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駆除人 作者:花黒子

~土の勇者の後始末をする駆除業者~

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94話


 倉庫の隣の工房に行くと、うちの社員たちが口から血を流していた。
 一瞬固まったが、メルモがニッコニコ笑っている。
「何してんの?」
「ああ、社長!」
 メルモが叫んだ。
 机の上には赤い木の実が入った籠があった。
 お茶も用意されている。作業の合間のお茶菓子のようだ。
 女性の職場には、いつの間にか、おやつが用意されているのは、こちらの世界も同じようだ。
 これで、少しでもストレスが解消されるなら、どんどん食べたら良いと俺は思っている。
「これ、ブラッドベリーの実といって面白いんですよ」
「荒れ地で採れるベリー種なんだそうだ。まぁ、見ての通り、口の中が真っ赤だよ」
 ベルサが説明してくれた。
「良かったら、ナオキくんもどうぞ」
 アシュレイさんが風車作りの作業をしながら、勧めてくれた。
「ありがとうございます。うぉっ!これ酸っぱい!」
 俺は口にブラッドベリーを放ると、強烈な酸味が襲ってきた。眠気覚ましにいいのかもしれない。
「で、どうです?風車は?」
「いや、こんな形の風車見たことがないんで、うまく作れているかどうか。ただ、物凄く面白いですね、発想が。ナオキさんの頭はどうなってるんですか?」
 アシュレイさんが言う。アシュレイさんの手際はよく、風車の樽を縦に半分にしたような羽はすでに出来上がっていた。
「俺も、作ったことはないんで、いろいろ試していきながら、やってみましょう」
「ポンプの方も見てくれる?」
 シンシアが俺に言う。
 シンシアとセス、アイルはポンプを作っていて、巨大な魔物の胃袋につける弁を作っていた。
セスはすでに、半分寝ている。昨夜は徹夜だったので、仕方がない。
「水漏れがなければ、いいんじゃないか。魔物の胃袋は?」
「いくつか用意しておいた。大きいのがいいだろ?」
 アイルが答える。
「あとは、この装置なんだけど…」
 アシュレイさんが、設計図にあった胃袋を圧縮させるシーソーのような装置を指差しながら、聞いてくる。
 俺は、全員にわかるように説明しながら、作業に加わっていった。
 セスが睡魔に負けて脱落した時点で、アイテム袋から、フォラビットの毛皮を出して、工房の中に仮眠出来るスペースを作った。
 昼前には再び雨が降り始め、メルモやアイルが寝た。
 組み立てて、晴れたら外で実験ができるというところまで来ると、俺もベルサもシンシアも限界で、眠気覚ましのブラッドベリーの汁で、口周りは赤くなっていた。
「あとは晴れるのを待つだけね」
 アシュレイさんは、ニッコリ微笑んだ。
「ええ、そうですね…ちょっと、俺ら限界なんで、寝ます。何かあったら起こしてください」
「はいはい。さ、皆家に入って、お姉さんたちの邪魔しないように」
 アシュレイさんは、見に来ていた子どもたちを連れて、家の方に帰っていった。
 倒れるように毛皮の上に寝転がると、俺の意識は彼方へと飛んでいった。

 起きたのは夕暮れ時。
 雨は止み、雲の切れ間からオレンジ色の空が覗いていた。
 俺が起きると、周りで寝ていた女性陣も起きたようだ。
 セスと、シンシアはいなかった。
 工房を出ると、セスとシンシアが料理の乗った皿を倉庫へと運んでいた。
「あ、社長!夕食、皆で食べることになりました」
「そうか。何か手伝うことあるか?」
 俺が聞く。
「だったら、水を汲んできて、クリーナップでキレイにしてもらえますか?」
「わかった」
 井戸の穴がある方に、アイルとベルサと共にそれぞれ樽を抱えて向かった。
 メルモはセスに言われて、料理を運ぶのを手伝いに行った。

