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駆除人 作者:花黒子

~水の勇者と興ずる駆除業者~

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144話



 翌日、朝飯の後、アイルと一緒にジャングルに行く用意をしていると、セスが洞窟の民たちを連れて避難所にやってきた。
 早朝に出発して、かなり飛ばしたらしい。
 今回来た洞窟の民の中には水魔法を得意としている人たちが多いのだとか。
 他にも魔物のテイムスキルを持った人や農業スキルを持った人などが多く、なにかしらの職人っぽい人たちもいた。その人達を連れて、ベン爺さんとラウタロが、住居や施設を案内して回ってくれた。
 洞窟でずっと待っていたためか、やる気がみなぎっている人たちが多い。一方で、少数ながら完全にやる気のない人たちもいて、モチベーションは様々だ。
朝だからかな。
「やる気があろうとなかろうと、仕事さえしてくれれば給料は払いますので、よろしくお願いします」
 社長として一言挨拶をして、樽壺を背負って出発。
 あとはセスとメルモに丸投げ。

 南の洞窟まで一気に走る。
 残っている洞窟の民たちに軽く挨拶して、崖を登りジャングルへ。
 今日は時間があるので、昨日よりもちょっとジャングルの奥に足を伸ばした。
 ちょっと小さいが養魚池と同じくらいの沼があったので、そこで魚の魔物を捕獲することにした。
「今日はできるだけ卵を持って帰ろう」
「了解」
 樽壺を置いて、服を脱ぎながら、アイルと軽く打ち合わせをした。

ザブンッ。

パン一で沼に入り、身体を動かして温めつつ、卵を探す。
探知スキルで水中の水草を探ってみたが、小さな魚の魔物が多すぎて卵なのかなんなのかわからなかった。
前の世界で、金魚が水槽の中に入れた『たわし』に産卵することがあるというのを思い出し、沼の底まで潜ってみた。
底にあった苔生した石を拾い、水面の上に持って行って確認したら、つぶつぶした卵らしきものが付着していた。とりあえず、樽壺の中に入れておいた。
乾燥してしまうことを考えて樽壺には、水を入れておく。
アイルは水中の水草を引っこ抜いて、絡まってついてきてしまった小さな魚の魔物ごと樽壺に入れていた。
「あ、そっちの方がいいかもね」
「え?」
「いや、ついてきちゃった小さな魚の魔物は幼魚の可能性もあると思って。雨期まであと2ヶ月くらいだろ? 卵から育ててたら、間に合わないかもしれないから、卵と一緒に小さな魚の魔物も捕まえていこう」
「了解……」
 アイルが急に空を見上げて、考えるように顎を触った。
「どうした?」
「いや、いつまでグレートプレーンズにいられるかなぁって」
「そうか。そうだったな。水の精霊と水の勇者も探さないとな」
 養魚池の方が忙しいので、時々神様からの依頼を忘れかける。
「戻ったら、久しぶりにうちの社員5人で集まる?」
「だな。あんまり進展がなさそうだけど、情報は共有しておこう」
 アイルが副社長らしい提案をしてきたので、乗っかる。それぞれやってることも違うので、いい機会だ。
「よーし、昼までに樽壺をいっぱいにしよう!」
 そう言ってインナー姿のアイルは沼に飛び込んだ。
 いつからだろう。アイルを女として見なくなったのは。ま、いっか。
 それから、昼まで卵らしきものを採取し、小さな魚の魔物を中心に捕獲。
 順調に樽壺をいっぱいにした。
 ジャングルも慣れてきて、帰りがけに人を噛んでくる甘酸っぱい果物、カム実を取る余裕もあった。
 崖を下り、カム実を洞窟の民にお裾分けして、避難所に戻る。

