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駆除人 作者:花黒子

~駆除業者の日常~

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3話

 昼食を屋台で済ませ、再び地下水道に向かう。
 午前中やったことの繰り返しで、100匹ほどマスマスカルの死体を集めて尻尾を切り、死体を10等分して、袋に入れ、外に出て森に投げ込む。
 仕掛けた殺鼠団子が減ってきたので、地下水道の中で作ってしまうことにした。
 材料があって簡単に作れるし、新居を臭くしたくはなかったのだ。
 仕掛け終わると、新居に帰る。

 最終日まで、こんな感じで過ごしていたら、レベルが38にまで上がってしまった。
 たった9日で、レベル2から38まで上がった冒険者などいないらしく、ギルドの受付嬢が、方法を隠すようにとアドバイスをくれた。
 隠すも何も役所に行くとバレてしまうのだが。
 結局、討伐したマスマスカルは1000匹を超えており、役所の方もそんなに予算を組んでいなかったと泣きを入れてきたため、3000ノットで手を打つことにした。
 当面、お金に困ることはなさそうである。
ステータスは
体力:170
魔力:102
早さ:91
腕力:138
丈夫さ:89
賢さ:不明
と、大幅に上がってしまった。
レベルが99でカンストだとすると、中堅ほどの冒険者くらいになれただろうか。
一切、魔物や魔獣と戦っていないのだが。
 ちなみに、スキルポイントは火魔法レベル1以来割り振っていない。
 こちらの世界で、掃除や害虫駆除に役立つスキルでどんなものがあるのかわかっていない。
 ということで、カミーラに聞こうと母屋に行くと、きれいなエルフの娘さんが薬を調合していた。
「なななななんじゃ、急に!入ってくるならドアぐらいノックせんか!」
「ごめんごめん、ところでどちらさんですか?カミーラのお孫さんですか?」
「え?ああ!そう、私はカミーラの孫のカ、カモミールよ」
なんだか、しどろもどろと言った感じで受け答えしている。
というか、カミーラと同じ声なので、たぶんカミーラが若返りの薬を開発したか、普段は年寄りのふりをしているか、のどちらかだろう。
 もし、若返りの薬を開発したら、自分の凄さをじまんするはずだ。
 だとしたら、普段年寄りのふりをして、店に出ていることになる。
 何のために?そのほうが薬が売れるから?
 なるほど、納得である。
 20代くらいの見た目のエルフから薬を買うより、老婆のエルフのほうが薬の効果が高そうだ。
「で、カミーラ。質問なんだけどさ」
「わ、私はカモミールよ。質問って何?」
「掃除や害虫・害獣駆除に必要なスキルって何か教えてほしいんだよね」
「そ、そんなことギルドで聞けばいいじゃない」
「最近、ギルドの人はなぜか俺に武器や防具を買わせて森に入るよう必死で、聞く耳を持ってくれないんだよね」
 たぶんレベルが上ったせいだ。
「ふ~ん、まぁいいわ。掃除なら、クリーナップっていう生活魔法があるから、生活魔法のスキルに割り振るといいと思う。ただ、レベル5まで上げないといけないんだけどね。貴族の執事とかメイド以外で持ってる人はあんまり見たことないわね」
「なるほどね」
 聞いてすぐに、レベル5まで上げてしまう。
 執事やメイドって貴族の家にしかいないってことは、まだ一般家庭にクリーニングという考えが及んでいないかもしれない。
 商売になりそうである。
「害虫・害獣駆除はよくわからないわ。毒草の調合くらいかしらね。まぁ、調合スキルが上がれば自然と覚えるんじゃない?あ、探索スキルもあったほうがいいかもよ。害虫を見つけるの大変でしょ」
「そうか!なるほど、ありがとう。助かったよ、カミーラ!」
「いや、なんかあったら、この大家に聞いてよね!…あ!」
カミーラが墓穴を掘ったところで、俺はそっとドアを閉めて、自分の部屋に戻った。

とりあえず、調合スキルのレベルを5まで上げてみる。
これで頭のなかにレシピがインストールされるわけじゃないらしい。
ただ、薬屋の棚に並んでいるアレとアレを組み合わせれば、体力が回復するだろう、ということがわかるくらいだ。
知識が足りないので、この辺は本かカミーラの手を借りよう。
探索スキルはあって困るようなものじゃないと思うので、一気にレベル10まで上げてみた。
スキルは10が最高値で、カンストまで上げてしまったことになる。
探索すると、町全体の地図が頭のなかに現れ、知り合いの位置が緑に光り、知らない他人が青く光っているのがわかる。
森の端にも範囲が及んでいて、その中に赤く光っているものがあるので、たぶんあれが魔物なのだろう。
ちなみに3Dのように地下や、高い階層が見られるようにも出来る。
地下水道には逃げ延びたマスマスカルがうろちょろしているのが見えた。
増えたら、役所に言って予算を出すように提言するのもいい。
意外にも町の中には魔物が潜んでいそうだ。
町の地図上に赤い光が幾つか確認できる。
まぁ、今は放っておこう。

