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駆除人 作者:花黒子

~水の勇者と興ずる駆除業者~

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143話

 午後から、アイルと樽壺を背負ってジャングルに向かう。
 1時間ほどかけ、南の洞窟まで辿り着き、すでに到着していたセスと残っている洞窟の民たちの様子を見ておく。
 セスは食料や日用品を船に乗せて運んできていたようで、荷降ろしをしていた。
「あ、社長とアイルさん。走ってきたんですか?」
「うん。食料と日用品か? 気が回るなぁ、セスは」
「ベン爺さんとラウタロさんに頼まれてただけですよ。社長たちはどうしてこっちに?」
「ちょっとジャングルで魚捕りに」
「なるほど。あ! それ、重いから僕が運びますよー」
 セスは忙しそうに洞窟の中に木箱を運んでいくので、邪魔しないように、畑で作業している洞窟の民たちの様子を見に行くことにした。

 俺とアイルが畑に行くと、以前、呪いを解いてあげた洞窟の民の1人が近づいてきた。
「足りないものとかないですか?」
「食料や日常品などは大丈夫です。運んできてくれたようなので。ただ、時々、地揺れのようなものを感じる時があって」
 洞窟の民の1人が不安そうに言った。地揺れ? 地震か。
 俺としてはすでに洞窟の民の多くを雇っているので、洞窟に残っている民たちのフォローもしておきたい。いずれ、今避難所で働いている民たちと交代した時に雇うことになるのだから。
「変なものを食べたりした?」
「時々、幻惑効果のある葉が育ってしまう時があって焼いてるんですよね。それが原因かなぁ、と思ってるんですが……」
 その葉を見に行くと、確かに、カミーラの薬屋で見た幻惑効果のあるカエデに似た葉が笹のように地面から生えていた。所謂アレだ。
「自然に生えてくるんですけど処分しないと、違法なので逮捕されるんですよね」
 洞窟の民が説明してくれた。グレートプレーンズでも違法なようだ。前の世界では繊維を採ったり、医療用の目的で育てていた国もあるが、とにかく依存症が怖い。
「とりあえず、風下の方に深い穴掘って焼いたらどう?」
「そうします」
 周囲を見回す。うちの会社が大勢雇っているので、明らかに洞窟の民の人数は減っている。
「人数が減って不安になったりはしない?」
「まぁ、大丈夫です。10人くらいは洞窟に残るようにベン爺さんがうまく回しているので」
 今は避難所の方で暮らしているとはいえ、雨期にはモラレスの住人が避難所に住むことになる。特に許可が出ているわけではないので洞窟の民たちはこの南の洞窟に戻ってくることになりそうだ。そのため、魔物や盗賊に荒らされないように、ある程度管理する人間は残している。
「悪いね。皆に働いてもらっちゃっててさ」
「大丈夫です。今年の雨期は食料が豊富そうなので心配はしてません」
 洞窟の民はそう言って笑っていた。

 帰りにまた寄ることを伝え、俺とアイルは崖を登った。
 アイルはそもそも空中を走れるし、俺も脚力に任せて駆け上がれば、ほとんど時間はかからなかった。
 鬱蒼としたジャングルから怪鳥の鳴き声が聞こえる。
 濃縮された緑と独特の臭い。
 探知スキルで見ると、平原とは比べ物にならないくらい魔物がいる。
 向かってくるものは狩り、逃げるものは追わない。
 水の音がする方へ向かう。アイルが剣で草木を払ってくれるので、自然と道が出来た。
 大きな沼に辿り着き、ツナギを脱いで、準備運動をする。
インナー姿のアイルとともに沼に入り、探知スキルで見えている魔物の群れを挟み撃ちにすることに。
「殺すなよ。生かして養魚池に持って行かないといけないんだからな」
「わかってるよ!」
 俺に注意されて、アイルは剣をアイテム袋に仕舞っていた。
互いに離れて、一気に魔物たちを追い込んでいく。
はじめに捕まえたのは大きなワニの魔物。
「これは養魚池で飼えないな?」
「晩飯にしよう」
 そう言うと、アイルはすぐ絞めていた。
 ワニの魔物を木に吊るして血抜きをしている間に、手づかみでどんどん魚の魔物を捕まえて水を入れた樽壺に入れていく。いくら水の中で動きづらいとはいえ、俺もアイルも伊達に高レベルなわけではない。毒針を持つ魚の魔物もいたが、二人とも動きを見切っていたので、刺さることもない。
 電気を放つナマズの魔物もいて、ビリビリきたがびっくりしただけで普通に捕まえる。樽壺の中で電気を放たれると他の魚の魔物が死ぬので、麻痺薬で麻痺させてから樽壺に放り込む。
「運ぶ時に、樽壺の中で動き回られると危険だから、樽壺にも麻痺薬入れておいたら?」
 アイルの言うことは尤もなので、樽壺の中がいっぱいになったら、麻痺薬を使うことに。
 魚の魔物は、味や育てやすさなどを考えて、大きめのから小ぶりのものまで、とにかく手当たり次第に樽壺に入れていった。食べてみなくては、育ててみなくてはわからない。
 特性の濃縮麻痺薬を樽壺に入れると、中の魚の魔物は全て状態異常になった。
 きっちりと蓋(ベタベタ罠)をして、ゴムのような魔力で樽壺を覆い背負う。
 アイルはワニの魔物を部位に分けて、アイテム袋に入れていた。
 元来た道を戻り、洞窟でワニの魔物の肉をお裾分け。
セスは今夜洞窟に泊めてもらうという。
「それじゃ、また、何かあれば通信袋で」
「はい。おやすみなさい」
 草原の街道を走り始めたのは、すでに西の地平線に太陽が沈む頃だった。

