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駆除人 作者:花黒子

~旅する駆除業者~

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21話

 洞窟は階層に分かれたダンジョンになっているようで、下の階層に行くほど魔物の数は多いように見える。
「どうやって、こんな洞窟掘ったんだろ?」
「そういう魔物がいるんだ」
 俺の質問にアイルが答えてくれる。
 デカいアリの魔物でシマントという魔物がいて、頑丈な顎で地面を掘り進み、ダンジョンを作ってしまうのだとか。
 アリ(シマント)対策としてカルシウムを入り口に撒いておく。
 出てこられても面倒だ。

 洞窟に入り、テルがランプに明りを点ける。
 ランプは通常よりも光量を多くしてあるため、遠くまで見える。
 俺は探知スキルで見ているのであまり関係はないが、2人にとって暗闇は不安だろう。

2人に耳栓代わりの湿った綿を渡し、混乱の鈴を鳴らしまくる。
 巣窟内で鈴の音が鳴り響き、反響していく。
そこかしこで魔物同士が戦い始め、飛び立ったワイバーンやシュブスリが壁や床にぶつかって落ちてくる。
 探知スキルで見ると、鈴の音は下の階層まで聞こえているようだ。
 テルには地面に描いた防御魔法陣の中にいてもらい、アイルと共に階下へと向かう。
 アイルにはこちらに向かってくる魔物の相手をしてもらった。
「ふらふらでまるで力の入ってない攻撃しかこないな」
 アイルはワイバーンの首を斬り飛ばして言った。

 最短で一番下の階層に向かった。
 あえて魔物を撃ち漏らして、生態系を壊さないようにする。
 階下に行けば行くほど、火山が近いのか、暑くなってきた。

探知スキルを見ると、最下層にいる1匹だけ鈴の音を聞いても、動かなかった。
 レッドドラゴンがいるとしたら、その動かない1匹だろう。
 ただ、レッドドラゴンはすでに状態異常になっている。

 行ってみると、案の定、赤い鱗のドラゴンが眠っていた。
 魔法陣で結界を張り、レッドドラゴンを動けないようにしてから、気付けの粉を取り出した。
 鼻息だけでも、子どもが吹き飛ばされるほどあるので、吸い込むタイミングで粉を鼻に近づける。
 勢い良く吸い込んだレッドドラゴンは、大人の胴体ほどもある目を見開き、咆哮しようと口を大きく開けた。
 ただ、結界によって、音が漏れることはない。
 身じろぎも出来ない状況をレッドドラゴンが自覚するのを待つ。

 アイルには、すでにレッドドラゴンを討伐する気が無いことを伝えておいた。
 かなり驚いていたが、しぶしぶ納得してくれた。
 寝込みを襲えば、なんなく倒せただろう。
 ただ、この先、周辺の生態系のピラミッドが崩れてしまう可能性がある。
 そこで、俺はこの寝坊助のレッドドラゴンを起こし、説明することにした。
 竜種は長い間、生きているというし、人とコミュニケーションが取れることに賭けてみたかったのだ。

