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ボイスメモ 作者:ふしの
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新規録音 1

 どうも今日は。話す相手も居ないし、暇だから、勝手にひとりで喋って行く事にする。後から聞き返して恥ずかしい思いをするのも、日々を彩る陰気な趣味として良いかも知れないからね。こっちへ越して来てからこの方、快適な暮らしをさせて貰っているよ。ご近所さんも皆良い人ばかりだし、良い人と云っても、下の階の人なんかには未だ会った事もないけれどね。最初はご挨拶でも差し上げようと考えてはいたが、いつだったか、この部屋に入った日、一通り荷物も片づき、今後の生活の目処が立って、ベランダで煙草を吸っているとね、春だと云うのに、随分暗い夕方だった。声がするから下を見ると、買い物袋を下げた婆様がこっちを見ている。二軒隣に住んでいると云う事だから、出て行ってご挨拶がてらこの辺りの事を教えて貰ったんだ。ならついでにひとつ、せめて同じ棟の人達に顔ぐらい見せて置こうかと思ってね、婆様にどんな人が住んでいるのか訊いて見たんだが、いまいちはっきりとした返事が来ない。この界隈じゃ顔だって豪語していた割には自分の住処に疎いと見える。しかしこんな所だから、或いは人の出入りが激しいんだろう。勝手に回って見る事にした。婆様と別れて、部屋へ引返した頃にはもうどっぷり日が暮れていたんだが、その時初めてこの部屋に照明がない事に気がついた。あれって云うのは、前の住人が持って行くのか、業者が外して行くのか知らないけれども、サービスでひとつぐらい残して行ってくれても良いんじゃないかと思うんだ。それで、そうそう、取り敢えずコンビニでも行こうと考えてね、出たついでにお隣さんの所へ寄って見たんだ。呼び鈴を鳴らしても出て来ないし、留守かなとは思ったよ。しかし何の気なしにドアノブを回して見ると開いている。どうしてこんなに近所付き合いに拘るかと云うとね、前に住んでいたアパートで孤独死が出たからなんだ。よりによって隣の部屋でね。だから向こうからすると鬱陶しいかも知れないけれど、成る可く顔を合わせて言葉を交わすぐらいはするようにしている。で、そのドアを開けて見るとね、幸い孤独死の現場じゃなかったが。そうだね、初めは壁かと思った。脳味噌の様な彫刻の入った壁が、ドアを開けたら目の前にあった。これがファーストインプレッション。自分の脳味噌の方が追いつかなかったんだね。それで暫く外灯か何かの明かりに浮かび上がっているのをぼんやりと眺めていたんだけれど、その内に壁のあちこちが微かに動いているのが解り出した。目を凝らして見ると、目を凝らすんじゃなかったと今でも思うんだが、あれは壁なんかじゃなくって、部屋に裸の人間がぎゅうぎゅうに詰まっているのがそう見えていたんだ。それが解っただけで、後のことは何も解らなかったけれど、取り敢えず、お邪魔しましたと声をかけてドアを閉めた。そうしてコンビニへ行って片っ端から立ち読みしながら一夜を過ごした。
2014
http://ncode.syosetu.com/N2890CF/

2015
http://ncode.syosetu.com/N6313CU/
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