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駆除人 作者:花黒子

~土の勇者と戯れる駆除業者~

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80話

 マーガレット宅のテラスには椅子とテーブルがあり、そこで俺は二人から中央政府について話を聞いている最中である。
 リドルの説明によると、中央政府には各国の役員が常駐しており、代表会議への準備のほか、会議で決まったことが履行されるかを確認したり、連合国全体の情報を共有したりしているという。
 実質的にヒルレイクの好戦的な態度を押さえ込んでいるとも言える。
 中央政府の軍備は、連合国各国が自慢の精鋭を送り込み、大陸の中でも随一と言われているそうだ。
「役員と精鋭の質を見れば、その国の国力がわかるのじゃ。役員の協調性や対応の遅さ、精鋭の態度が不遜だなどという国は、まず代表会議での発言力はないに等しいな。逆に不作で国力が衰退しても、役員や精鋭が優秀であれば、積極的に発言できるし、他の国が救済措置を取る。このシステムもマーガレットさんが作ったんじゃぞ」
「文化も生活様式も違う国同士が集まるのですから、意見の対立は当たり前です。ただ、品性や相互理解の精神は持てるはずです」
 品格というやつだろうか。
 もしかして、このままマーガレットとリドルの間で品格トークが始まったら、どうしよう。ついていけないし、出来れば、急ぎたいんだけど。
そんな不遜なことを考えていたら、ちょうど、ばぁやがお茶を持ってきてくれた。
台所から、竜たちの「お嬢さん!ちょっと来てくれ!」などという声がして、ばぁやは嬉しそうに笑いながら、すぐに台所へ戻っていった。

「お連れの方たちは面白い方たちね」
「ええ、根はいい奴らなんですけど、声が大きくてよく食べるんですよ。すみません」
 俺は頭を掻いてマーガレットに言った。
「謝らなくたっていいのよ。竜を家に招くなんて、とってもスリリング!楽しいわ!」
「竜じゃとっ!」
 リドルは驚いて、台所の方を見る。
「気づいていたんですか?」
 マーガレットはわかってて家に入れたのか。
「鑑定スキルを持っているの。リドルさん、怖がらなくても大丈夫よ。もし暴れてもナオキさんが止めてくれるはず。それだけの実力をお持ちだわ」
「どうでしょう。荒事は得意ではありません。戦闘スキルも持っていませんし」
「あまり謙遜すると嫌味になりますよ。ただ、もうナオキさんはそういうレベルにはいないようですけど」
 そういや、最近冒険者カードを見てなかったけど、どのくらいのレベルになっているんだろう。怖くて見れないな。
「そんな強いようには見えないんだがなぁ」
 リドルはこちらを見ながら言った。
「そうですねぇ。そこら辺の冒険者とは次元が違うでしょうね。比べるものがいないからわからないんですよ、きっと。正直初めてお会いした時、不思議でなりませんでした。伝説の勇者以上の女剣士が会社に所属しているということも不思議でしたが、社長さんは遥かにレベルが違うんです。そんな方たちが、清掃駆除業者をやっているというのは、意味がわかりませんでした。その上、倉庫の清掃は完璧。ばぁやの風邪まで治してしまう。あなた達は何者なの?神の使いか何か?」
 その通りです!…とは言えないよなぁ。全く、女の人の勘ってやつはこれだから厄介だ。
「ただの会社員ですよ。ちょっと業務が特殊なだけです」
「確かに、普通ではないな。ローカストホッパー駆除の際も…」
 リドルが頷きながら、話し始めようとする。
「あの…リドルさん?」
 俺は話を止め、今日来た目的の方に話を戻す。
「ああ、そうか。すまん。ナオキ殿の正体については一先ず置いておいて、そろそろ、本題に入ろうか」
「あら?本題はそれじゃなかったのね」
「ええ、実はですね。ヒルレイクで起こっていることなのですが…」
 あまり脱線すると、また話の矛先がこちらに向いてきそうなので、急いで地図を広げ、説明に入る。
 本日三度目の説明である。だんだん小慣れてきた。
 湖の水位と勇者の農園との関連性、運河建設の危険性、グール病、また今後起こりうる被害について話した。

