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駆除人 作者:花黒子

~火の国の商人と立ち合う駆除業者~

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195話


 翌朝、スクランブルエッグとサラダ、焼きたてのパンにミルクという朝食らしい朝食を食べた。朝食後は、報酬を選ぶために宝物庫へ案内された。
 サッサさんは朝食の時も俺が宝物庫で魔法書を選んでいる時も、「チオーネとアプの様子を見に行ってくれませんか?」と頼んできた。
「戦地には行きませんよ。俺たちは清掃・駆除業者ですから、頼むなら傭兵に言ったらどうです?」
「今、傭兵の国は火の国と同盟関係にあるので無理なんですよ。いや、別に戦地に行って戦ってほしいと言っているわけではなくて、ナオキくんたちならどうやって攻撃するのか、もしくはどうやって守るかを考えてほしいだけなんです」
 そんなこと知ったことではない。清掃・駆除業者だからといって大量虐殺者ではないし、俺は社員たちを危険な場所に連れて行くわけにもいかない。ましてや、人の命をやり取りする場所に行くなんて覚悟はしたくない。
「あくまでも俺たちは業者です。餅は餅屋、戦争は兵士に頼んでください。そのための兵士でしょう。昨日、ラウタロさんも南部から連れてきましたし、これ以上やることはありません。あ、この本にしよう。いいですか?」
 適当な魔法書を選んで、サッサさんに確認を取る。
「空を飛ぶ方法に関する魔法書ですか。ナオキくんは空飛ぶ箒を持っていますよね?」
「他にどんな空飛ぶ魔道具があるのか知りたいんです」
「だったら、戦地に行くといい。火の勇者が持っているはずですから」
「だから戦地には行きませんよ。戦争が終わったら、火の勇者に見せてもらいに行きます。できるだけ早めに終わらせてくださいね」
 サッサさんは溜息を吐いて、魔法書を渡してきた。
 うちの社員たちはすでに選び終わっているし、立て替えていたお金もベルサがちゃんと受け取っていた。
「今、前線にいるチオーネはナオキくんに会いたがっていたよ。ずっと君たちが生きていると信じてた」
 国王になったサッサさんは意外にしつこい。そういや、チオーネとはジャングルデートの約束をしていたな。
「彼女が戦地で死なないことを祈っています。戦争が終わったら会いに来ます」
 宝物庫を出ると、城でやることもない。そのままサッサさんは城の門まで見送りに来てくれた。
「じゃ、俺たち行きますから」
「行ってしまいますか……」
 サッサさんはやけに寂しそうだ。王の肩には兵の命も国民の命も乗っているのでプレッシャーがあるのだろう。
「自分の兵と国民を、もう少し信じてみてはどうです?」
「確かにそうかもしれないです。城にいると無意味な権謀術数があって、味方を信じるというのを忘れていた気がします……。信頼できるナオキくんたちが来てくれてよかった」
 王なので、なかなか城から抜け出せないのかもしれない。
 俺は使用人が持っていたモップを貸してもらい、魔法陣を描いて空飛ぶモップに変えた。
「空飛べるようにしておきました。少し自由に動いて自分の味方を増やしてください」
「ありがとう。そうします。兵舎に行ってラウタロさんと話してきますよ」
「では、また」
「ええ、また。仕事をするなら、北部の東側がいいかもしれません。アルマーリオが増えているらしいですから」
「ありがとうございます!」
 サッサさんと手を振って別れた。


