクロースというじいさんは、裕福な家にやって来るものだと信じていた。みんなに平等にプレゼントをくれるのだというのはまちがいで、サンタは実はとても不公平な男だと、ぼくは信じてうたがわなかった。
 お母さんと二人きりで住んでいたぼくのとこには、サンタは来ない。
 友達がはやりのおもちゃやサンタブーツをもらったと大よろこびしているとき、ぼくは今年もサンタは来なかったとがっかりした。
 期待するだけムダなんだ。サンタは不公平だから。
 サンタは本当は、裕福な人にしか来ない、幻みたいなヤツなんだ。
 とてもすさんでいたぼくは、そうやってサンタクロースのことをきらいになっていった。

 ぼくのところにサンタが来ないのは、ぼくがいい子にしていないからじゃない。多分、お父さんがいないからだ。
 友達のところにはお父さんとお母さん、二人の親がそろっていて、そういう家にはきちんとサンタがやってきていた。でも、ウチには来なかった。そう、きっとお父さんがいないから。
 お父さんはぼくが小さいころ、お母さんとぼくを残してどこかへ消えた。それがどこなのか全然ぼくは知らないし、お母さんも行き先を答えてくれない。
 会いたいと思わなかったことはないけど、会えないなら考えてもムダだ。そうしてぼくはどんどん心がすさんでいって、そのうちに大人なんか信じない、とてもやなヤツになってしまっていた。

 あるとてもとても寒い夜、知らない男の人をつれてお母さんが家に帰ってきたとき、ぼくはその人をにらんだ。
 その人はお父さんじゃなかった。知らない、知らない男の人。
 お母さんがつとめている会社の、お世話になってる人だよと教えてくれたけど、ぼくはなぜだかその人が好きにはなれなかった。
 その人は、ぼくが知ってるどの大人よりも優しい目をしていた。優しい目でにっこりほほ笑み、ぼくのことを見つめていた。
 何度も何度も、その人はぼくの家に来た。ぼくのことを名前で呼んで、いつか家族になりたいと言った。
 だけど、ぼくはその人のことをどうしても好きにはなれなかった。

 どうやらぼくのお母さんはその人を新しいお父さんにむかえたいのだと知ったのは、少し経ってからのこと。
 ぼくは反対だった。
 ぼくのことをなれなれしく見つめるその人が、ぼくはまだ好きじゃなかったから。
 だけどその人は「それでもいいよ」って言う。
 ぼくはどうしたらいいかわからなくなって、その人をたくさん叩いた。ぼくの小さな小さなこぶしが、大きな大きな男の胸にポカポカ当たって、だけど今考えたら、それはとても痛いとよべるような強さじゃなくて。
 ぼくはきっと、そのとき愛にうえてた。
 その人はたくさんの愛をきゅうにくれようとしたから、小さなぼくはきっと、びっくりしてしまったのだ。
 そして、どうしたらいいかわからなくなったぼくは、たくさんたくさん泣いてしまった。

 少しずつ雪がちらついて、いつか街は真っ白になる。
 クリスマスがどんどん近付いてきて、ぼくはまたゆううつになった。
 今年も、サンタの来ないさみしいクリスマスがやってくるんだ。

 クリスマスイブ、お母さんは少し早めに帰ってきて、二人ささやかに小さなケーキを食べる。二人だと多すぎて残してしまうけど、ぼくにはそれがちょうどいいぜいたく。
 安売りのおそうざいをならべたいつもより少しだけごうせいな夕食をすませて、ぼくとお母さんは眠りにつく。
 サンタクロースが忙しそうに夜空をかけまわるころ、ぼくは思うんだ。
「今年もきっとサンタさんは来てくれない。朝起きたらきっと何もない。何もなくて、またぼくはサンタのことが嫌いになってしまうんだよ」

 朝、目が覚めると、やっぱりまくらもとには何もなかった。
 今年もサンタは来なかったのだ。
 夜明けより少し早く目がさめて、ぼくはまだお母さんがねているのを見てからそっと窓をあけた。
 昨日の夜から降りつもった雪で、あたりは真っ白。クリスマスの朝はいつもよりいちだんと冷たい。
 アパートの窓の下、物音がしてぼくはあわててのぞきこんだ。
 赤っぽい服に帽子、黒い長ぐつの人かげがごそごそごそごそ動いている。
 ぼくは思わずアッと声を上げて部屋を飛び出した。
 アパートの二階から数段下りると、そこにはもう雪が積もっていて、その下をスコップ持った赤いかげが何度も何度も往復していた。
 ぼくとお母さんのよく知ったあの人が、ぼくらの歩きやすいよう、そっと道を作ってくれていたのだ。
「おはよう」
 ぼくに気がついて、その人はいつものようににっこりとぼくを見上げた。
「そして、メリークリスマス。ほら、風邪引いちゃうぞ」
 大きな長ぐつでゆっくりと階段を上がり、その人は自分の赤い上着をそっとぼくにかぶせた。少し男くさい、変なニオイがしたけれど、ぼくはそのニオイをはじめていいニオイだと感じてしまったんだ。

 結局ぼくはその年、やっぱりプレゼントをもらうことは出来なかった。だけど、かわりにサンタさんのようなお父さんが出来た。
 新しいお父さんが出来てからは、ぼくにもサンタが来るようになった。クリスマスはぼくにとって嫌なものじゃなくなった。
 だけれど、一番ぼくの心にのこっているのは、やっぱりあの朝のこと。さえないぼくだけのサンタクロースがきた、大切なあの日。
 大人になった今でもぼくは忘れない。
 そうして、ぼくは自分の子どもにもこの話をしてあげるんだ。
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