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駆除人 作者:花黒子

~旅する駆除業者~

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23話


 港町には、翌々日に着いた。
 レッドドラゴンが復活したことを村に報告し、すぐに山を迂回する街道を進んだ。
 アイルが魔物の相手をしてくれたので、ほとんど歩いていただけだ。
 森で一泊し、翌日の昼に崖の向こうに水平線が見えてきた。

 緩やかな坂道を下り、左手に海を見ながら街道を行く。
 馬車や人の往来も激しくなってきた。
日が傾き始めた頃、ようやく港町に着いた。

 港町・マリナポートはクーベニアよりも大きく、人口も多い。
 港にはたくさんの船が停まっている。

 とりあえず冒険者ギルドの宿に泊まることにする。
 ギルドはどこも同じで、宿と食堂が隣接している。
 ワイバーンなどの魔物の素材を売り払い、金に替え、宿を取ろうとしたら、満員だと言われた。
 近々、闘技会があるらしく、冒険者が増えているそうだ。
 しかたがないので、外に出て宿を探すことにした。
「闘技会かぁ。ナオキは出ないのか?」
 アイルが聞いてきた。
「出るわけ無いだろ。俺は剣闘士じゃないんだから」
「でも、優勝できそうだけどな」
「興味ないよ。アイルが出てみれば?」
 宿らしき建物を探しながら、言った。
「上位入賞すれば船に乗れるらしいからな。ナオキも船で旅するんだろ?」
「うん、まぁ乗れればね」
 前を行くテルが立ち止まり、建物を見上げた。
「ナオキ様、ここなんかどうでしょう」
 レンガ造りの高級そうな宿屋の前だった。
 ワイバーンの革を高く買い取ってもらったから、今日はここでもいいかもしれない。
「部屋があるか聞いてきてくれ」
 財布袋を渡して、テルに頼んだ。
「わかりました」
 テルが宿屋の中に入っていった。
 テルは3人部屋を一部屋取って、戻ってきた。
 アイルは「こんな高い宿に泊まるのは初めてだ」と小声でぶつくさ言っていた。
 とにかく疲れたので、休めるところならどこでも良かったが、たまに贅沢も悪くないだろう。
 宿の主人に案内され、部屋に通された。
 中にはバスルームもあり、お金を払えばお湯もくれるという。
 お湯くらい魔法陣でどうにでもなるので、断っておいた。
 チップ代わりに銀貨1枚渡すと、驚いたようにこちらを見て、「何かあれば、なんなりとお申し付けください」と言って、出て行った。
「銀貨1枚は渡しすぎですよ」
 テルが俺に教えてくれた。
 あまり金銭感覚がないから、こういうこともテルに任せればよかった。
 早速、荷物を置き、バスルームの大きな風呂桶に魔法陣を描いて、お湯を溜める。
 石鹸と香料を用意して、先に女性陣に入ってもらう。

先にアイルが出てきた。
「ふぅースッキリした。ナオキも入れよ。テルは上手だぞ」
 テルに洗ってもらったらしい。
 奴隷が背中を流すのは普通のことらしい。
「おーい、テルー。俺は1人で入りたいから、自分の身体を洗ったら出てこいよ」
「…わかりました」
 湯上がりのテルが出てきて、入れ替わりに俺が入った。
 お湯もだいぶ濁っていたので、新しいお湯に替える。
「うぃ~・・・」
 湯船に浸かると、旅の疲れが出てきた。
 じっくりと身体をほぐし、全身を石鹸で洗い香料を素肌に塗った。
 柑橘系の香料で、とても甘い匂いがしてベタつかない。
 髪を風の魔法陣を使い、乾かして部屋に戻る。
 まったりとした空気が漂っていた。

 テルが紅茶を入れてくれて、テーブルで飲む。
 窓の外には、マリナポートの町並みが一望でき、その向こうに海も見える。
「あ、地図、買い忘れたな。明日ギルドで買おう。あと、魔物学者のところに連れてってくれ」
 俺がアイルに頼んだ。
「わかった。会わせたら、私は闘技会に行こうと思う。ワイバーンを倒してそこそこレベルが上ったと思うから、腕試ししたいんだ」
「そうか」
「上位入賞して船に乗れそうだったら、ナオキ達も乗れるよう頼んでみるよ」
「んー、まぁ、無理しなくてもいいぞ…」
 グー!
 テルの腹が鳴った。
 テルは顔を真赤にして、腹を押さえている。
「じゃ、飯食いに行こう。港町だから、美味しいものがあるだろう!」
 宿を出て、町に繰り出すことにした。

 マリナポートの町は夜になっても活気に満ちていた。
 どの料理屋も人で溢れていた。
 喧嘩もそこかしこで起こり、人が飛んでくることもある。
 アイルが喧嘩している冒険者たちを峰打ちして成敗して回ると、歓声が上がり、料理屋の店員にお礼を言われた。
その料理屋で魚料理が振る舞われ、ほろ酔い気分で宿に帰った。
「美味しかったなぁ」
「本当にただでよろしかったんですかね?」
 俺が感想を言い、テルが心配そうにアイルを見た。
「ああ、喧嘩を止めたお礼だ。受け取っておくのが礼儀だろ」
 アイルはそう言って、自分のベッドに寝転んだ。
 そのまま、ものの数秒でアイルは鼾をかきはじめた。
 あまりの早さに俺とテルは顔を見合わせて笑ってしまった。
「テル、先に寝てていいよ。俺はちょっと作業してから寝るから」
「いいんですか?」
「ああ、アイルにお守りを作ろうと思って、そんな時間はかからないから」
「では、お先に。おやすみなさい」
 テルはそう言って、自分のベッドで寝た。
 奴隷が主人と同じ部屋で、同じようなベッドで寝ることに抵抗していたテルも、俺に気を使わせないように、最近では自由にしてくれている。
 徐々に、奴隷意識が取れてくればいい、と思う。

 俺は、魔糸(魔石の粉を水で溶かしたものに漬け込んだ糸)でミサンガを作り始めた。
 強力な魔力を帯びたミサンガに、復活の魔法陣を組み込む。
 これで死ぬほどのダメージを受けると、一度だけ体力が全回復する。
 一応、テルの分と俺の分も作っておく。
 伸びをして窓の外を見ると、丸い月が天高く浮かんでいた。
潮騒の音を聞きながら、ベッドに潜り込み、目を瞑るとすっと寝てしまった。

起きた時には、アイルが部屋を出て行くところだった。
「おはよう。もう行くのか?」
 目をこすりながら、あくびをして声をかけた。
「ああ、闘技会の受付が早いんだ。もう行くよ」
「あ、ちょっと待って」
俺はベッドから降り、昨晩作ったミサンガをアイルの手首に結んだ。
「これで、死んでも大丈夫だ」
「勝手に殺すな」
 アイルが俺を睨んだ。
「お守りだよ」
「悪いな。魔物学者の家の場所はテルに教えてある。じゃ」
「ああ、いってらっしゃい」
 アイルは機嫌良さそうに部屋から出て行った。

「紅茶でよろしいですか?」
 テルがティーポットを片手に聞いてきた。
「ああ、頼む」
 テルと魔物学者の家の場所について聞き、テルが自信なさそうだったので、ギルドに寄ってから行くことにした。
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