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駆除人 作者:花黒子

~海へと繰り出す駆除業者~

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46話

 早朝、俺たちは島の中心へと向かった。
 メンバーは俺とアイルと黒竜。
 全員、服の胸や背中などに耐性系のワッペンがつけられている。

 魔物に襲われたりすることもなく、ドラゴンゾンビのいる洞窟まで、辿り着いた。
 近くの沼からカエルの魔物の鳴き声がしている。
 後で、沼の方も回って、できるだけゾンビ化している魔物を駆除しよう。
 探知スキルでドラゴンゾンビの位置を確認する。
 洞窟は奥に行けば行くほど、深くなっていくが階層に分かれているというわけでもない。
洞窟にはドラゴンゾンビしか魔物はいないようで、いてもマスマスカルやポイズンスパイダーなど小さい魔物くらいのようだ。
 これなら、プランAで大丈夫だろう。
「師匠に何かを聞きに行くなら、今しかありませんので、行くならどうぞ」
「わ、我輩1人でか?」
 黒竜が俺に聞く。
「その方がいいかと思いますが……。俺は準備がありますし、討伐時には意志を伝えるような状況にならないと思いますので」
 アイルも、今から討伐する対象に情をかけたくないとの理由で「行かない」と言う。
「探知スキルで見ていますので、何かあれば駆けつけます」
 俺がそう言うと、黒竜は
「わかった」
と首肯し、1人、洞窟の中に入っていった。

探知スキルで黒竜とドラゴンゾンビの様子を見ながら、洞窟の上の地面を進む。
決めていた場所にたどり着き、地面を平らに均していく。

どうやら黒竜はドラゴンゾンビに会えたようだ。

 黒竜がこちらに来る前に、平らに均した地面に魔法陣を描く。
 描き終わると、俺はアイテム袋から、回復薬が入ったポンプを背負う。
 黒竜がこちらにやってくるのを待ちつつ、アイルと最終確認。
 アイルの剣にはレッドドラゴンの加護が付与しており、赤く輝いている。
 俺は身体に流れる魔力を練り上げていく。

 ザッ

 黒竜がゆっくりとした足取りで、俺達の前まで来た。
 黒竜は沈痛な面持ちで、重い口を開いた。

「殺してくれ、とのことだ」

「承りました」

 俺は深く頭を下げ、昨夜、黒竜が話していたことを思い出す。
「白く美しい竜だった。優しくもあり、厳しくもあった。そして恐ろしく強い」
「何故、勇者に負けたのか、今もってわからん」
 俺とアイルは、頭巾をかぶり、マスクを装着する。
 黒竜は足元に描かれた魔法陣から離れた。
 俺は魔法陣に練り上げた魔力を込める。

 ズンッ

という音とともに、地面がゆっくりと落下し始める。
 俺が描いたのは重力魔法の魔法陣。
 真下にはドラゴンゾンビと化した黒竜の師匠、光竜。

 黒竜は地面に空いた穴の縁からじっとこちらを見つめている。
 俺は、黒竜の視線を真っ直ぐに受け止め、魔力を魔法陣に込め続ける。

 魔法陣と同じように丸く空いた穴から、朝の青い空が見える。
 その穴が小さくなってきた頃、下から、竜の鳴く声が聞こえてきた。
 一気に、足元の土や岩が落下し、空中に投げ出される俺とアイル。

 下を見ると、紫色の毒霧が充満した部屋の中で、のたうち回っている黒い影が2本、見える。
 黒い影が、ドラゴンゾンビの首と尻尾だとわかった時には、アイルが首へと突っ込んでいった。
 胴体を岩や土に埋もれたドラゴンゾンビは、どうにか抜けだそうと、毒の霧を噴霧しながら、雄叫びを上げている。
 落下スピードより速く、空中を駆け抜けるアイルは、赤く光る剣をドンラゴンゾンビの首に振るう。

「グギャァァァアアアアアアアッ!!」

 断末魔の咆哮とともに両断された首は、地面に落ち、未だのたうち回ったまま。
 地面に降り立った俺は、のたうち回る首に回復薬を噴射し、溶かしていく。

 あとは、掘り起こした胴体をアイルが解体し、俺が溶かしていくだけの作業だった。
 部屋の通気口になった天井の穴から毒霧が外に向かって出ていく。
 黒竜にもマスクを渡しているので、大丈夫だろう。
 ドラゴンゾンビの身体をすべて溶かし、洞窟内にいる小さな魔物に回復薬を噴射しながら、外に出る。

 黒竜が洞窟の外で待っていた。
 俺は黒竜に、ドラゴンゾンビの胸部にあった大きな魔石を渡す。

 黒竜は魔石を受け取ると、震えながら天に向かってひと鳴きして、巨大な黒い竜へと姿を変えた。
 大事そうに魔石を胸に抱きながら、大きく立派な羽を羽ばたかせて、上空へと飛んでいってしまった。
 俺達には、黒竜とドラゴンゾンビになってしまった光竜との関係がどんなものだったかは、わからない。
 ただ、黒竜にとって大事な仲間だったということくらいはわかる。
 俺とアイルは、黒竜の目に溜まっていた涙のことは忘れることにした。

 俺とアイルは、なるべくゆっくりゾンビ化した魔物を探しながら、洞窟近くの沼を回った。
 2人で帰ったら、黒竜がどうしたのか、必ず聞かれるだろう。
 沼にいる、イエローフロッグから即死系の毒を採取していたら、人化した黒竜が戻ってきた。
 目の周りは赤く、服はボロボロだった。
「すまなかった。嫌な役目を押し付けてしまった」
「いえ、仕事ですから」
「…ありがとう」

 先程まで青かった空には雲がかかっていた。
 俺たち3人は曇天の下、皆が待っている「黒竜の塾」に帰った。
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