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駆除人 作者:花黒子

~水の勇者と興ずる駆除業者~

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130/250

130話


「あ、ナオキ。久しぶり!とりあえず助けてくれる?」
 地面から伸びる蔦に絡まったボウが俺に助けを求めてきた。
 たった一週間の間にボウの畑にはあのカボチャのような実をつける蔦が伸びていた。
ベルサの仕業か。俺がベルサを睨むと、ベルサは悪びれる様子もなく蔦についた実をもぎ取り、ナイフでさっくり、真っ二つに割った。
「ボウ。やっぱりダメだな」
 ベルサは割った実をボウに見せた。
俺はボウに絡まった蔦を引きちぎり、地面に下ろす。
 ボウは「ありがと」と言って、ベルサの方に向いた。
「やっぱりダメ?そうか。栄養が足りてないのかなぁ」
 ボウは後頭部を掻きながら、残念そうに言った。確かにカボチャに似た実の中身はスカスカでピーマン状態だった。
「ボウに何を教えてるんだよ」
 俺がベルサに言うと、
「ナオキ、雨期の食糧事情は厳しいんだ。なんでもやってみなくちゃね!」
「オレ、収穫祭に出ようと思ってるんだ!」
 ベルサとボウが俺に向かって言う。
「わかったわかった、あとで聞く。とりあえず、今は腹減ったから竈とテーブル借りるよ」
「うん。あ、どうも皆さんお揃いで」
 ボウは俺の後ろにいたうちの社員たちと、リタとレミさん親子に挨拶をした。
「狭い小屋ですけど、どうぞ使ってください。リタさん、この間は料理をどうもありがとう」
 ボウは自分の小屋に皆を案内しつつ、リタにお礼を言っていた。
「え!?じゃあ、リタの気になってる人って、むぐっ……」
 レミさんがはしゃいだところを、リタが後ろから羽交い締めにして口を塞いでいた。仲の良い親子だ。
「いいのいいの!いつも余り物でごめんね。お母さん、余計なこと言わなくていいのよ」
 リタはボウに笑いながら、小声で自分の母親に凄んでいた。女の二面性というやつだろうか。

 小屋に入り、セスが昼飯を作ることに。メルモも手伝っている。
 人数が多いので、手の空いている人たちも野菜を洗ったり、テーブルを片付けたりしつつ、世間話をしていた。レミさんは一人でボウが小屋を作ったということを信じられないらしく、「本当に一人で作ったの!?」と驚いていた。
 ベルサは雨期の食糧事情について、俺に説明してくれた。
「雨期がだいたい100日くらいあって、その間、あの東の避難所で暮らせるのが、せいぜい500人。モラレスの町の人口は800人ほどいるから」
「無理じゃん」
 避難所だけでは賄えてない。
「そう、無理なんだ。だから、モラレスの町人の半分くらいは北の町に避難するらしい」
グレートプレーンズの北の方は標高が高くて冠水しないんだったか。
「あ、それ北の町で聞いた」
 アイルが言った。
「北の町への街道や町の地面はかなり整備されてて、なんでか聞いてみたら、雨期にモラレスから出稼ぎに来るって」
「ああ、そうらしいね。でも、北の方でも冠水しないとはいえ、雨が多いだろ? それで病気になる人もいるんだって。北の方の奴らも避難してきてるってわかってるから安い賃金で雇うらしいんだよ」
 アイルとベルサの説明を聞く限り、モラレスの人たちは結構厳しい状況にいるようだ。
「でも、冠水し始めてから、20年も経ってるんだから、モラレスの人たち北の方に移住しようとは思わなかったのかな?」
「領主が管理しているから、そんな簡単には移住出来ないさ」
 そうか。領主制だと、移住も簡単じゃないか。
「王都に近づくと差別もあったよ。毛と耳のある獣人は、あまり良い職に就いてないみたいだった」
 モラレスではそんなに差別意識のようなものは感じないが、北の方では違うらしい。
「なるほどね。食糧難を解決することがモラレスにとっては急務なんだな」
「だから、男たちは渡り鳥の魔物を狩ることに必死なんだ」
 俺たちが暗い話をしていると、隣で聞いていたレミさんが笑っていた。
「あなた方は旅人なのに、心配してくれるのね!大丈夫よ!養魚池も作るんだし、ボウ君も野菜を育てるもんね!」
「はい!良い野菜を育てます!」
 そうだった。俺たちが暗い顔してどうする?
ここに住む人たちはたくましい。
「料理できましたよー」
 セスの声がした。
 人数も多いので、昼飯は全員で鍋をつつくスタイルだ。

