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駆除人 作者:花黒子

~大陸に辿り着いた駆除業者~

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66話


「それでは~」
 手を振って山の方に帰っていく土の勇者ことガルシアさんを見送りながら、俺は心のなかで「まいったなぁ~」と言う言葉を繰り返していた。
「いいのか?帰してしまって」
 隣で一緒に手を振っているアイルが俺に聞いた。
「んん~とりあえず、居場所もわかったし、いいんじゃないか?」
「駆除対象だろ?」
「あんな人の良さそうなおっさん殺してみろ。夜眠れなくなるぞ」
「それは、そうかもしれないけど…、神の依頼なんだろ?」
「調査して、精霊をクビにすればいいだけだ」
「そんなこと出来るのかねぇ…?」

 ガルシアさんは、山を越えたところにある湖の更に先にある、荒れ地だった国で農園をやっているらしい。湖に仕事で来ていて、山の抜け道に魔物が湧いていることを知った、と言っていた。
「農園で妻と子どもたちが待っているので、オラはこれで、ハハハ」
 会話している内に、ガルシアさんは俺たちに慣れたのか、どんどん訛っていった。
 妻子がいて一人称が「オラ」の人を駆除できるだろうか、と葛藤の末、今は保留にしておいた。
 そもそも、土の精霊がサボってなかったら、クビに出来ないので、勇者駆除は出来ない。
 その場合は、どうするんだろうなぁ。「サボってなかったよ~」と言って終わりかな?
 帰ったら、教会で神に聞いてみよう。
 あいつ、祈れば出てくるのかな?
 まぁ、いいか。しばらく俺を放っておいたようなヤツだ。適当だろう。
 とりあえず、今は…。
「ローカストホッパーの駆除も終わりだろう。帰ろ」
「第2波来るとかないよな?」
 アイルが砂漠の北の方を見ながら言った。
「流石にないだろ」
 雨上がりの砂漠の空は青く、虫は一匹も飛んでいなかった。


 キャンプ地に帰ると、俺たちのテント周辺が真っ赤に染まっていた。
 どうしたのか近づいてみると、ベルサが燻煙式の殺虫剤を使ったらしい。
 雨よけのため結界魔法が施されているため、キャンプ地周辺だけが吸魔剤色になったようだ。

「結局、飛んできた群れがこっちの方まで来て、皆でうちのキャンプ地に追い込んだんだ」
 ベルサが説明する。
 周囲にはローカストホッパーが踏み潰された跡が地面にへばりついていた。

「お疲れ様。いやぁ、終わったな」
 リドルが近づいてきた。
「そうっすね」
 そうだ、これから報酬の件を話さないといけないんだった。
「作戦は成功だな…」
 そう言って、リドルは俺の肩をバンバン叩く。
「これから被害が出ていないか、周辺国に確認してから、コムロカンパニーには報酬が支払われることになると思う。大いに期待してくれていい。ワシがしっかり報告するからな。しばし、待っていてくれ」
 先手を打たれてしまった。
「さあ、皆集まってくれ!誰か死んだり、いなくなってたりしてないか?確認してくれ!帰るまでが作戦だ!」
 大テントに全員を集め、リドルが指示を出す。
 冒険者の兄弟がいなくなっていたが、すぐにうちのキャンプ地で見つかった。
 誤って吸魔剤が燻煙している中に飛び込んだらしく、二人とも魔力切れを起こしていたが、命に別状はなさそうだ。
 帰りは、馬車を二往復させ、5日かけて全員をフロウラに送ることになった。

 うちの会社はすぐにでも帰れるのだが、また何かあった時のために、最後に帰ることにした。
 キャンプ地をクリーナップでキレイにしたり、吸魔剤や駆除剤を確認したり、ポンプを洗ったりしていると、ブラックス家の執事が訪ねてきた。
 リドルやジェリたちは、先にフロウラの町に危機が去ったことを、報告しに行っているので、ブラックス家の人はこの執事しかいない。
「皆様、お疲れ様でございます」
「お疲れ様です」
「此度の作戦、コムロカンパニーなくしては成功いたしませんでした。今後、今回の駆除作戦を基に、ローカストホッパーの駆除対策が作られるかと思います。今後も、協力していただくことになるかと思いますが、どうぞよろしくお願いいたします」
 執事は深々と頭を下げた。
「ああ、はい。ただ、すでに、次の仕事が詰まってしまっていて、時間がそんなにないかもしれません」
「わかりました。こちらの方でも、ある程度詰めておきます。それから…、あの冒険者たちが、ナオキ様に用事があるとかで」
 見れば、冒険者ギルドの精鋭たちが残っていて、俺に挑戦しようとしている。
 すこぶるめんどくさい。
 キマイラを倒したことも、広まってしまっているらしく、バトルジャンキーたちが寄ってきてしまった。
 ここは一つ、うちの副社長に任せよう。
「アイルー、あそこにいる冒険者たちから挑戦が来てるよー」
「んあ?」
 アイルが振り返って、冒険者を見てから、ため息をついて、
「セスー、メルモー、あそこにいる冒険者たちが稽古つけてくれるってよー、相手してやれー」
と、新人に振っていた。
 新人たちに冒険者の精鋭を任せて大丈夫なのか心配になったが、今は片付けの方が重要だ。
 片付けをしながら、聞こえてくる戦闘の音は、割と激しかったが、新人たちにとってはいい稽古になっているだろう。うちの副社長の采配は的確だったようだ。

