英雄学園・きーくんはちゃんと探してます。たぶん。
現在ブラン・キッツェの体を支配している寄生植物、きーくんは、規則正しく、木製の杖をつく。
わざわざ舗装されている道を外れて土や草を踏みしめて歩くのは、その感触が好きだから。
「体が半分動かないって不便だねー」
左足を半ば引きずるように右手で杖をついて歩く彼は、左手に力を入れて顔の前にかざしてみた。
「誰のせいだ。ケッ」
「そう悪態つかないの、ブラン」
その手は血管のごとくに皮膚を持ち上げるツタに覆われていて、感覚はあるものの、あまり柔軟には動かすことができなかった。
「まぁ、オレがブランに寄生しているせいだけどさ」
その時、すぐ近くで爆発が起こった。
一面に生えている腰丈の草が一斉になびく。
「何かあったのかな……?」
「また錬金科かどっかのヤツだろ」
きーくんは吹き飛ばされてきた草や土を盛大にかぶりながらあたりを見回すと、顔を止めた。
「あっ誰かいる」
視線の先には赤髪の少女がいた。
おそらく彼女のいるあたりが爆心地だろう。
「おーい」
服についた土を適当に払い落としながら声をかけると、少女は顔を上げた。
その顔の左側にはツタが絡まったような刺青が入っている。
「大丈夫?」
「失敗しちゃったけど、大丈夫よ!」
よく見れば、彼女の左腕にも刺青は続いている。
「何してたの?」
「ちょっと錬金を……失敗しちゃったから、また種を集めなきゃ」
「もしかして、錬金学科の生徒?」
「うん。錬金学科の一年、アルブレ=ヒフミよっ!ヒフミが名前っ」
「オレは勇者学科の三年のブラン・キッツェに寄生してる寄生植物で、名前はないから、ブランにはきーくんって呼ばれてるよ。」
そこで彼女はブランの体についた土や草を目に留める。
「あ、ごめん! また人を巻き込んじゃったっ」
「慣れていますから、気にしないでください。
それで、どんな種を集めるの?」
「とりあえずそのへんのだけど」
「なら、よかったらこれ、もらってくれないかな?」
きーくんは腰のベルトから下げている革袋の中身をいくつか出して見せた。
簡単に手に入るものばかりではなかったが、彼は使わないものたちだった。
「え、いいの!?」
「オレは使わないから」
「ありがと!」
「そういえば、キミのそれはもしかして、寄生植物だったりする?」
ヒフミの左腕を示して尋ねると、彼女は首を左右に振った。
「これは刺青よ。
あたしの集落ではみんなにあるものなの」
「そうなんだ……。」
「あなたのは、刺青じゃないの?」
「オレのは、寄生植物であるオレ本体が皮膚の下で成長してるのが透けて見えるだけなんだ」
「なんか痛そうね」
「そうでもないよ?
あ、そういえば、人を探しているんだけど――」
きーくんが尋ねようとすると、ざわめきが近づいてきた。
「逃げなきゃ」
慌てたヒフミがそう呟いて走り去るのを見届けると、風紀委員や近くにいた生徒が集まってくるのを視界にとらえ、きーくんもまた別の方向に逃げるのだった。
無事逃げおおせていつもの木の上に納まると、黙っていたブランが声を出した。
「交配相手候補じゃなくて残念だったな」
「べ、別にそんなのを期待してたわけじゃっっ」
「あと、真面目に探せ」
「……はい」
最後きーくんは逃げるときに植物を操れるブランの魔法を使って自分の左半身を動かしてましたとさ。
コリネト様のアルブレ=ヒフミ(http://16027.mitemin.net/i181462/)さんをお借りしました。
こんな口調で合っているのだろうか二人とも。