表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

連鎖

作者: 駄々

何となく 車に飛び込みたいと思っちゃうこと、ないですか?

ふとした感覚を、辿ってみたけど。

 ある夏。

 小学校のプールの脱衣場はコンクリートの床が濡れていて、足が触れるのが辛かった。濡れてしまった足に誰かの抜けた髪の毛がへばりついて、吐き気をもよおした。プールは嫌いだったが、夏休み中に十回以上という課題があったので、晴れた日には仕方なく、学校まで15分かけて歩いて行くのだった。プールの周りの叢にはアマガエルがいた。捕まえて連れ帰り、庭の芝生に放した。何匹住み着いただろうか。よく見るとそれぞれが異なっているのだった。かわいいと思い、愛情を感じた。だが掴み上げて、思い切り叩きつける。さらに掴み上げて叩きつける。そして振り返らずに、家の中に入るのだ。

 また、ある日。

 指先にイボができた。ナイフを当てると血が出た。薬指の指先、薄く削ると血の小さな玉が五個、六個と溢れてきた。ティッシュで押さえると止まるが、またすぐに溢れ出る。しばらく楽しんだ後、ティッシュに血で文字を書く。大抵は好きな人の名前になる。白いティッシュに赤く染めた美しい名前。しかし、引き出しにしまっておくと、直に茶色くなり、錆びたように縮れているだけなのだ。

 そして。

 トラックが近づいて来る。右側によけた瞬間、少し後悔する。逆に一歩出ていたらきっと私の体は前輪に巻き込まれ、粉々に砕け散っていたかもしれない。生きていた証が何も残らない程に、ボロ切れのように砕け散っていただろうか。

 小学校の国道沿いの通学路では、時々犬が轢かれて死んでいた。一日目は赤い鮮血が飛び散り内臓がバラまかれている。二日目には鮮血はなくなり、水気のない犬のようなものが転がっている。そして三日目になると、ただの汚れた毛皮がアスファルトにこびりついているだけなのだ。

 あの犬のように私の体も変化してゆくのか。立ち止まり想像する。なんと清々しく、すっきりすることか。もやもやした心から解かれ、何やらムズムズする体から弾け出る自分自身。無に帰る。なんと潔いことだろう、と。そう考えながら何台ものトラックをやり過ごす。こうして結局は犬のように生きているのだ。



目を閉じて見えてくるもの

慕わしい死よ

あなたを離したことはない

あなたは無なのか

永遠なのか

ずっと抱えていた

わたしの核

破壊するのだ

するどい濃紺の空

冷たく光る輪郭の中

凍りつく月

突き刺さる破片よ

未来という名を

わたしは我が子に与えよう

生きた証はいらない

連鎖は断ち切るもの

振りほどくもの そうだ

だから

これで終わりにしよう

目を閉じて

いつも見ていたもの

そして

見続けてゆくもの



ひとりの自分と向き合うと、見えてくる自分の真ん中。ダークなばかりじゃ、生きてけない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