挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
駆除人 作者:花黒子

~土の勇者と戯れる駆除業者~

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

77/249

77話


 セスの実家にはすでにメルモが帰ってきていて、セスの母親の手伝いをしていた。
「おかえりなさい」
 野菜を洗っていたメルモが顔を上げる。
「セス、もう一度言うけど、社内恋愛は自由だし、社内結婚だって推奨してるぞ」
 俺は後ろから小声でセスに言う。
「た、ただいま!」
 セスの顔は引きつっている。
「僕は笑いながら、魔物を撲殺する女性は苦手です」
 セスの言葉には妙な重みがあった。
「バカなこと言ってないで早く中に入れよ」
 後ろのベルサが文句を言いながら、家の中に入っていった。
「なんですかぁ?」
 メルモがベルサに聞く。
「男どもがろくでもないことを話してるんだよ」
「もう、セクハラで訴えますよ!」
 メルモが野菜を振り上げると胸が強調され、男として、どうしても目が行ってしまう。
「おう、勝てる気がしねぇ!」

 夕飯の手伝いをしながら、アイルを待つ。
 飯時を過ぎても、アイルは戻らなかった。
セスの妹や弟もいるので、先に食べておくことにした。
野菜炒めや、魚の出汁のスープ、焼き魚、セーラの母親からもらった魚の蒸し焼きもテーブルに並び、豪盛だった。
アイルの分だけ残し、一気に平らげてしまう。
セスの妹や弟も喜んでいたので、良かった。
食後のハーブティーを飲みながら、ただアイルを待っているのもなんなので、回復薬を補充することにした。
乾いた薬草を村のお店で買ってきて、井戸の側で、錬成していく。
メルモとセスは、食器の片付けや土産話を聞かせていた。
ベルサはセスの母親とハーブの育て方なんかについて話しているようだ。

回復薬を瓶に12本、樽に1樽、補充できた頃、山の方からすごいスピードでやってくる者がいた。
探知スキルでは青い光。アイルだった。
「悪い。遅くなった」
 そういったアイルの姿は砂漠を走ったせいか、薄汚れていた。
 クリーナップをかけたが、髪がゴワゴワしているらしく。
「少し水浴びしてから、行く」と井戸から水を汲んだ。
 俺は、セスの実家に戻り、アイルの帰還を皆に伝える。
 セスの妹と弟はすでに眠たそうにしている。
 母親と一緒に寝室へと向かった。

 料理を軽く温めなおしているうちに、アイルが髪を布で拭きながら家へと入ってきた。
「ただいま」
「おかえりなさい」
 メルモが剣や荷物を受け取っている。
「よし、じゃあ、アイルは食べながらでいいから、会議を始めよう」
 テーブルを囲んで、それぞれの報告を聞く。
「メルモから」
「はい、運河の予定地として湖の南側に2箇所看板を見つけました。工事は始まってませんでしたが、人足の小屋を建てるためか、木こりが木を倒してました」
「そうか、わかった。アイルは後にして、セス」
「はい、水量が減った川の調査をして、社長の指示で川を遡ったところ、水路がありました」
「水路?」
 料理を食べながらアイルが聞く。
「人工的な川だな」
 俺の言葉に、頷きながら口を動かすアイル。
「水路を下って行くと、村に出て社長たちと合流し、グールに遭遇しました」
「グール!?」
 アイルは眉を寄せた。
「ここから、俺が説明する。結論から言うと、土の勇者の広大な農園では綿を栽培していて、それによって、湖の水量が減ったのだと考えられるんだ」
「どういうことだ?」
 焼き魚にかぶりつきながら、アイルが聞く。
「綿には大量の水が必要で、土の勇者は水路を作って自分の農園に水を引っ張った。その結果、湖に流れ込む水量が減り、湖の水量も減ったんだと思う。これについては、明日にでも新人たちに湖周辺を回ってもらって、ウラを取ってきてもらいたい」
「「はい」」
「で、勇者の農園の土には魔石の粉が多く含まれてたんだよな」
と、俺はベルサに振る。
「そう、あそこの土には通常よりも遥かに多い魔石の粉が含まれていた。たぶん、魔法陣を描いて、綿を守っているんだろうと思うけど、どういう魔法陣かまではわかってない。ただ、その魔石を多く含んだ土が風に舞って、人が吸い込むと肺に魔石の粉が溜まるらしい。肺に溜まった魔石は、宿主の魔力を吸いながら、結合していって、最終的に拳大の魔石の塊になる」
「それで、グールになるのか?」
「なってました」
 アイルの問いにセスが答える。
「昼間にあった老婆が、夜にはグールになって屋根を飛び移ってたよ」
 見た人間たちが言うのだから、信じる他ない、とアイルは頷いた。
「対応策と治療法については、勇者の村にマスクを広めることと、吸魔草を使おうと思ってる」
「吸魔剤を使って、肺の中の魔石を割って、粉を体内から排除しようと思うんだ。ほら、ちょうどローカストホッパーみたいに。ただ、今は吸魔剤切れちゃってるから、一緒に明日採りに行こう」
 俺の説明をベルサが補足する。
「わかった」
「実験やなんかはこれからだ。うまくいくかどうかはわからない。勇者への説得はちょっと失敗した」
「なにやってんだよ…」
 苦笑いをしながら、アイルは脂のついた指を舐めた。
「もう一回チャンスくれ」
「まぁ、急に来た奴に農園潰してくれなんて言ったって無理だろ」
「そらそうだな。しかもナオキだろ。ザ・不審人物だから、しょうがないか」
 アイルとベルサはこちらを見て、盛大に溜息を吐いた。
「ひでぇ!でも、ちょっと当てがあってさ。フロウラの町に勇者の村出身の奴隷がいるんだ。ちょっと、その娘に手伝ってもらおうと思って。だから、後でお金頂戴。必要経費だよ?」
「変なことさせるなよ!」
「俺が、そんなことさせると思うか?」
「「思う!」」
 俺には全然、信用がないようだ。
 新人たちも俺をじっと見ている。
 ちっ!
「まぁ、その件は後で。アイルは?」
「リドルさんに説明してきた。よくはわかってなかったみたいだ。フロウラに行くならナオキから説明してくれ。ただ、このヒルレイクって国は最近、かなり儲かっているって言ってた。主な輸出品は布や綿って言ってたから、たぶん、その勇者の村で採れた綿花のおかげじゃないか?」
 アデル湖と勇者の村・ノームフィールドを含む国の名前をヒルレイクというらしい。
「連合国の中でも、ここ数年、発言力も増してきていて、北部の国との戦争も提案してきているんだそうだ。それを止めるのが大変だってぼやいてたよ。あとは、ローカストホッパーの駆除についてお礼を言われた」
 やっぱり戦争やる気になっちゃってるかぁ。めんどくさいなぁ。
「諸々了解した。えーっと、まずはこの状況を黙って見過ごしていた土の精霊については、クビで間違いないと思う。神のほうにも報告しておくとして…勇者が勇者じゃなくなった後についてなんだけど…」
「なんか案があるのか?」
「ああ、いくつかあるんだけど、たぶんこれがベストなんじゃないかなぁ、と思うんだよなぁ…」
 そう言って、俺は思いついていた計画を話してみた。