 避難所の近くに着いたのが、昼過ぎ。
 水路に隣接した畑の側に一台の馬車が止まっていた。査察官たちが、到着してるみたいだ。
「なんだぁ!? 査察官てのはおめえらか!?」
 マズい! 馬車の裏でサッサさんたちがラウタロに絡まれている!
 急いで、馬車の裏手に回ると、サッサさんがラウタロに握手をしながら頭を垂れている。
 他にも洞窟の民たちが馬車の周辺に集まっていた。
「なに? どういうこと?」
 遠目から様子を見ていたセスに事情を聞いたが、「わからないっす。査察官の人が出てきて、ラウタロさん見たら近づいていって、この状況です」とのことだった。
「悪い悪い。昔の同僚だ」
 俺に気づいたラウタロが笑いながら説明した。
「あ! そうなんですか」
「同僚だなんて、そんな! 私にとってラウタロさんは偉大な教官です!」
 死んだはずの恩師にでも会ったように、サッサさんは鼻をすすっている。
「なんだぁ? 鼻垂れサッサは今でも健在か?」
「その格好、サッサ、お前、本当に部隊長になったんだな」
「おいおい、随分立派になっちゃってるなぁ」
 洞窟の民の中にはサッサさんを知っている人たちもいるようで、声をかけていた。
 サッサさんは照れたように頭を掻いて、気まずそうにしていた。
 サッサさんの部下の2人は、上司のそんな姿を見たことがないというような表情をしていた。
「えーっと、なんて名前だっけ?」
 俺は巨漢の若い軍人に声をかけた。
「あ、アプです。こっちはチオーネです」
「ども。あれは本物の平原の戦士、ラウタロですか?」
 背の高い美人のチオーネに聞かれた。
「偽物がどんなのか知らないけど、あれはラウタロさんだよ」
 俺の言葉を聞いて、チオーネはアプと拳をぶつけあっていた。喜んでいるようなのでいいか。
「飯、食った?」
「いえ、まだです」
「じゃ、皆で飯食いに行こうぜー。避難所の広場で用意してると思うから」
 ラウタロたちにも声をかけて、避難所の広場に向かう。
 畑で作業している洞窟の民たちはすでに食べたようで、「その馬車は俺たちが盗んでおくから心配するな」とサッサさんに冗談を言って、作業に戻っていた。

 査察官たちを案内して避難所の広場に行くと、メルモとセスが昼飯を作りながら、食べていた。鉄板で豪快に肉野菜炒めを作っている。それをパンに挟んでいるようだ。
「このお嬢ちゃんたちが若いからって絶対に歯向かうなよ! うまい飯が食べたけりゃ、爺の言うことを聞いておくもんだ。あ!?」
新しく入ってきた洞窟の民たちに説明しているベン爺さんが、こちらに気づいた。
「ラウタロ。なんで社長が鼻ったれのサッサを連れてんだ?」
 ベン爺さんがラウタロに聞いた。
 サッサさんたちは、口を半開きにしたまま固まっている。
 どうやらベン爺さんもサッサさんを知っているようだ。
「ベン爺、驚くなよ。サッサは出世して今や輜重部の部隊長だってよ。そんで、ここの養魚池を査察に来た査察官殿だ」
「はっはっはー……新しい冗談か? まぁ、いいや。昼飯食べてけよ。あ、社長、ベルサのお嬢ちゃんたちも飯食べてないから、呼んできてくれるかい?」
「はいはい」
 いつの間にか、ベン爺さんは俺のことを「社長」と呼ぶようになっていた。たぶん、そのほうが新しく来た洞窟の民たちに説明するのが楽なんだろう。

 俺とアイルは、樽壺を持って養魚池へと向かう。
 ベルサは池の側で、水草を持って、地面に座っている洞窟の民たちに講義をしていた。
 俺がジェスチャーで「飯を食わせて」と伝えると、ベルサは「あ、もう昼か」と講義を止めた。
「じゃあ、皆さん避難所の広場に行って昼飯にしてください」
 俺がそういうと洞窟の民たちは立ち上がった。
「飯が用意されてるのか?」
「そうだぞ。これがめちゃくちゃうまいんだ」
「ところで、さっき先生が言ってた微魔物の話だが、あれは本当か?」
「まず、間違いない。ベルサ先生は顕微スキルってのを持ってるらしいんだ」
 などと言いながら、新しく来た民と前からいる民たちが話しながら広場へと向かった。
俺とアイルは樽壺の中身をベルサに見せてから、広場に戻ることに。
「いいね。量も種類も悪くないと思う。とりあえず、なんの魔物かわかっているのは、この池に入れて、なにが生まれるのか、もしくはなんの魔物かわかってないのはそれぞれ違う池に入れて育ててみよう」
 ベルサが選別し、それぞれアイテム袋にあった壺や樽に振り分けていく。
 ほとんどがよくわからない幼魚や卵だったので、8つほどに分け、それぞれ違う養魚池に入れていった。
「あ、ベルサ。今夜、うちの社員だけでミーティングしよう」
「水の精霊と水の勇者についての情報を共有しておこうと思って」
 俺とアイルが言うと、「あ、そうだったね」とベルサ。
「すっかり忘れてた。雨期までにクビにする証拠見つけないといけないんだったよね。ん~」
「なにか見つけた?」
「いや、ちょっと気になることがあって……あとで話すよ」
 3人揃って避難所の広場に戻ると、なぜかサッサさんが泣いていてベン爺さんが笑って酒瓶を勧めていた。
 なにがあったのかセスに聞いたが、「わからないっす。なんかベン爺さんはすごい人らしいってことくらいしか」とのことだった。

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