 ロープの付いた桶を穴に放り込み、引き上げ、水を汲む。汲んだ水を樽に入れる。少し多めに汲んでおく。3人で交代でやれば、そんなに苦でもなかったが、時間はかかった。
別に今くらい魔法陣でやれば良いと思いついた頃には、樽の中の水は一杯だった。
 三つの樽の中の水をクリーナップでキレイにし、倉庫に持っていく。
 普通だったら重くて持てないかもしれないが、3人とも普通の腕力じゃなかったので難なく運ぶ。
 倉庫には、ガルシアさん一家の他、うちの社員と中央政府一行、それに見知らぬ身なりの良い中年男性がいた。
 その中年男性はガタイが良く、軍人っぽく、中央政府一行に気を使っているようだった。
「どちら様ですか?」
と、俺がガルシアさんに聞くと、
「ヒルレイク王国の調査員で、グイールさんだ」
と、教えてくれた。
「一通り、説明は済ませた」
 アルフレッドさんが俺に言う。
「あ、どうも。ナオキです。清掃駆除会社をやっております。よろしくお願いします」
「お噂は伺っております。ヒルレイク王国、軍諜報課のグイールと申します」
 グイールと挨拶を交わし、椅子に座る。
 机にはテーブルクロスがかけられ、その上に料理の皿が並べられている。
 肉野菜炒めや、鳥の魔物の焼いた肉、シチューなどで、とにかく、皿が大きく量も多い。
 アシュレイさんは「うちはいつもこのくらいよ」と言っていた。
 子どもたちはちゃんと「いただきます」と言ってから食べていた。
 ガルシアさんと、アルフレッドさん、サブイ、スポークスマンの青年(ジェイソンという名前らしい)は先に食べていた。
 俺たちの分もあるらしく、遠慮無くいただくことにした。
 食べながら、ガルシアさんとアルフレッドさんの話を聞いていると、道に関しての話し合いは進んでいるようだった。
「おっ、それで、ナオキよ」
 アルフレッドさんが俺を呼んだ。
「なんです?」
「ちょっと、ヒルレイクの王都にワシと共に行くぞ」
「んぐ、なんでですか?」
 食べていた肉を吹き出しそうになりながら聞いた。
「グイール、説明してくれ」
「北方の国との国境付近に竜が二頭現れましてね。国王がすっかり城に篭ってしまい、部屋からも出てこないような状況になってまして」
 グイールが俺に、王都の状況を説明してくれた。
「それで、俺が王都まで行かなきゃならないんですか?」
「竜の知り合いがいるそうですね」
 いるにはいるけど。というか、その竜二頭が知り合いだけれども。
「運河作りは王の命令によるものだ。王が中止を宣言しなければ、計画は進んでしまうことになるぞ」
「ん?それで、俺にどうしろっていうんですか?」
 運河作りを止めたいのは同じ気持ちだけど、俺が必要とは思えない。
「王を部屋から出してくれ。部屋から出してくれさえすれば、グイールが説明して、ワシも交渉する」
「サブイさんが力ずくで出せばいいんじゃないですか?」
 サブイに振ってみる。
「私はダメですよ。中央政府の者が手を出すと、それだけ道の完成が遅くなるとお考えください」
「でも、王を部屋から出すだけですよね。側近の人とか大臣とかがするようなことなんじゃないですか?俺は、ただの清掃駆除業者ですからね」
「そう言うな。ちょっとくらい協力してくれ」
 めんどくせ。
「お腹すいたら、自然に出てくるんじゃないんですか?」
「城の料理人が処刑されてしまいます」
 グイールが言う。
「ヒルレイクの者でもなく、中央政府とも関係のないナオキが適任じゃ。力ずくではなく、王を部屋の外に出してみよ」
 そう言われてもなぁ。
「報酬は出るんですか?」
 ベルサが横から聞いてきた。
「おう、出すぞ」
 アルフレッドさんが言う。
「「やります!やらせます!」」
 アイルとベルサが即答する。
「いや、俺たちは風車とポンプをだなぁ…」
 ノームフィールドでの仕事が残っている。
「それは私たちがやっておくよ。ナオキは王都に行ってきなよ」
「そうだ、ちょっと行って王様を部屋から出すだけだろ?簡単な仕事じゃないか」
 アイルとベルサが結託すると、もう断れそうにない。
「だったら、一人新人をつけてくれ」
 道連れを一人要求する。
「いいだろう」
「メルモ!」
「え!?私ですか!?」
 王を部屋から出す案はすでに思い浮かんでいた。
「イヤダニはすでに調教済みか?」
「え?テイムしてるかってことですか?いや、試してはいませんけど」
「出来るか?」
「実家では、ゴートシップのテイムはしてました。でも虫系の魔物は、どうでしょう…?」
 メルモの実家はゴートシップの牧場をやっている。
「飯食い終わったら、やってみよう」
「わかりました」
 まぁ、最悪、調教済みじゃなくてもいいけどね。
「で、やってくれるのか?」
 アルフレッドさんが聞いた。
「やりますよ。社員が仕事受けちゃったんでね。なるべく早めに出発しましょう」
「わかった。明日の朝出発しよう。グイールも良いな?」
「承知いたしました」
 そういうことになった。

 食後、宿に戻り、メルモがイヤダニの瓶の前で何事か話しかけると、瓶の中のイヤダニたちは一列に並んだ。
「出来るみたいだな」
「はは、私も自分のことなのに知りませんでした」
 ビーストテイマーとしての才能があるなら、伸ばしてやるのも良いな。
「どうだった?」
 アイルとベルサ、セスが一足遅れて宿に帰ってきた。明日のスケジュールを、アシュレイさんたちと話していたのだ。
「メルモにはビーストテイマーの才能があるのかもしれない」
 俺が言うと、
「そうか。今度からいろいろ試してみるか」
と、アイルが答えた。
「そっちは?」
「晴れたら風車とポンプを組み立ててみる。雨が降ったら、また種の団子作りだ」
「村から出て行った人たちの家に、種が残っているかもしれないらしい。教会にも種がないか聞いてみる」
 アイルとベルサが言う。
「あれ?そういや、アルフレッドさんたちは?」
 村の宿はここしかないので、この宿に泊まるんじゃないのか?
「ああ、あのジェイソンって青年が教会に泊めてくれるよう頼んだらしくてね」
「そうか」
 意外に出来る奴なのかもな。
 変な時間に寝たので、特に眠くはなかったが、ベッドに入るとスッと眠ってしまった。

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