 俺とアイルは急いで、避難所へ向かった。
 とにかく鮮度が大事だ。なるべく地面と平行に走ったつもりだが、樽壺の中は揺れる。
 それでも、探知スキルで見る限り、状態異常から回復する魔物も、死ぬ魔物もいなかった。

 避難所に辿り着くと、すぐに養魚池に持っていく。
 養魚池に入れる前にベルサを呼び、見てもらう。ベルサと一緒に、避難所にいた面々は面白そうだからとやってきた。
「たくさん、捕ってきたね。どれ見せてもらおうか」
 ベルサは樽壺の中から魚の魔物を取り出していった。全て麻痺状態になっているので、ほとんど動かず、おとなしい。
「ジャングルの魚の魔物は大きいのが多いね。これで繁殖力も高いと養殖しやすいと思うんだけど」
 そう言いながら、ベルサは大きい魚の魔物を樽壺に戻していた。
「あ、そうか! 卵を持ってる魚の魔物のほうが良かったね。明日からそうする」
 デンキナマズの魔物は速攻で仕分けされ、メルモに調理されることになっていた。
 理由は、「あんなの育てるの面倒だろ? 少し考えて捕ってきてよ」とのこと。
 俺とアイルは笑って後頭部を掻くしかなかった。
「でも、なかなか良いと思うよ。大きすぎるのは育てるのに時間かかると思うし、調理も大変だから、次から捕ってこなくていいよ。今夜の晩飯にしよう」
 ベルサの言葉に、その場にいた者たちは「やー!」と歓喜の声を挙げた。
 育てる魚の魔物と食料になる魚の魔物の選別が終わると、食材となった方はとっとと避難所の広場に持っていく。

 晩飯はジャングル産の魔物のムニエルとワニの魔物の肉を野菜と絡めた肉野菜炒め。
 大きな鉄板に野菜と肉が投入されていく。洞窟の民たちもメルモを手伝っていた。
「回復薬の作り方を教わって、この避難所にいる間になんでも吸収したほうが得だってことに皆、気がついたんだ。」
 様子を見ていた俺にラウタロが話しかけてきた。
「まぁ、前向きになってくれたんなら、良かったです」
「まったく、洞窟に住んでた頃はうじうじと考えて何をやっていたんだか。最近、思い出すと恥ずかしくなってくるんだ」
「そういう時期があっても良いんじゃないですか? 突っ走り続ける人もいて、立ち止まる人もいて、いろんな人がいてもいいじゃないですか」
「そうだな。いろんな奴がいないと集団として発展しないんだよなぁ。ただ、お前んとこの会社ほど変な奴らは見たことないけどな」
「そうなんですよね。変な奴しかいないんですよ。仕事押し付けてくるし困ったもんです。どうです? ラウタロさん、一緒に夜の魔物狩りに出かけませんか? 酒代稼ぎに行きましょうよ」
 俺はラウタロを道連れにしようと誘ってみた。
「グハハハ、考えておくよ」
 サラリと躱された。