 暫く、レッドドラゴンの前に立って黙っていると、レッドドラゴンがこちらに向かって口を動かしていた。
 結界の一部を消すと、何やら唸り声で言語のようなものを話している。
 スキルツリーを見ると言語能力に竜人語というスキルが派生していた。
 スキルポイントを割り振ると、レッドドラゴンが何を話しているのかわかった。
「貴様、何故、我を起こした?」
「ワイバーンが増殖しているのに、レッドドラゴンが起きてこないから、起こした。今までは30年に一度、起きていたと聞いたんだが」
 腕を組んで、レッドドラゴンに話しかける。
 アイルが訝しげに俺の方を見る。
 スキルが派生するには竜種に話しかけられるのが条件なのかもしれない。
 俺も唸り声を上げている自覚はあるのだが、そういう言語なのだからしょうがない。
「そうだ、我は30年に一度、ワイバーンを捕食できるこの場所を住処に選んだのだ。もう、30年経ったのか?」
「ああ、経った」
「それにしては熱くないぞ。山の溶岩の動きが変わったか?」
「それは俺にはわからないが、あとで調べてみよう。その前に、ワイバーンの肉はいらないか?」
 俺は、アイテム袋からワイバーンの肉を口の近くの地面に放り投げた。
「うむ、いい匂いだ」
 レッドドラゴンはワイバーンの肉の匂いを嗅ぎ、器用に食べ始めた。
「ワイバーンを少し狩りに行ってくれるか?」
 食べ終わったところを見計らって、俺は声をかけた。
「無論だ。この魔法陣を消してくれればな」
 俺は、自分とアイルに防御魔法陣を描き、レッドドラゴンの結界を消した。
「心配するな。お前たちよりもっと良い肉が飛んでいるのだ。襲うことはない」
 レッドドラゴンはそう言うと、羽を広げ、洞窟の中を飛んでいった。
 遠くからワイバーンの断末魔の咆哮が聞こえてくる。
「うまく行ったのか?」
 アイルは飛んでいったレッドドラゴンを見ながら恐る恐る聞いてきた。
「たぶんな。とりあえず30年に一度鳴る目覚まし時計でも作っておくか」
 俺は地べたに座り込み、アイテム袋の中を探った。
 時計なんて複雑なものはないので、砂時計型にした。
 中身は魔石の粉でいいだろう。
 地面に魔石の粉で爆音の魔法陣を不完全に描き、描ききれなかった場所に砂時計を設置する。
 一応、1年の長さと1日の長さをアイルに聞いておく。
 この世界では1年は360日で1日は25時間だと、初めて知った。
 大丈夫か、俺は。
 ちなみにうるう年はない。
 計算して27万時間だということがわかる。
 魔石の粉が入ったビンに穴を空け、1時間でひと粒だけ出るように調整しても、誤差が出てしまうことに気づく。
 風で巻き上がってしまうことも考えられる。
 そもそも30年の砂時計なら、もっと大きいほうがいいだろう。
 素材が足りない。
「決めた!諦めよう!」
「諦めるのか?」
 アイルは黙って作業を見ていたので、俺の言葉に驚いていた。
「うん、こんなことをするより、30年後にここに会いに来ればいい。というか、レッドドラゴンが起きてればいいんだし、交渉してみる」
「そんなこと出来るのか?」
「うん、それが一番いい気がする」
 そんな事情を知ってか知らずか、ちょうどレッドドラゴンが帰ってきた。
 満足したのか口の周りが血だらけで、飛んできた。
 俺の前に降り立つレッドドラゴン。
「我の寝床に何か細工をしていたのか?」
地面に描いた描きかけの魔法陣を見て、聞いてきた。
「いや、目覚まし時計を作ろうと思ったんだけど、止めたんだ。30年後にまた起こしに来たほうが楽なことに気づいたんだ」
「なるほど、それは悪かったな」
「レッドドラゴン。お前も眠ってばかりいないで、起きて旅に出るとかしなくていいのか?」
「ん~確かに、暇つぶしに旅に出るのもいいかもしれない。でもなぁ。外にでると何かと騒がれたりしてしまうだろ。めんどくさくてな」
「ニートかよ!竜種は怖がられてなんぼの魔物だろ!」
 思わずツッコんでしまった。
「そ…それも、そうだな」
「いや、好きにすればいいんだけど。ワイバーンばかり食べてて飽きないのか?ここには30年に1回来ればいいじゃないか?」
「飽きるといえば、飽きるなぁ。30年に1回でもいいんだけど。ん~でもなぁ。竜種は縄張り意識が強くて、他のドラゴンに迷惑かけるんじゃないかと思ってなぁ」
 だんだん、イライラしてきた。
 魔物のくせにどんだけ空気読むんだ。
「だったら、土産にワイバーンの肉でも持って行って、仲良くやったらいいじゃないか?」
「あ、土産なぁ。でも、出会ったドラゴンがワイバーンの肉嫌いだったらどうする?」
「知らんわ!その辺で魚の魔物でも狩ってきて土産にしたらいいだろ!」
「魚の魔物って、我はレッドドラゴンだぞ。水は苦手だ」
「だったら、竜人語が話せる冒険者と取引して、獲ってきてもらえばいいだろ?」
「冒険者が話を聞いてくれると思うか?」
「俺だって冒険者だぞ!」
「そ…そうかぁ。ちょ、ちょっと待ってくれ」
 そう言うとレッドドラゴンは奥の洞窟の壁を壊し始めた。
 土埃が舞い、天井から、砂が落ちてくる。
巨大な魔石を掘り出したレッドドラゴンは、魔石を咥え、俺の方に近づいてきた。
 レッドドラゴンは魔石を上から落とし、俺は魔石を受け取った。
「これを持っていてくれ。何か頼み事をする時、これを目印に会いに行くから」
「な!なんて勝手な!ちょっと待て!」
 俺は急いでアイテム袋から、適当な袋を取り出し魔糸と針で魔法陣を縫っていく。
 魔法陣が出来上がると、丈夫な紐をレッドドラゴンの首にかけ、袋をぶら下げる。
「これは、通話袋といって、遠くでも俺の声が聞こえる。少し魔力を通せば、こちらにも連絡することができるだろう」
「便利なものを作れるのだな」
「これがあれば、こんな大きな魔石はいらないだろう?」
そう言って、魔石をレッドドラゴンに返そうとしたが
「いや、それは持っておけ。他の竜種にもお前のことが伝わるだろう」
と、断られた。
「面倒なことにならないか?」
「大丈夫だ。竜種に認められた証を持つ者に危害は加えないだろう」
「いや、そういうことじゃないんだが…」
 その様子を見ていたアイルは「もらえるものはもらっとけ」と小声で言ってきた。
 竜人語はわからなくとも、状況は理解できているようだ。
 しぶしぶ受け取って、アイテム袋に入れた。
 竜種に何か依頼されたら、ぼったくってやろう、と決意した。
「そろそろ行くよ。食べ過ぎない程度にワイバーンを狩ってくれ」
「わかった。お前には世話になった。洞窟の入口まで送って行ってやろう」
 そう言ってレッドドラゴンは、俺とアイルを背中に乗せ飛び立った。

 何度かレッドドラゴンがワイバーンをつまみ食いしながら、どんどん洞窟を上がっていく。
 洞窟の入口で夕食の仕込みをしていたテルのところで下ろしてもらう。
 レッドドラゴンを見たテルは怯えていたが、俺が背中から手を振ると安堵したように力が抜けていた。
 レッドドラゴンは別れる前に俺に土産を入れる用の袋を作らせて、洞窟の奥へ帰っていった。

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