「それで、報酬は?」
 ポンプを箱詰めしながら、ベルサが聞いてきた。
「しばし待ってくれってさ」
「ちゃんと払ってくれるならいいか」
「あ、そうだ。キマイラ倒したあと、土の勇者に会ったんだ」
「あ、そうなの?」
「うん、湖の向こうに農園持ってるんだって」
「へぇ~。湖って東の山越えたところの?セスの実家があるところでしょ?」
「そうだったか?じゃあ、落ち着いたらセスの里帰りがてら、山の向こうに行ってみよう。調査して、土の精霊をクビに出来そうなら、クビにする感じで」
「そんな、ふんわりした感じでいいの?」
「いいんじゃない?神、結構適当だったし。土の勇者、すっごいいい人そうなおっさんだったよ」
「なんだぁ、じゃ、駆除できないかなぁ?」
「それならそれで、社員旅行ってことで」
「いいね!社員旅行!アイルーいい宿探そうぜー!」
 ベルサはアイルと、情報収集に向けて、じっくり話し合いをしていた。
 商人ギルドに「情報求む!」と依頼を出すかどうか、とか、どの行商人が一番いい宿を知っているか、などについて真剣に意見を出し合っていた。


 その後、4日間、特に事件が起こるわけでもなく、魔物を狩ってきては食べ、風呂に入り、満天の星空を見ながら寝るという、なんともダラダラとしたキャンプ生活だった。
新人たちは冒険者たちにボロボロにされ、冒険者たちも新人たちにボロボロにされていたので、少しは意味があったのかもしれない。
ベルサは、アイルを連れて砂漠の魔物についての調査をしていた。
俺も起きている時はついていった。
寝ていて、置いてかれたら、ブラックス家の執事と話して、連合国について聞いた。
連合国は北部の国の脅威に対抗するために出来たらしい。
歴史も古く、ここ200年ほどは戦争らしい戦争もないのだとか。

それから、久しぶりに通信袋でバルザックと会話をした。
夜中だったため、セーラからはヒューコーヒューコーという鼾しか聞こえなかった。
「久しぶり、最近、どうだ?」
『おおっ!ナオキ様、お久しぶりです!この前、羊族の方からマットをいただきましたよ。ナオキ様へのお礼の品だったそうで』
 そういや、俺、マットを頼んでたな。
「そうか、使ってくれ」
『ええ、非常に寝心地がいいです!ナオキ様は、今何処にいるんですか?』
「ああ、ルージニア連合国のフロウラって町にいる。会社作ったんだ。清掃・駆除会社」
『外国で会社ですかぁ。相変わらず、ハチャメチャなようでなによりです。ずっとその町に住むのですか?』
「いや、勇者探しながら各地を回るよ。あ、そうだバルザックも勇者の目撃情報とかあったら、教えてくれ」
『勇者ですか?勇者に会って何を?』
「駆除?」
『勇者を駆除するんですか?』
「あー神に会ってさぁ…」
『神?神ってあの教会で祈りを捧げる神様ですか?』
 説明するのめんどくさいなぁ。
「まぁ、そうだね。ん~説明するのめんどくさいんだけど、神から依頼を受けてさ…」
『神託ですか?ナオキ様は神託を授かったんですか?勇者を駆除するってそれ、邪神じゃないでしょうか?』
「あー邪神は邪神で会ったんだよね。神と喧嘩してた」
『……すみません。ちょっとこの老いぼれの理解が、まだ追いついていないです』
「そうか、まぁ、バルザックが元気そうで良かったよ」
『ナオキ様も型破りとか言うレベルを遥かに超えていらっしゃるようで…なにになるおつもりですか?』
「なにって…今は会社員だよ。社長だけど」
『旅に出て、会社員になったのですか?』
 冒険者が旅に出て、会社員になるって変かなぁ。変だなぁ。
『ドッギャン!ナナナナナオキさガッ!いったい!!!!』
 セーラが起きて、何かにぶつかったようだ。
「やあ、セーラ元気?」
『元気です!今は足の小指が痛いです!』
「そうか、なによりだな」
『今何処にいらっしゃるんですか?』
「今、外国。ルージニア連合国の南側にあるフロウラって町」
『手紙書きますからぁ!宿の名前教えて下さい!』
「まぁ、しばらく町にいると思うけど、商人ギルドに送ったほうがいいかも」
 商人ギルドなら、違う場所にいても連絡してくれるか、保管しておいてくれるだろう。
『しょ、商人ギルド?』
『会社を作られたそうだよ』
 バルザックが俺の代わりに答える。
「そうなんだ。今、俺、会社員。アイアムビジネスマンだよ」
『フフフ、そうですか、そうなりましたか!副社長の椅子を開けておいてください!私が座りますから!』
「副社長は2人とも知ってるアイルだよ。ほら、冒険者ギルドの教官の」
『な!あの女!いつの間に!わかりました!私が魔法で倒せば、いいんですね!』
「まぁ、出来るならね。ま、こっちはそんな感じだよ。2人とも元気そうでよかった。じゃまたー」
『はーい!』
『ちょっと、私まだ、そんなに話してませんよ、あー……』
 通信袋を切った。

 ついでにテルにも連絡を取ったら、恥ずかしそうに盛大な結婚式を挙げたことや、妊娠したことを報告してきた。
『この年で、まさか身ごもるとは…』
と、嬉しそうだったので「おめでとう!」と言っておいた。
 テルって50歳くらいじゃなかったかな?出産は大丈夫なのか?
 聞いてみたら、長寿であるエルフの血が混じっていたそうだ。
本人も知らなかったようで、びっくりしたと言っていた。
あとは大体、旦那とのノロケ話だったので、早々に切った。
それにしても、慶ばしいことだ。

アイルとベルサにも報告したら、
「「そうか!良かったなぁ!爆発しないかなぁ!」」
と、言っていた。


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