挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
駆除人 作者:花黒子

~火の国の商人と立ち合う駆除業者~

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

227/249

227話


 朝飯を食べて、寝ている社員たちを起こし、南へと向かう。
 町を出てからは、空飛ぶ箒で飛んだので、海岸近くの村まで、それほど時間はかからなかった。雪の影響も魔力の壁があるので、ほぼない。
 寂れた漁村には小さな傭兵団がモリで魚の魔物を捕り、山で山菜を採りながら暮らしていた。傭兵としての仕事はここ数年していないそうだが、自覚はあり、食料調達の合間に鍛錬を欠かしたことはないという。真面目で、たくましい体をしており、うちの女性陣たちに「ああいう人と結婚したらいいんじゃないか」と勧めてみたが、まるで反応はなかった。
 壊れた小さな漁船を借りて修理し、海へと出る。もちろん、水流の魔法陣は描き込み済み。雪が止み、波もそれほど大きくはなかった。
 一応、魔族の言葉で「今から音を出す」と大声を張り上げ、警告。片言だが、魔族ならわかってくれるだろう。
 あとは、移動しながら音爆弾を投げ続ける。
 水しぶきが上がり、海に爆音が鳴り響いた。海域には、クラゲの魔物からクジラのように大きな魚の魔物などが生息していたようで、どんどん海面に浮かんでくる。全て、アイルたちが切り分けて、アイテム袋に詰めていった。
 バカでかいイカの魔物が船を襲おうとした。クラーケンとかいうやつだったか。アイルが魔力の壁で覆い、細切れにしていた。
 その後も、他に被害が出なそうなので、混乱の鈴を使ってみたり、ゲンワクスズランなどを使って海中にいる魔物たちを混乱させ、惑わせ、海面に上がってきたところを仕留めていった。
「これだけでも、結構冬の食料としては助かるんじゃないですかね?」
 セスが在庫のリストを作りながら聞いてきた。
「アイテム袋に入っているうちはいいけど、傭兵たちが食べるなら、干物にするのが一番じゃないか。リタがボリさんから教わってないかな?」
 通信袋で聞いてみると、ちゃんと教わっているという。セイレーンたちもボリさんに干物の作り方を教わったらしいので、輸送で来た時にお願いしてみよう。
 漁村の傭兵団も作っていたので、港に入る前に船いっぱいに獲ったばかりの魚の魔物を出しておいて「干物にしてくれたら、半分あげる」と交渉。漁村の傭兵団は即決で、請け負ってくれた。
「よく獲れたなぁ」
 俺はアイテム袋の中を確認しながら言った。
 ただ、この辺の海域の生態系については完全に無視しているので、何かが突然大繁殖する可能性はある。
「あ、繁殖したら、また来ればいいのか」
 まだまだ昼にもなっていないので、さらに沖の海域まで行った。襲ってきたサメの魔物たちをサクッとアイルが殺し、船尾に紐で繋いで血を海に垂れ流していく。あとは寄ってきた魔物を音爆弾で気絶させ、細切れにしてアイテム袋に入れていくだけ。魚の魔物たちが警戒し始めると、また場所を変え、同じことをしていった。ちなみにセスは魔力操作で網を作って、ごっそり魔物を捕まえていた。セスの魔力の壁は船だし、魔力操作で網は作れるし、もう何もなくても漁師をやっていける。
「セスはそっちで稼いだほうが儲かるんじゃないか?」
「あー……でも、社長見てると、独立する気にはならないですよ。1人ではやってられないと思います。それに社長の周りにいると変なことばっかり起こるから退屈しないですけど、普通の漁師をやっても続かないんじゃないですかね?」
「そういうもんか。じゃあ、もうしばらく付き合ってくれい!」
 独立できるのはセスぐらいだろうな。女性陣は……。
「あ! これ珍しい魔物だよ。深海のやつかな!」
「サハギン、全然来ないじゃん! もっと強い魔物はいないのか!」
「ウヒョヒョヒョ! 内臓グチャ~」
 全員、ヤバい。
 メルモに至っては、魚の魔物の内臓を取り出して海水で洗い、どれを俺に試食させるのか、服の素材に使えるのか選別している始末。俺の食材と服の素材が同じってどういうことだ?
「お前ら、もうちょっとさ……」
「「「ん?」」」
 同時に3人から睨まれた。
「まぁ、楽しいならいいけど……」
「楽しいに決まってるじゃん! 引きこもってたらこんなにフィールドワークできなかったし」
「なんでここにいるのかわからない時があるから面白いよ。冒険者ギルドで教官をやってたころは自分を見失うなんてなかったけど。だから地図描きたくなるのかなぁ」
「これだけいろんな魔物の血を見られる仕事はないですよね。もう辞められないですよ」
 それぞれ楽しいならなによりだ。
「ま、空いてる時間に婚活はしておけよ」
「「「時間があれば!」」」
 どうやら3人の結婚式で祝辞を読むのは先のことになりそうだ。人のことは言えないけど。