「なるほど、理解しました。土の勇者の農園は潰す必要があると、そういう話ですね」
「そうです。そして、それは決定事項としてすでに動き始めています。彼らを呼んだのもそのためです」
 台所で騒いでいる竜たちを指しながら言った。
「しかし、調査の必要性が…」
「調査に関してはうちの会社がしています。今、アデル湖周辺に社員がいますから、連絡を取りましょうか?」
 俺は通信袋を取り出し、「これは遠くの人と連絡を取る魔道具です」と説明し、セスとメルモに連絡を取る。
「セス、メルモ、アデル湖周辺の調査結果はどうだ?」
『社長、やはりあの川以外は水量が減っている川はありません』
『むしろ、山からの雪解け水は少し増えているそうです。湖の水位が下がった原因はあのニュート族の集落近くの川で間違いないです』
「了解した。お前らは、そのままノームフィールドに向かって、アイルたちと合流してくれ」
『『OK!』』
 俺は通信袋を切った。
「事実とは残酷なものだ」
 リドルが溜め息を吐いて頷いた。
「被害も複数出ています。これ以上被害を増やしたくはありません」
「わかりました。ですが、混乱は避けられませんよ。北方の国との軋轢もありますし、農園が潰れたとなると、向こうも打って出てくるかもしれません。その場合は…」
 俺は台所を指差していた。竜たちは「うまいうまい!天才だ!」などと言っている。
「彼らがいます。彼らに国境沿いで休んでてもらえれば、それどころじゃなくなるんじゃないですか?あとはその間に体制を立て直す。立て直す案は幾つかあるんですが…」
「すでにそこまで考えてらっしゃるんですか?」
 マーガレットは驚いたように言う。
「ああ、しかもとびきりの案じゃ。むしろ、なぜ今まであの勇者に農園などやらせておったのか。案を聞いた今では自分たちの愚かさを知るばかりじゃ」
「そんなに…!?その案とはなんですか?教えてください!」
 マーガレットはせっつくように俺に言う。
「道を作るんです」
「道?」
「ええ、中央政府から勇者の村を通り、北方の国との国境付近まで道を通すんです」
「道なんか通したって…」
「ただの道ではありません。よく整備され、穴や石もなく、歩行者もいない。馬車専用の道です」
「馬車専用…?」
「そうです。馬車を最高スピードで走らせることが出来るような道があれば、連合国の軍を素早く、ヒルレイクに送り届けることが出来る」
「それは、そうでしょうけど、そんな道をどうやって…?」
「土の勇者は土魔法の大家ですよ。土魔法なら誰よりも詳しく、使いこなせる人です。道の整備など朝飯前でしょう。事実、勇者の村近辺の道は非常によく整備されていました」
「しかし、魔物がいるでしょう?魔物によって道が破壊されるのでは?」
 マーガレットは聞いた。
「ええ、ですから、魔物が嫌がる花の汁を道そのものに混ぜてみようかと思っています」
「そんな花があるの?」
「あるのじゃ。ローカストホッパーを駆除する際に使用したんじゃが、真ん中が黄色く、白い花片をつける花でな。あまり花屋では好かれていないそうじゃ。虫系の魔物や小さな魔物なら近づかない」
 リドルが説明してくれる。
「小さな魔物が近づかなければ、それを追う大きな魔物もめったに近づかなくなる」
「それでも荒らされることもあるでしょう?」
「ええ、ですから、軍隊が乗る馬車に勇者も一緒に乗せればいいんです。魔物は倒せるし、壊れた道も直せます」
 俺の言葉にマーガレットは頷き、考えながらお茶を一口飲んだ。
「でも、それは一時的なのでは?連合国の軍隊もずっとヒルレイクにいるわけにもいきません」
「馬車が運ぶものは何も軍隊ばかりではありません。武器も人も、食料も何でも運べます。しかも馬車の出せる最も速いスピードで」
「それは…そうですね。でも、そんなことをしたら、他の国から不満が出るでしょう?ヒルレイクだけを優遇するのか、と」
「マーガレットさん、今ナオキ殿が話したのはあくまでも有事の際の対応策じゃ。もし仮に北方の国が攻めてきた場合の話。でも、もし攻めてこなかったら?ルージニア連合国全土に渡る計画ですぞ」
 リドルはニッコリとマーガレットに微笑みかける。
 マーガレットはまだ気づいていないようだ。
「もし攻めてこなかったら…?」
「道路公団を作れば良いんです」
 俺は事が終わった後の勇者の勤め先について話し始めた。

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