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連鎖

作者: 駄々

何となく 車に飛び込みたいと思っちゃうこと、ないですか?

ふとした感覚を、辿ってみたけど。

 ある夏。

 小学校のプールの脱衣場はコンクリートの床が濡れていて、足が触れるのが辛かった。濡れてしまった足に誰かの抜けた髪の毛がへばりついて、吐き気をもよおした。プールは嫌いだったが、夏休み中に十回以上という課題があったので、晴れた日には仕方なく、学校まで15分かけて歩いて行くのだった。プールの周りの叢にはアマガエルがいた。捕まえて連れ帰り、庭の芝生に放した。何匹住み着いただろうか。よく見るとそれぞれが異なっているのだった。かわいいと思い、愛情を感じた。だが掴み上げて、思い切り叩きつける。さらに掴み上げて叩きつける。そして振り返らずに、家の中に入るのだ。

 また、ある日。

 指先にイボができた。ナイフを当てると血が出た。薬指の指先、薄く削ると血の小さな玉が五個、六個と溢れてきた。ティッシュで押さえると止まるが、またすぐに溢れ出る。しばらく楽しんだ後、ティッシュに血で文字を書く。大抵は好きな人の名前になる。白いティッシュに赤く染めた美しい名前。しかし、引き出しにしまっておくと、直に茶色くなり、錆びたように縮れているだけなのだ。

 そして。

 トラックが近づいて来る。右側によけた瞬間、少し後悔する。逆に一歩出ていたらきっと私の体は前輪に巻き込まれ、粉々に砕け散っていたかもしれない。生きていた証が何も残らない程に、ボロ切れのように砕け散っていただろうか。

 小学校の国道沿いの通学路では、時々犬が轢かれて死んでいた。一日目は赤い鮮血が飛び散り内臓がバラまかれている。二日目には鮮血はなくなり、水気のない犬のようなものが転がっている。そして三日目になると、ただの汚れた毛皮がアスファルトにこびりついているだけなのだ。

 あの犬のように私の体も変化してゆくのか。立ち止まり想像する。なんと清々しく、すっきりすることか。もやもやした心から解かれ、何やらムズムズする体から弾け出る自分自身。無に帰る。なんと潔いことだろう、と。そう考えながら何台ものトラックをやり過ごす。こうして結局は犬のように生きているのだ。



目を閉じて見えてくるもの

慕わしい死よ

あなたを離したことはない

あなたは無なのか

永遠なのか

ずっと抱えていた

わたしの核

破壊するのだ

するどい濃紺の空

冷たく光る輪郭の中

凍りつく月

突き刺さる破片よ

未来という名を

わたしは我が子に与えよう

生きた証はいらない

連鎖は断ち切るもの

振りほどくもの そうだ

だから

これで終わりにしよう

目を閉じて

いつも見ていたもの

そして

見続けてゆくもの



ひとりの自分と向き合うと、見えてくる自分の真ん中。ダークなばかりじゃ、生きてけない。

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