 赤い汁の鍋で肉も野菜もたくさん入っていた。
 汁が赤いのはトマトに似た野菜マテというらしいを入れているからで特に辛くはない。ベルサは「これだよ、これこれ!」と本当に美味しそうに食べていた。
「そんなに美味しいですか?」
 セスがベルサに聞くと、
「ああ、私はセスたちがいない間、屋台の料理にこれをかけて食べてたんだ」
ベルサはポケットから赤い実を取り出して言った。あの実は危険だ。対魔物用のスプレーで使える代物。
「美味しいんですか?」
知らないリタとボウは、ベルサに貰って試して、
「辛い!」
「あぁああああ!痛い!」
と、雄叫びのような声をあげていた。
「ヒョッホー!!」
 レミさんはお気に召したようだ。
「これくらい辛くして味変えないと、何食べても同じ味しかしないんだ」
 ベルサはモラレスの料理事情に文句を言っていた。

 食後にお茶を飲みながら、この後の予定を話す。
「人連れてくるとして、どこに泊まらせるつもり?」
 ベルサが俺に聞いた。確かに俺たちが泊まっている宿に何十人も泊まれるはずもない。しかも、モラレスから、避難所までがちょっと遠い。
「テント作って、避難所の丘に寝泊まりしてもらうか……」
「小屋建てる?」
 聞いていたボウが言った。
「手伝ってくれるのか?」
「当たり前だ。ベルサには畑を手伝ってもらってるんだから」
 ベルサに畑を手伝ってもらって蔓に絡まっていたはずなのに、ボウは人が良い。ボウの建築スキルがあれば、簡易的でもテントよりは良いだろう。
「頼む。助かるよ」
「その代わり、引き続き野菜作りを手伝ってくれるか?」
 ボウが聞いてきた。
「俺たちで手伝えることがあれば、手伝うよ。とりあえず、あの畑の蔓は切っておく。ただ、うちの会社で農業スキルとか持ってる奴って、いなかったよな?」
 俺が社員たちを見ていると、リタが手を上げた。
「私、持ってます!農業スキル」
「そうなのか……」
 ただ、リタはうちの社員じゃないからなぁ。
「いいんじゃないの! ボウ君には小屋の建設をしてもらって、うちのリタがボウ君の畑を見て、ナオキ君たちには養魚池のための人集めと食料を頼めるかしら? 一纏めで雨期の食糧危機解決案ってことで役所に申請してみるわ!」
 レミさんが言った。ボウの畑も養魚池復活計画にねじ込んでしまうらしい。
「わかりました。それで、よろしくお願いします」
 そういうことになった。


 一先ず、セスとメルモに食料の買い出しを頼む。大所帯になりそうなので、多めにお金を持たせる。あんまりモラレスの店が多く品物を売ってくれないことも考えて、セスには北の町へ行ってもらう。メルモは出る前に大きめの袋を縫って、セスに持たせていた。
 ベルサとリタが組んで、ボウの畑の蔓を切っていた。
 アイルはボウと一緒に小屋を作るため、避難所へ向かった。アイルなら力仕事も早い。ボウが少し緊張しているが、問題無いだろう。
 レミさんはモラレスの町の役所へ向かい、俺は南の洞窟へと向かった。
 途中まで一緒だったレミさんに、
「ナオキ君の会社は素敵ね」
と、言われた。
「そうですか?」
「皆、自分が何をするかわかってて、すぐに動けるのは良いチームの証拠よ」
「得意なことと苦手なことがそれぞれわかってるからじゃないですかね」
「うん、そんな感じ。ボウ君は違うのよね? 社員ってわけじゃないんでしょ」
「そうです。ただの友だちです」
「良いわね!……気になってたんだけど、もしかして、ボウ君って魔物?」
「魔族らしいですよ」
「魔族?」
「面白いですよね。俺、魔族の友だちは初めてなんですよ」
「フフフ、確かに面白いわね!」
 レミさんは笑っていた。ただ、なんだかその背中は寂しそうに見えた。

 モラレスでレミさんと別れ、街道を南へ走る。
 メルモもいないし、人もほとんどいないので、全速力だ。
 夕方頃には廃墟を抜け、崖に到着していた。

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