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駆除人 作者:花黒子

~駆除業者の日常~

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9話

 昼ごろまでカミーラに、俺が異世界者であること、錬金術や数学がカンストしていること、現在、魔法陣学がレベル5まで達していること、アイリーンとは恋人ではないこと、デートでの特別サービスは断るのか、などについて事情聴取された。

「さて、困ったことになった」
 セーラとバルザックを前に俺は自室で考えていた。
「すみません。我々が余計なことを言ったばかりに」
 バルザックが頭を下げた。
「全くだ。君たちは俺の奴隷なのに、何故俺が不利になるようなことを言うのか。いいか、俺は焦らず、地道に、ひっそりと、のんびり暮らしたいだけなんだ。それぇなのぉにぃだぁ!」
「申し訳ございません!お願いですから捨てないでください!何でもしますから!」
 セーラは土下座で、俺の靴を舐めまわす勢いだ。
「以降、俺のステータスや個人情報について他人に漏らす事のないように厳命する」
「「OK!」」
 2人は親指をダブルで立てながら言った。
「くそぅ!ここに来てフランクさが恨めしい!」
 そう言いながら、俺は準備を始めた。

 もうカミーラにバレてしまったので、隠す必要もなく魔法陣学を10までレベルを上げる。これで残りスキルポイントは16。
 魔法陣も魔石の粉を使わずに自分の魔力によって描くことができるようになった。
 また、魔法陣は一般的の魔法よりも魔力の消費が少なくて済み、大魔法でもほとんど魔力を使うことなく、作動させることが出来ることがわかった。
 コスパ最高!である。
 魔法陣学をカンストさせると魔道具製作スキルがうっすら現れた。
 スキルツリーをちゃんと確認すると工作技術と魔法陣学をレベル10まで上げると現れるらしい。
 工作技術はなぜか、すでにレベルが5まで達している。
 確かに元いた世界では日曜大工はできたし、小学校の頃、図画工作で賞を取ったことがあるはずだが、レベル5だとは。
 迷うことなく、工作技術を10まで上げ、ついでに魔道具制作スキルも10まで上げてしまった。残りスキルポイントは1。
 もう、半ばやけっぱちだ。

奴隷の2人にお使いを頼み、ハチミツや糸を大量に揃えてもらった。
ほとんど使わずに余っていた魔石の粉を水で溶かし、その中に糸を漬け込む。
その糸で、ツナギに魔法陣を刺繍し、防御力を飛躍的に上げる。
カミーラに言って、眠り薬を作ってもらい、ハチミツと混ぜ、鍋で煮込む。
そのまま、鍋を西の外れの屋敷まで運び、門の前に置く。
1匹でもかかれば儲けモンだと思っていたが、ベスパホネットは8匹も門の前で眠ってくれた。
8匹全ての腹に、魔法陣を描いた。

起き上がったベスパホネットは巣に帰っていった。
ベスパホネットの腹に描いた魔法陣は徐々に熱が発せられるIHの魔法陣で、最終的に爆発するように描いた。
8匹全て爆発したことを探知スキルと音で確認した。
だんだんと巣が焼かれ、ベスパホネットが屋敷から出て屋敷の周りを飛び始めた。
ただ敷地の外側を囲うように、風の魔法陣を描いておいたので、屋敷の敷地外に飛び出したベスパホネットは、羽をズタズタに切り裂かれ、上空に飛ばされ、数秒後に近くの地面に墜落していった。
夕暮れ時に特大のスズメバチが火に焼かれていくのを、俺と奴隷の二人は弁当のはちみつトーストを食べつつ、見守った。
その日は、もう特にやることもなく、火が消えるのを待つだけだったので帰って寝ることにした。

翌日、焼けてしまった屋敷に行くと、レンガ造りの外観は未だしっかりと建っていた。
ただ、中はすすだらけで、真っ黒だった。
セーラとバルザックとともにベスパホネットの死体から討伐部位であるお尻の針を引き抜いていく。
敷地内や1階の死体を片付けた頃には、すでに昼を過ぎていた。
3階は崩落し、2階が吹き抜けになっている。
女王蜂のベスパホネットもすっかり黒焦げで大きなイモムシのようになっていた。
腹の中には白いタマゴが、まだ熱を持って残っていた。
とてもいい栄養素なのだそうで、高く取引されるとバルザックが教えてくれた。
とりあえず、使えるもの、お金になるものは全て回収し、ギルドに向かった。