「さて、あまり王都に長居するといつの間にか戦地に送られそうだから、とりあえず東に向かおう」
「「「「了解」」」」
 俺たちは王都を離れ、東へと向かった。

 王都の周りにはチョクロ畑が多く、現在、収穫時期なので農家の皆さんは忙しそうだ。
「収穫を手伝ったほうが儲かりそうだ。フハ」
「私たちは清掃・駆除業者ですよ」
 ボウとリタの会話が聞こえてくる。
 お金も手に入ったので、そろそろ俺たちも考えなくてはいけない時期に差し掛かっている。
 東へ向かう街道を俺たちはゆっくりと歩いて進んだ。まるでコムロカンパニーらしくないが、7人でいる時間を大事にしたかった。
 その日は王都から東へ10キロメートルほど行った町の宿に泊まり、食堂でボウとリタの好物だと思ってるバレイモの蒸した物と、肉野菜炒めを大量に頼んだ。
「フハ! お金が入ったから豪勢だな」
「もう南半球で一生分は食べたバレイモなんですけど、北半球の物はまた味が違うんですよねぇ」
 ボウとリタが喜んでいる。
 俺はベルサに言って、ボウとリタの前にお金が入った袋を置いた。
「2年間お疲れ様。払ってなかった給料です。遅れてすまん」
 ボウとリタは驚いたように袋を見た。
「フハ、貰っていいのか?」
「当たり前だ。2人の労働の対価なんだから、受け取ってくれ」
「でも、皆さんのは?」
 リタが聞いた。
「皆には後できっちり払うよ」
「フハ、でもオレたちも……コムロカンパニーの一員だろ? 皆と同じ時でいいよ」
 ボウは寂しそうに言った。皆と違うことが辛いらしい。
「2人は俺たちに巻き込まれて、生きていくために俺たちに協力するしかなかったろ? だから、先に払うんだ」
「それって……」
 リタが俺を見て、言葉を失った。
「2人はコムロカンパニーの臨時職員として本当によくやってくれた。未開の南半球で、わけのわからぬ業務に耐え、俺の無茶振りにも応えてくれた。2年間、本当にお疲れ様でした!」
 しっかり俺は頭を下げお礼を言って続けた。
「臨時職員としては今日でお終いです。この仕事を続けたいなら正社員として雇うつもりですが、よく考えてください。基本的には清掃・駆除が業務内容ですが、勇者駆除という依頼も受けてしまっています。危険が伴います。家族に会えなくなります。故郷にあまり帰れなくなる可能性は高いです。2人は結婚するから、俺たちの旅に付き合いながら、子どもを産んだり育てたりするのは相当大変なことだと思います。返事は、覚悟をしてからで構いません」
 コムロカンパニーの社長として、2人の幸せを考えて話した。社員に子どもができることは嬉しいことだが、子どもまで危険にさらすわけにはいかない。
ただ結婚するなら辞めてくれと言っているようなものだ。完全にブラック企業。本来、神々の依頼がなければ、どこかに定住して派遣していくスタイルでもいいのだが、俺が異世界人だから、2人に非情な宣告をしなくてはならない。
「フハ、参ったな……」
「……皆さんと別れたくないですよぅ」
 ボウとリタは今にも泣きそうな表情で言った。
「ど、どうすれば……」
「別に深く考える必要はないんじゃない?」
 アイルがリタに言った。
「妊娠したら休業して、グレートプレーンズに戻って出産と子育てに専念。で、子どもが独り立ちしたら、また戻ってくればいい」
 さすがアイルは仕事を割り切っている。
「たぶん私たちが結婚した場合もそんな感じですよ」
 メルモが言った。
「うちの会社は結婚も子作りも推奨してるんでしょ?」
 ベルサが俺に聞いてきた。
「もちろん、2人が幸せになることが一番だよ」
「だったら決まりじゃない? どうせ通信袋で連絡できるんだし、空飛ぶ箒だってあるんだからさ」
 ベルサの言うとおりだ。いや、そもそも俺が仕事を一番に考えすぎていたのかもしれない。
「フハ、でも辞めるなら、この大陸にいる時がいいってことだろ? 空飛ぶ箒でも大陸を渡るのはキツいと思うし。ナオキの考えもわかる。タイミングは間違ってないよ。オレたちはこの先のことを考えてすらいなかったから」
 相変わらず、ボウは優しい男だ。
「どうしますか?」
 リタがボウに迫りながら聞いた。
「あ、今、丸投げしたなぁ~。フハ」
「そうです。結婚するなら家長はボウさんですから、私はそれについていくだけです。それともズルい嫁はお嫌いですか?」
「ナオキ、どうやっても男は女の尻に敷かれる運命から逃れられないのかなぁ? フハハ」
 心底困ったようにボウは笑った。
「ゆっくり考えていいよ。戦争が終わったら火の勇者って奴を見に行くくらいしか、今のところ予定は決まってないから」
「フハ、そうか。だったら……ちょっと魔王領の様子を見に行ってもいいかな? ナオキたちも来てくれると安心なんだけど」
「ボウの故郷か? もちろん俺たちもついてくよ」
「そっか、よかった。オレが故郷を出た時は、自称・魔王が何人も現れちゃって、どうなってるか心配してたんだ。これだけあれば食料足りるかな? フハ」
 ボウは目の前の袋を持ち上げて聞いてきた。かなりの大金が入ってはいるが、優しいボウのことだから仲間の魔族に与える分も考えて言っているのだろう。
「足りなければ、農家でアルマーリオの駆除して、報酬に食料を貰おうか?」
「そうする! フハ、南半球で食料がなかったのが一番辛かったから」
「いやぁ、もっと辛いこともありましたよ……」
 セスが南半球の愚痴を言い始めたので、宴会が始まった。
「だいたい仕事なのか修業なのかわからない時がありますしね!」
「そうですよ! それに清掃・駆除とは名ばかりで、いつもやっている業務内容は恐ろしく多岐にわたっていますからね! 剪定って社長が言い始めた時、心底、『この人頭がどうかしてる』って思いましたもん……」
 セスとメルモがワインを飲み始めてボルテージも上がっていく。
「だって仕方ないじゃないかぁ。邪神にアイディアを出したときはそんなこと思ってなかったんだからぁ!」
 俺の言い訳と、社員たちの愚痴が宿中に響く。
宿の客たちは「あいつらは夢物語でも話してるんだろう」と呆れている。
宿の主人には「あんたら新しい吟遊詩人かい? 今は大変な時期だろう」と言われた。
そういや、吟遊詩人たちはどうしたんだろう。そんな疑問を抱きながら、夜が更けていった。


