挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
駆除人 作者:花黒子

~大陸に辿り着いた駆除業者~

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

59/250

59話

「蝗害は発生すれば、最低でも10万ノット、金貨一千枚の経済的な打撃を受けます。もちろん、こちらとしても調査はしているのですが、打開策がないというのが現状ですね」
 役所に行って、ローカストホッパーの調査について聞いてみた。
 清掃駆除会社である、うちの会社の魔物学者が砂漠へ調査及び研究に向かうことを言う。
「本当ですか!!?是非ともお願いしたいです!駆除方法を確立すれば、連合国で報奨金を支払いますよ。ただ、御社の実力をまずは見てみないことには…なんとも言えないのですが…」
「ああ、そうですよね。ん~例えば、この役所内にいるマスマスカルとバグローチの駆除をしてみましょうか?」
「え!?いいんですか?」
「ええ、お金は貰いますけどね」
 そう言って、探知スキルで建物内を見ながら準備を始める。
 いつものベトベト板に、殺鼠団子、殺虫団子を用意。ポンプに液体の殺虫剤を入れる。
 バグローチ用の殺虫剤は以前、テルと会った時のものを使う。
 この殺虫剤で、すべての虫系の魔物を倒せればいいのだが。
すでにイヤダニにもローカストホッパーにも使用したが、効果はなかった。なかなかうまくいかないものだ。
役所は2階建てで、地下に倉庫がある。
上から順番に罠を仕掛け、殺虫剤のノズルが届く場所には散布していく予定なのだが…。
職員の人たちに挨拶をしながら、部屋を順番に回っていくと、たいてい「急いで片付けるので後にしてくれ」と言われる。
結局、人のいない倉庫が一番初めになる。
倉庫の一角は、図書室のように本や資料が並ぶ棚があった。
背の低い老人が一人、資料を読んでいた。
倉庫の管理人だろうか。
「こんにちは。害虫駆除の業社なんですが、ここの駆除を始めてもいいですか?」
「ああ、構わん」
 老人は高い声で返事をした。
 老人の耳は少し尖っているので、小人族なのかもしれない。
 10分ほどで作業は終わり、出ていこうとすると声をかけられた。
「なんじゃ、もう終わりか?」
「ええ、罠は仕掛け終わりましたし、怪しいところには殺虫剤を散布しましたから」
「散布とな。ふん、その器具で中の液体を噴射するのか?面白いのぅ」
 老人は興味深そうにノズルの先を見ている。
 作った経緯や構造などを説明すると「すごいな!」などといいリアクションをしてくれる。
「いやぁ、この器具の良さを理解してくれる人に初めて会いました」
「この器具は非常に優秀な器具じゃ。注文すれば作ってもらえるか?」
「ええ、素材さえあれば、作ることはできますよ」
「是非とも頼む。リドルだ。ブラックス家当主、リドル・ブラックス」
 リドルは握手を求めてきた。
 俺はリドルの手を掴み、握手をする。
「ナオキです。清掃駆除会社、コムロカンパニー社長のナオキ・コムロです。当主ということは貴族様ですか?」
「一応、ここら一帯を治めている国王の従兄弟だ。お主は移民か?」
「ええ、旅をしながら会社を経営しております。と言っても、この街で会社を起こしたのですが」
「そうか。ところで、お主、砂漠に興味はないか?」
 唐突にリドルが聞いてきた。
「え?ああ、ここの駆除が終われば行くつもりです。ローカストホッパーの研究で」
「なんと!そうか、奇遇だな!ワシもたった今ローカストホッパーについて調べていたところじゃ。数日前に砂漠で雨が降ったそうでな。雨が降った後に大発生する確率が高いようなのじゃ。この資料を見てみろ。これは30年前、砂漠で観測した記録なのだが…」
 そう言って、リドルは羊皮紙に書かれた年表のような物を見せてきた。
 そこには、数日雨が続いた後、鉄砲水にあい、その後、ローカストホッパーの大発生と書いてあった。
「俺も、昨日、砂漠で鉄砲水にあったという奴隷商と会いました」
「そうか、急いだほうがいいかもしれんな!」

 リドルの動きは早かった。
「ローカストホッパー異常発生対策本部を設ける!各ギルドに連絡を取り、情報を収集せよ!まだ、大発生したと確定したわけではない。ただし情報があれば、情報の大きい小さいにかかわらず、どんなことでも集めろ!」
 急に一階のホールに現れたリドルの言葉に、役所の職員たちはポカン顔だったが、すぐに慌ただしく動き始めた。
 俺も、社員全員に通信袋で伝える。
「もしかしたら、数日、砂漠に雨が降り続ければ、ローカストホッパーが大発生する可能性があるそうだ。殺虫剤の開発と、発生原因の解明を急いでくれ!」