受付でアイリーンに報告し、討伐部位やタマゴを引き取ってもらう。
数が数だけに、報酬も多く、とりあえず5000ノットだけ先に貰うことになった。
屋敷にはベスパホネットの犠牲になった人の骨もあったため、先にそれだけ供養しておくように言っておいた。
行き場を失った魂が、魔物に変わることもあると聞いていたからだ。

金を数え、受け渡しが終わるとすっかり、窓の外は日が暮れている。
バルザックにゆっくり休むように言って、ギルドの宿屋に泊まらせ、俺とセーラは帰ることにした。
エルフの薬屋に戻り、自室で冒険者カードを確認するとレベルが65まで上がっていた。
セーラは自分で毛皮を敷き、自分の寝床を作っていた。
脱いだツナギをハンガーにかけて、クローゼットにかけた。
「全くこいつの出番がなかったな」
と、独り言をつぶやいた。
「出番がないほうがいいですよ」
 セーラが言った。
「セーラ、今日俺を鑑定したか?」
「はい、レベルが65に上がっております。ステータスをお伝えしましょうか?」
「いや、いい。ただ、俺がこうやってレベルを上げていることを知っておいてくれ。俺は今まで一度たりとも町の外に出たことがないし、一度も魔物や魔獣と戦闘をしたことがない。ただ、駆除していただけなんだ。それがどうも、カミーラや他の冒険者に後ろめたくてね。誰かに知っておいてほしかったんだ」
「OK!」
 セーラは親指を立ててにこやかに笑った。
「ただ、はっきり言って、こういう方法はナオキ様以外には考えつかなかったでしょうし、これからもやろうと思って出来る人は少ないと思いますよ」
「そうかなぁ」
「そうですよ。あ、今日は夜伽しますか?」
「いいよ、汗臭いし」
「わかりました」
セーラが自分の臭いを嗅いでいる。
 セーラと自分に生活魔法のクリーナップをかけて、寝床に潜り込む。
「明日、3人で銭湯にでも行こう。いつもクリーナップばかりじゃ精神的に癒やされないもんな」
「ありがとうございます」
「おやすみ、セーラ」
「おやすみなさい。ナオキ様」
 こうして作業ばかりに追われた日々が終わっていった。


 朝、目が覚めると、セーラとバルザックがドアを挟んで何か話していた。
「おはよう」
「おはようございます。すみません起こしてしまいましたか?」
「いや、いい。もう起きる時間だ。何かあった?」
 目をこすりながら聞いた。
「それが…」
「ナオキ様、実はですな。私めとセーラがギルドに協力を要請されました。屋敷の件で、ご遺族とご遺体の照合をするために、犬の鼻を持つ私めとセーラの鑑定スキルが入用だとかで。いかがいたしますか?ギルドにはナオキ様の許可がないとお受けできませんと言ってあるのですが……」
「おう、じゃあ行ってくれば?」
「いいのですか?」
「いいだろ。デートは明日だし、今日はすることがない。店番でもしてるから、2人は屋敷に行っておいで」
「わかりました。では」
 セーラとバルザックが出ていこうとした。
「ちょっと待て、いくらか金を持っていけ。昼飯代くらいないと困るだろ?ほら銀貨5枚で足りるか?」
 巾着袋から50ノット取り出して、セーラに持たせる。
「ナオキ様、こんなにはいただけません」
「いいんだよ。しっかり食べてからしっかり仕事してきたらいい。それに2人なら、無駄には使わないと思うから渡すんだ」
「「ありがとうございます!!」」
2人は深々と頭を下げて、屋敷へと向かった。

大きなあくびを一つしてから、階段を降り、カミーラに今日、俺が店番することを言った。
ついでに、この前の協力してもらった眠り薬代を500ノット渡すと、飛び跳ねて喜んでいた。
800歳の姿で飛び跳ねられると心配になるが、すぐに自分の部屋に戻り、20代の姿で「よろしく!」と出て行った。
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