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刹那の剣
作:針井 龍郎


「始めぇっ!」

 審判の掛け声と共に、弾かれたように立ち上がった。

「さぁっ!」

「うるぁっ!」

 体の中に溜めていた気合いを、腹の底からの発声と共に、一気に相手に向かってぶつける。まわりの空気がビリビリと張りつめる。気を抜く事は、一瞬たりとも許されない。

「うりゃぁっ!」

「さぁ、さぁっ!」

 いつでも飛び出せる万全の体勢のまま、ゆっくりと、しかし素早い足捌きで互いに自分の間合いに攻め入る機会をうかがう。

 臍下丹田せいかたんでんに力を込め、面金越しに相手の体全体を見据える。

 右手は軽く、左手はしっかりと竹刀を握り、剣先を相手の喉元に突き付ける。互いに中心を取り合うことによって竹刀がふれ合い、そのたびにかすかに乾いた音が響く。

 団体戦の決勝。大将戦終了時点で、勝者数、取得本数、両チーム共に同じ。そして迎えた代表戦一本勝負。ここは絶対に負けられない。

「気合い入れろっ!」

「しまっていけーっ!」

 仲間の声援が耳に届く。いったい、どれほどの時間が過ぎたのだろう。ほんの十数秒の事であるはずが、何十分の事のように感じる。

 思わず、ゴクリと唾を飲み込む。おくする事はない。相手も同じ人間だ。俺も一人、ヤツも一人。何を恐れる事がある?覚悟を決めて、打ち切る事だけを考えろ。

「せいやっ!」

「おりゃぁっ!」

 余計な部位に力は入れない。力を込めるのは、へその下。力まずに、ふところを大きく構えて──

──その刹那──

 ヤツの大勢が少しだけ崩れて前のめりになった。それと同時に、竹刀の剣先がわずかながら──ほんの一寸ほどだが下にさがる。

──今だ!

 考えるよりも先に体が動いた。体はすでに床をけって宙を舞い、ヤツに踊りかかってゆく。

 竹刀はヤツの面に向かって最短距離の軌道を描き、ヤツがそれを防ごうとする暇さえ与えない。

──俺の渾身の一撃だっ!

「めぇーんっ!」

 響き渡る快音と、手元に残る確かな手応え。淀みのない残心。

 三人の審判の旗が一斉に上がる。

「面ありっ!それまでっ!」


 初めまして、針井龍郎です。今回のテーマは剣道です。いかがでしたでしょうか。

 剣道の禁断症状が出ている時に、気を紛らわせるために書いた物なんですが難しいですね。あの緊張感と、刹那の内に勝敗の決するスピード感を文章にするのがこんなに大変だとは思ってもみませんでした。かなりごまかしながら書いたものですが、次回はもう少し良い物を書きたいと思います。

 特に今回は、剣道未経験者には難解な言葉ばかり多用してしまい、本当にすいません。スピード感を出すためにやむを得ずやったことですが、分からない言葉がございましたら感想等と一緒に書き込んで下されば、できる限り説明しようと思います。メッセージで送っていただいても構いません。

 最後まで、このような文章にお付き合いいただき、ありがとうございました。この作品を読むことで、少しでも多くの方が剣道に興味を持つようになっていただけたら幸いです。

 それでは、またどこかでお会いしましょう。以上、針井龍郎でした!













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