 翌日、町の冒険者ギルドでアルマーリオ駆除の依頼を受けて、東にあるという農家に向かった。なぜか町の商人ギルドは閉まっていて、いくつかやっていない店もあったが、行商人は多かった。
「王都でも商人ギルドも臨時休業って紙が貼ってあって閉まっていましたよ」
 メルモが言った。
「なんかあったのかな?」
「魔石の横流しとか?」
「戦争で貿易とか止まってる国もあるのかもな。早く終わるといいんだけど」
 アイルとベルサ、俺は他人事のように言った。こういうとき冒険者のパーティとしても登録しておいてよかったと思う。
「でも、何を求めて戦争をしてるんでしょうね? 私はグレートプレーンズが故郷なので気になりますよ。やっぱり土地ですか?」
 リタが言った。
「侵略戦争以外ってあるの?」
「ん~いろいろあるんだろうなぁ。侵略戦争してたら、他の国から経済制裁受けて、経済が破綻しそうだから、その国を攻撃することもあるだろうしね」
 歴史の授業で習ったようなことを俺は思い出した。たぶん、商人ギルドが営業していないのも戦争絡みだろう。面倒なことだらけだ。

「ここかな?」
 依頼を出した農家に着いた。
探知スキルで周囲の畑を見ると、アルマーリオたちがそこら中にいた。ただ妙に動きがおかしい。等間隔に離れていて、動作のタイミングがほぼ同時なのだ。まるで使役されている魔物のよう。
まさか自分の畑を使役した魔物に襲わせることが趣味の農家なんていないよな。
「ちょっと話を聞いてみないとわからないなぁ」
 俺たちは農家の家に向かった。

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