「そんなこと、できるのか?」
 アイルが顎に手を当てて、考える。
「できると思うんだよね。ただ、相当利権が絡むと思うけど」
「確かに、商人たちには喜ばれるだろうなぁ。連合国としても、推奨せざるを得ないのか…?」
 ベルサも天井を見ながら、想像しているようだ。
「ただ、この案は俺が勇者の村の方に行って思いついただけだから。皆も事後処理について考えといてくれ。全く違う事態になるかも知れないし、カードは多いほうがいい」
「でも、ルージニア連合国出身の人間としては、社長の案に賛成です」
「僕もです」
 セスとメルモは賛成してくれた。

 その後、明日について打ち合わせをして、就寝。

 翌日は朝から、全員で簡単な朝食を摂り、各々出発する。
 セスとメルモは湖周辺の水源の調査。釣り人から漁師、村で遊ぶ子供にまで、聞き取りをしていき、夜、俺に報告することになっている。
 俺とアイルとベルサは山を抜け、砂漠に行って、吸魔草を採取。
 正直、見つけるのが大変だったが、昼前になんとか群生地を見つけた。
 アイルとベルサは、その群生地の吸魔草を持って、猫族の村に帰り、吸魔剤を作る。
 出来たら、そのまま、勇者の村に行ってもらう。一応、俺への報告も忘れないよう伝えている。
 俺は、吸魔草を持って、フロウラに走る。
 勇者の村出身の奴隷の娘・シンシアの買い取りと治療が目的だ。
 それから、リドルさんと農園の話をして、事後処理についても、話さなくちゃだな。
 出来れば、瞬間移動とかしたいんだけど…神に時空魔法でも使えるように頼むか?
あ、神にも報告しなくちゃ。
 クソぅ!自分が、あと何人か欲しい。
 社員増やすかぁ……。
 と、考えながら走っていたら、なかなかピッタリのヤツを思い出した。
 早速連絡してみよう。
 通信袋に魔力を込め、呼び出してみる。
「元気か?レッドドラゴン」
『…おおっ!ナオキか?』
「人化の魔法は完璧か?」
『ハハ、それがなかなか難しいんだ。それよりどうした?』
「忙しくてさ。悪いんだけど、ちょっと仕事手伝ってくれないか?」
『ふむ。たまには人里に行くのも悪くない。構わんぞ』
「ありがとう。助かるよ」
『あ、黒竜さん。え?黒竜さんも行くんですか?』
 通信袋の向こうで、レッドドラゴンが慌てている。
「え!?」
 急に通信が一瞬切れ、
『なぁに、我輩の人化の魔法は完璧だ。ナオキ殿には世話になった。我輩も手伝うぞ』
と、黒竜の声がした。
「ちょっと戦力が多めだけど、まぁ、いっか」
 黒竜にフロウラの町の位置を教え、そこで合流することにした。

「あいつら肉食うよな」
 竜たちの助けはありがたいが、飯が大変そうだ。
 新人たちに魔物の肉の確保も伝えておいた。
「よし、肉で釣って、働いてもらおう」

+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