そんなことより、今は寝具のほうが重要だ。
ベッドのマットがないのだ。
この世界では羊毛がないので、ゴートシップという羊の魔物の毛が流通しているのだが、最近は、減少傾向にあるとかでやたらと価格が高い。
藁に敷布でもいいかと思ったが、宿のベッドに使われていたマットがあまり寝心地がよくなかった。
さて、どうしたものか。
いっそ、裁縫スキルとかに割り振って自分で作ってしまおうか。
でも、そんなことをしたら、後で後悔しそうだなぁ。
うんうん唸りながら、二階から階段を降りてきた俺に、老婆姿のカミーラが声をかけてきた。
「険しい顔をしてどうしたね?腹が痛いのかい?」
「いや、そうじゃなくて、ベッドのマットが欲しいんだけど…高くてね」
「役所からたくさん報酬を貰ったんだろ?少しくらい贅沢しても罰は当たらないよ」
「ん~まぁ、そうなんだけど。どうしても生来の貧乏性でね。いいものがないなら自分で作ってしまおうかと思ってたんだ。それで、裁縫スキルでも取ろうかと思ったんだけど、やっぱり貧乏性が出て、スキルポイントを使いたくないんだ」
「呆れた奴だな、君は。なら、裁縫スキルを持っている人を探せばいいじゃないか?なんだったら、ギルドで依頼をしてみるってのもいい」
「なるほどね、ちなみにカミーラは誰か知らない?」
「ん~、まぁ牧場の奥さんや工房を持ってるところの人なら持ってるかもしれないね。服がよく破けるはずだから」
「そうか、ありがとう。ちょっと行ってみる」


 牧場は町から少し離れた丘の頂上にあった。
 馬車の轍が通った道を行けば、ほとんど魔物や魔獣に遭うこともない。
 だらだらと丘を登っていると、柵の向こうにゴートシップの群れが、牧草を食んでいるのが見えた。
 牧場にいる人は皆、羊の獣人のようで耳と巻いた角が頭から生えている。
「こんちはー!」
「こんにちは」
 近くを通りかかった羊の獣人の女の子に声をかけた。
「この牧場の人で裁縫スキルを持っている人っていますか?」
「へ?裁縫?それなら、ほぼ皆持っていると思いますが」
「あ、そうなの!じゃあ、ベッド用のマットって作れますか?」
「作れますけど、ほとんど専門の裁縫屋さんに頼みます」
「そうですか。じゃ、ここにはないのかぁ」
「マット探してるんですか?」
「はい」
「失礼ですが、職業は?」
「一応冒険者をやっておりますが、基本的には清掃業か害虫・害獣駆除を専門にやっております」
「そうですか、そのぅ。あなたが着ている服なんですが…」
 俺が着ているのはいつものツナギだ。
「これが何か?」
「その服はいったいなんですか?」
「なんですかって言われても…作業服ですよ。楽なんです。それに服とズボンが分かれてると汚れや破片がズボンに入ってきたりして面倒なんで」
「それって、どうやって着るんですか?」
「え?これは」
 俺は首元のジッパーを下ろしてインナーを見せた。
「すごい!これは!?ちょ、ちょっと待って下さい!皆連れてきますから」
 そう言うと、羊獣人の娘は駈け出し、家の中に入るとわらわらと羊の獣人達を連れてきた。
 皆一様に、ツナギを物珍しそうに見てくる。
 仕方がないので、脱いでハーフパンツとTシャツ姿になり、ツナギを見せてあげると、早速、型紙を作らねば、と急いで家に取って帰り、道具を持って戻ってきた。
 ジッパーに関して聞かれたが、機械で作っているのだと言うと、驚愕していた。
王都の人間かと聞かれたので、「まぁそんなところだ」と答えておいた。
実際、この世界の都会がどのくらい発展しているかわからないが、ジッパーくらいあるだろうと高をくくっていたが、後日大変なことになる。
それはまた、別の機会に。

羊の獣人達は皆一度ツナギを試着し、着心地を確かめて俺に返してくれた。
 とてもいいものを見たとお礼を言われたので、ベッドのマットをねだってみたところ、やはり今はゴートシップの毛が少なくなっている時期だという。
 もう少し寒くなれば毛も伸びるので、その頃に来いとのこと。
 無料で作ってくれるらしい。
 ラッキーだったが、寒くなるまでの間どうするか考えていたら、羊の獣人達が森のうさぎの魔物の毛皮がいい、と教えてくれた。
 うさぎの魔物はフォラビットという魔物で、ゴブリンよりも弱いという。
 それくらいなら森に入って獲ってもいいかと思ったが、毛皮を剥いで鞣す手間を考えると店で買うか、ギルドで依頼を出したほうが良さそうだ。
 羊の獣人たちにお礼を言って牧場を後にした。
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