 夕方、再び、漁村に帰ってくると、通信袋でボウから連絡が来た。
『よう、ちょっと今いいか? フハ』
「どうした?」
 昨日話したばかりだ。
『北の海の方で、なんかしたか? フハ』
「航路に使う海域で襲ってきそうな魔物を駆除してたんだ」
『フハ、それでか。サハギンって魔族が一族で助けを求めてきたから、なんかあったかと思って』
「あ~そりゃあ悪いことしたね。特にこちらを襲ってこなければ、駆除しないようにするよ」
『フハ、大丈夫。サハギン族も、もう魔族だから。船で輸送する時に手伝ってくれることになった』
「そうか」
『フハ、とんでもない化物が現れたっていうから心配しただけだ。ナオキたちなら問題ない。じゃ、グレートプレーンズからチョクロが届いたら、また連絡するー』
「はい~」
 通信袋を切った。
 ついでに、ラウタロさんとサッサさんにも連絡をとり、傭兵の国が同盟を破棄するタイミングと、傭兵の国の王が火の国を包囲する連合を作ろうとしていることも伝えた。
『ほぅ、なるほど』
『どこかで極秘に会議を開きたいな』
「今、魔族領なら未開の森って言われているので、いいかもしれません」
『確かに、魔族領なら都合がいいな』
『わかった。スケジュールの調整をしておくよ』
 極秘会議で、仲介役を立てて来れれば、俺も自分の仕事に集中できるんだけどな。ボウに丸投げしよう。連合をまとめるなんて清掃・駆除業者の仕事じゃないや。

「じゃ、また来ます」
 俺は、魚の魔物の開きを干している漁村の傭兵に言った。
「おう、来週、また来てくれ。それまでには干物を作っておくから。あんまりたくさん獲ってこられると間に合わない。ちょっと間を空けてくれ」
 懇願されてしまった。
「わかりました。じゃ一週間後に来ます」
 俺たちはそのまま地震のあった町まで戻り、道場にまっすぐ帰る。
 ドヴァンが必死に道場を掃除しているのを見て、ようやくドヴァンを連れていくの忘れた事に気づいた。
「すまん」
「いえ、明日、親父の絞首刑の日ですから、仕事にならなかったと思います」
 死刑にならないとわかってはいるが、落ち着かないのだろう。

 翌日、ドヴァンの心配とは裏腹にあっさりスナイダーさんは絞首台から降りた。
「俺に時間をくれ! このままでは皆、国を追われることになる! 必ず、俺がこの国を救ってみせる! わが王よ、俺の命は銀貨2枚。それで国が救えるなら安いもんだろ!」
 スナイダーさんの叫びは王にも民衆にも届き、一時釈放。国の復興に従事することを誓わされていた。これで、傭兵の国側の極秘会議出席者が決まった。
 あとは、魔法国・エディバラの偉い人のスケジュールで会議の日時も決まる。サッサさんからの返事待ちってところかな。
ドヴァンはしばらく、スナイダーさんと行動をともにすることになった。

 あまりにもあっさりスナイダーさんが生き残ったので、午後から俺たちはウーシュー師範とその弟子たちを連れ、スノウフィールドへと向かう。走っていこうとしたら、ウーシュー師範たちはかなり時間がかかることがわかり、セスが魔力の壁で覆い、空を飛んで行くことに。
「まさか、死ぬ前に空を飛べる日が来るとは思わなかったぞ」
 と、ウーシュー師範は喜んでいたようだが、連れてきた弟子たち5人は青い顔をして身じろぎもしなかった。5人ともなぜ浮いているのか、どうやって進んでいるのかわからず、さらに魔力を強く感じすぎてしまい、頭がクラクラするらしい。
 とりあえず、セスには急いでもらった。まだ日が上っているので、町も見つけやすくスノウフィールドまでそんなに時間はかからないはずだ。相変わらず、国境の関所は通り過ぎて、不法滞在、不法入国である。
 ただ、空に飛行船が見えたので、地面に降りて進むことに。通信シールの件もあり、これで俺たちが空飛ぶ箒で登場したら、空飛ぶ箒の利権も寄越せなんて言われかねない。
 スノウフィールド近くの森で降り立つと、ウーシュー師範が騒ぎ始めた。
「なんじゃ、ここは?」
 弟子たちも周囲の森を見回して、地面を見ている。
「なにか魔力を感じますか?」
「ああ、地面が光っておる。地中に魔力が相当溜まっておるな。こちらが濃く、あちらは薄い」
 ウーシュー師範は目の前に広がるスノウフィールド側の魔力が濃く、傭兵の国側が薄いと言った。
「魔力探知スキルがあれば一目瞭然じゃ。子どもでもわかる」
「一番濃い場所に行ってみますか?」
「うむ」
 俺たちはスノウフィールドの東にある採石場へと走った。森の中を走ったが、そういう訓練には慣れているのか弟子たちもちゃんとついてくる。ただ単純に走るより、訓練しながらのほうが集中力が増すのかな。
「地面の魔力を吸収しながら走っとるから、あまり疲れんだけじゃ。まぁ、化け物じみた魔力のお主たちにはわからんじゃろうがな」
 ウーシュー師範が俺の心を読んだように、説明してくれた。