 結果、ラウタロは、魚の魔物のムニエルをたらふく食べハンモックで眠ってしまった。
 仕方がない1人で魔物狩りに出かけようと準備をしていると、ボウとベン爺さんがついてきてくれるという。
「ちょっと、お金がいるんだ。フハ」
「まぁ、ワシもそんなとこだ」
 2人とも何に使うのか知らないが、お金がいるらしい。

 2人と一緒に避難所の南西の草原に向かう。
 探知スキルを使いながら、冒険者ギルドから駆除依頼が出ていたシャドウィックを探す。
 意外にもボウとベン爺さんは俺のスピードにもついてきている。
「2人とも速いね」
「フハ、必死」
「もう少しスピードを落としてくれ。老体にはちとキツい」
 ベン爺さんの汗が尋常じゃなかったので、少しスピードを緩めて魔物を探す。
 夜の草原は魔物の気配が薄く、見つけるのに苦労した。
 目印のような場所には魔物が固まっているようで、巨大な魔物の骨が半分埋まっているような場所やちょっとした池の周囲などには、数多くいることがわかった。
「これ、篝火みたいな目印になるようなものを作ったら魔物が寄ってくるんじゃないか?」
「そうかも」
「うむ、一理あるな」
「篝火の脚は明日揃えるとして、今晩は焚き火でもしようか」
 そう言って俺は枯れ草を集め、魔法で火を点け、アイテム袋にあった樹の枝を焼べた。
「ナオキは火魔法のスキルがあるのか?」
 ボウに聞かれた。
 一番はじめ、マスマスカルを焼くためにとったスキルだ。未だレベルは1。
「駆除した魔物をまとめて焼くためにね。魔法陣を木の板に焼き付けたりするのに便利だからな」
「なるほど。便利だからか」
「なんじゃ? ボウはスキルについて悩んでいるのか?」
 ベン爺さんが聞いた。
「少しスキルポイントが残ってて、どうしようかと思ってるんだ」
「まぁ、悩むのも無理はない。ワシも水魔法を極めるかどうするかで随分悩んだ。結果極めたがな」
 ベン爺さんは焚き火の灯りに集まってきたシャドウィックの群れに水魔法の槍を放っていた。以前、戦っているのを見た時はあまり威力を感じなかったが、今回は結構なスピードが出ていた。
「前見た時よりも威力があがってませんか?」
「あれは、洞窟の民たちを守りながら応戦してたからな。本来はこんなもんだ」
 ベン爺さんの説明に納得しながら、シャドウィックたちの断末魔の悲鳴が草原に響くのを聞いた。
 ボウはボウで、木の棒を魔力で覆い、シャドウィックをぶっ叩いていた。威力は申し分なく、一発で霧散させていた。
「それは、どういうスキルなんだ?」
「魔力操作。最近、草刈るのに鎌使ったり、ノコギリ使っているうちに発生したんだ。やっぱり使えるな。フハ」
「そのスキルにポイント割り振れば? 受け売りだけど、人生が豊かになるスキルにポイントを割り振ったほうが、後悔しないらしいよ」
「なるほど、人生が豊かになるかぁ。確かにそのほうが圧倒的にいいぞ! ボウ」
 ボウに言ったのに、ベン爺さんが納得していた。
「うん、オレそうする!」
 ボウはそう言って、魔力操作スキルにポイントを割り振ったようだ。 
 その後、シャドウィックが霧散した場所から魔石を回収していく。
 薪が減ってきたら、新たに焼べ、魔物を待つことに。
「明日はジャングルで、薪も補充しておかないとな」
などと言いながら、魔物を倒していく。
 シャドウィック以外にもアルマーリオや小型犬サイズの蛾の魔物なんかも火の光に釣られて寄ってきた。実態がある魔物は肉や皮、羽を回収。
明朝、冒険者ギルドで買い取ってもらえるか聞こう。
報酬は3人で山分けにすることにして、本日は終了。
「次回はもう少し、南西に行かんか? 小さい集落跡があったはずなんだ」
 焚き火を消しながら、ベン爺さんが言った。
「いいですね」
「フハ。楽しみ」
「高レベルの者たちと行くと、これほど狩りが楽だとは思わんかった」
 3人ともほくほく顔で避難所の住居に帰宅。
 住居の方は皆、すでに寝静まっている。

 回復薬を売りに行った洞窟の民のハンモックが余っていたので、借りることにした。
 寝る前に、「明日、サッサさんたちが来るんだったな」と思い出した。
「モラレスの冒険者ギルドに寄ってから、迎えに行こう」
 ハンモックに揺られながら、就寝。ハンモックは寝具として優秀であることを知った。

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