『了解!片っ端から森の花を採取してくる』
『わかった!私の準備は整っている。このまま、街を出て森を抜ける。食料等はナオキが後で届けてくれ!』
 アイルとベルサが答える。
「了解!とりあえず、今日は砂漠近くの草原で、キャンプを張ってくれ。アイルたちも花の採取が済み次第、草原まで来てくれ」
『了解!』
 やはり通信袋は便利だ。
「なんじゃ…!!!それは!!?」
 リドルが驚愕の表情で聞いてくる。
「遠くの人間と連絡を取る魔道具です。今、うちの社員に連絡を取りました。全員、砂漠近くの草原に向かっています。今夜から、砂漠の天気の観測を始められます」
「ナオキと言ったな。お主の会社の協力が必要なようじゃ!頼む!」
「ええ、もちろんです。そのために動いてますから」
「よいか!これより、このナオキという男の言うことを聞き、必要な物は渡すように!これはブラックス家当主としての命令だ!」
「「「「「はい!」」」」」
 俺は、殺虫剤の開発が急務であることを言って、職員たちに心あたりがないか聞いてみた。ほとんど、森に行ったことがある職員はおらず、冒険者ギルドに聞いてくれ、と言われた。
 すでに冒険者ギルドに依頼は出してあるので、それについては待つしかないようだ。
 ポンプに必要なフォラビットの食道などと、虫取り網を用意してもらう。
 燻煙式の殺虫剤もできれば使いたいので、要らなくなった鉄製品、穴の開いた鍋なども合わせて頼んでおいた。
 殺虫剤の中身は、環境に悪いものを使うと神に怒られそうなので、配慮をするべきか。
 そう考えると、やはり植物などの天然成分がいいだろう。

 リドルはハトの魔物を使って、ブラックス家の人々を集めているようだ。

「じゃ、一旦、俺は草原までひとっ走り行ってきます。食料などを届けないといけないので」
「そうか!わかった!今フィーホースを用意させる」
 リドルが職員に指示しようとするのを、
「いや、大丈夫です。走っていった方が早いので」
と、止めた。
「待て待て、草原までは1日半はかかる距離だぞ」
「大丈夫です。2、3時間で帰ってきますから、ポンプに必要なもの揃えておいてください。あと、花屋を回ってくれますか?何匹かローカストホッパーを捕まえてきますから。あ、これ渡しておきます。何かあったら魔力を流すと連絡取れますから」
 そう言って、通信袋をリドルに渡す。

役所を飛び出し、屋台で食料を買い込む。
ちょうど、屋台で飯を食べている商人ギルドの職員さんに会って、「コムロさん、ポスター作ってます?」と聞かれた。
「ああ!今それどころじゃなくて…」
「応援はしてますよ。頑張ってくださいよ!」
と、肩を叩かれ、励まされた。
「ありがとうございます」
と頭を下げて、別れた。
 あの職員さんも、商人ギルドに帰ったら、俺が忙しい理由をわかってくれるだろうか。
街を抜け、森を走った。
 森を走っている途中でベルサと合流。
 荷物を半分持ってやった。

「ナオキが本気で走ると置いてかれるな」
と言うので、靴に風魔法の魔法陣を描いてやった。
「これじゃあ、止まれないよー!」
 ベルサの叫びを聞きながら、並走する。
 このペースなら昼過ぎには着くかな。


 草原に入り、キャンプ地を決め、結界魔法の魔法陣をさらっと描く。
 空はほとんど快晴に近い。ただ、遠くの空に雲が見える。
 あれが雨雲にならなきゃいいが。

 テントを建てたりするのは、後にして、すぐに砂漠に入り、ローカストホッパーを探す。
俺は一人で砂漠を走り回り、探知スキルで見てもローカストホッパーが大量発生しているのは確認できなかった。
ひとまず、安心だろうか。
巨大なサソリの魔物・ポイズンスコーピオンやバカでかいミミズの魔物・サンドワームなども現れたが、すべて殴って倒す。特に興味が無いので、魔石を取ったら放置し、小さな虫の魔物を探す。

 日射病や熱射病の危険もあり、砂漠の風は強く、砂が舞って視界が悪い。
 更に口を開けていると、すぐに乾き、中に砂塵が入って気持ちが悪い。
砂漠でマスクは必需品だ。
一旦、草原のキャンプ地に戻ると、虫取り網を持ったベルサが大量にローカストホッパーを捕獲していた。虫取り網を持ってきてるとは準備がいい。俺も買っとけばよかった。
「これはたぶん、バンドと言われるものだ。草原近くの茂みにたくさんいた。普通は一匹でいるんだけど、すでにこいつらは群れている。まだ、攻撃性はないがな」
 地面に、結界魔法の魔法陣を描き、中に入れる。
 バスケットボールコートの中心の○くらいの大きさだ。
 5匹貰って瓶に詰め、街へと帰ることに。

「最近走ってばっかりだなぁ」
 屈伸をしながらぼやいた。
「いいじゃないか。仕事が無いよりはよっぽど健康的だ」
「確かに」
「報酬決めといてよ。うやむやになると、タダ働きになるから」
「そうだった。通信袋貸して」
「ん」
 ベルサが通信袋を渡してきた。
「ローカストホッパー持って、今から帰ります」
『お、おう!了解した!』
 戸惑っているリドルの声が返ってきた。

「夜はこっちに帰ってくるのか?」
 ベルサが聞いてくる。
「わからん。今回は駆除範囲が広すぎるから、どうやったって人を集めなくちゃならないからね」
「まだ時間はある。それに、案外、大発生なんかしないかもしれないしね」
「それが一番だろ。備えておけば、いつか役に立つさ。じゃ、あとで連絡する」
「はい~気をつけて~」
 手を振るベルサを残し、俺は森を抜け、街へと走る。

+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