「……ここか!」
 俺たちコムロカンパニーの連中は森を抜け、草原に出て草原にポッカリと穴を見下ろした。だが、ウーシュー師範ら、『魔体術』の門徒たちは穴から噴き出る魔力を見上げている。
「そんなに噴き出てるんですか?」
「お主らこれも感じぬのか? こんなところで1週間も作業をしていると、魔力過多になって、どんなに寝ても魔力をうまく回復できない体になるぞ。ウーピー、説明してやれ」
 ウーシュー師範から呼ばれたのは、この前、スナイダーさんが捕まったことを知らせてくれた坊主頭の女性が一歩前に出た。
「私も魔力過多になったことがあります。魔力を使わないと気持ち悪いし、使ったら魔力切れで倒れます。なんど寝ても回復しませんから、非常につらい状況が続きました。食事療法くらいしか治す方法は見つかっていないと思います」
 ウーピーはそう言って腕の内側の血管を見せてくれた。血管が走っているところが黒ずんでいる。血中の魔力が増えすぎることでそうなるらしい。
「これでも私は軽傷な方です。早めにウーシュー師範に助けていただきましたから。ずっと魔力過多が続くと、これが全身に広がり亡くなる人もいると聞いたことがあります」
 ウーピーにお礼を言って、回復薬の塗り薬を試してもらうことに。
 穴に降りていくと、この前助けた採掘業者が迎えてくれた。
「この前の地震の時は命を助けていただいて、本当にありがとうございます。すぐに発ってしまってお礼も言えませんでしたから」
「ああ、困ったときは助け合いです。それよりもちょっと魔素溜まりの調査をしたいのですが、ネイサンさんに聞いてますか?」
「伺ってます。どうぞ、なるべく作業員を邪魔しなければ自由に入っていただいて結構です。ただ、わかっているとは思いますが通路の崩落には注意を。あとはなにか聞こえたら近づかないように」
「なにかって?」
「シンメモリーじゃろう。これだけ魔力が多く、崩落事故があれば生き埋めになった者の思念も多いじゃろうからな」
 ウーシュー師範がそういうと、採掘業者も頷いた。
「あのヒートボックスは魔石を変えたことがあるか?」
「いえ、一度も」
 ウーシュー師範の質問に、採掘業者が答えた。
「コムロ社長、ここはそういう場所じゃ。お主たちもそれだけ膨大な魔力を持っているなら、放出するばかりでなく、抑えることも覚えたほうがいいぞ。魔力をより感じられる」
 俺たちはできるだけ魔力を抑えるイメージをしながら、横穴に入った。この前崩落した横穴は潰れているので立入禁止になり、他の横穴から入る。どこを見ても魔力が多すぎるらしい。俺たちはまだ感じられないが、『魔体術』の門徒たちは口にマスクをするほどだ。
 俺たちも魔力の壁を展開し、進む。
「親玉が現れたな」
 最奥の部屋までいくと、壁に向かってウーシュー師範がつぶやいた。
 確かに、探知スキルで見ると、横穴の最奥の部屋からさらに掘っていくと大きな空間に出ることがわかる。
「掘るか?」
 アイルが後ろから声をかけてきた。
「いや、やめておけ。なにが原因で魔力が爆発するかわからん。この奥を調査するなら準備が必要だな」
「じゃあ、一旦、町に行って、宿で計画を練りますか」
「うむ。いや、さすが金貨100枚の仕事じゃ。痺れるわい」
 ウーシュー師範の金貨100枚という言葉に、ベルサも「仕方ない」と頷いている。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