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駆除人 作者:花黒子

~水の勇者と興ずる駆除業者~

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127話

 俺はとりあえず、興奮しているムキムキ男を落ち着かせた。
よく話を聞いてみると、老人は石化の呪いをかけられていた者たちの代表で、ムキムキ男は犯罪奴隷たちの代表なのだそうだ。2人に何かできることはないか聞いてみた。
「ワシらは星詠みの民だ。今で言うと吟遊詩人とかまじない師だな。声は枯れている者が多いな。力仕事は期待しないでくれ」
「俺たちゃ犯罪奴隷の成れの果てだ。殺人、強盗、詐欺、何でもやるぞ」
 聞いた俺がバカだったようだ。ここはこの国で最後に辿り着く場所。
 この人たちは普段、何をやってるんだ?
「外に畑がありましたけど?」
「あれは、通いの奴らがリハビリでやっている畑だ」
 老人が説明した。
「リハビリ?」
「ああ、昨日、お前さんが診た患者以外にも症状の軽いけが人や病人はいるんだ。金のない奴らはワシらのまじないを頼りにやってくる。なにしろここらへんには教会がないからな」
 そういや、モラレスに教会はなかったな。
「治療に時間がかかる奴らもいて、養生していても体がなまるばかりだから、畑を作らせたりしているんだ。治療できない奴らは寝かしておくしかなかったんだが…お前さんが……」
 そういう人たちを俺は治してしたのか。
「犯罪奴隷の人たちは何してるんですか?」
「あん?何って、別に何してもいいじゃねぇか」
 ムキムキ男が機嫌悪そうに言う。筋肉があるくらいだから力仕事をしているようにも思うが。
「こやつらはな。洞窟で時々出る魔石を日がな一日掘り出しては、たまに来る旅の商人に騙し取られているのよ」
 ムキムキ男の代わりに老人が説明してくれた。
「俺たちは騙されてなんかねぇ!あれはちゃんと預けてるんだ!」
「誰に預けてるんですか?」
 俺はムキムキ男に聞いてみた。
「だから旅の商人に預けて、魔石を売り歩いてもらってるんだ」
「それで、売上を貰った試しはあるのかい?」
 老人はムキムキ男に聞いた。
「ふんっ。今まで見つかった魔石はたまたま質が悪かっただけだ。おい、薬師よ」
 ムキムキ男は俺を薬師だと思っているらしい。
「ここはな。昔、ダンジョンだったことがあるんだ。必ず良い魔石が採れるはずなんだ」
 確かにマルケスさんがいた国だったら、ダンジョンの跡地があるはずだ。リタの母親が探しているというダンジョン跡地とはここのことなのだろうか。
「バカ言うな。ダンジョン跡地とは決まってなかろう」
 老人がバカにしたようにムキムキ男に言った。
「考古学者の先生が可能性あるって言ってたじゃねぇか!可能性があって、魔石が見つかってるんだ。ここに決まってるじゃねぇか!」
「魔石なんざ、どこ掘ったってあるさ」
「くそっ!なんでこの国の奴らはわからないんだ!おかしな奴らしかいねぇ!」
 ムキムキ男はそう言うと、部屋を出て行ってしまった。
「犯罪奴隷と言ってもバカな奴らばっかりだ。殺人も強盗も上手くいった例がないからここに辿り着いてるんだ。悪かったな。助けてもらったのに」
 老人は俺に謝った。
「いえいえ、すみません。あまり考えないで治してしまったので」
「ここのことは気にしなくていい。旅を続けてくれ」
 そう言われても、知ってしまったので、気まずい。

「社長。朝飯にしましょう」
部屋にいなかったがメルモは飯の支度をしていたらしい。
朝飯はカボチャのような野菜のポタージュと固めのパン。パンを温かいポタージュにつけて食べると非常に美味い。
「どんな朝でも飯が美味いのは、ありがたいな」
「すみません!私が『助けちゃえば』なんて言ったばっかりに」
 メルモは、老人とムキムキ男との話を聞いていたか。
「気にするな。ベルサには俺が怒られるから」
食後に通信袋でベルサに現状を包み隠さず伝えた。
『何やってんの!』
 やっぱり怒られた。
『なんでそう、金にならないようなことをやるの!ったく!』
「すみません。ちょっとした出来心なんです」
 通信袋へ向かって土下座である。
『しかも回復薬の在庫を減らして、会社の品物を勝手に使って良いと思ってんの!』
「いえ、良いとは思っておりませんが、その……見るに見かねたといいますか。はぁ……」
『どうせ、メルモに言われて良いとこでも見せようとしたんでしょ!?』
「いえ、そんなことは……」
『かばうと痛い目見るよ!』
「はい、メルモに言われました!」
 俺はあっさり社員を売った。
「社長!酷い!」
 メルモが叫んだ。
「仕方がなかったんだ!許せ!」
 そうでも言わないと痛い目にあうのだから仕方がない。俺は絶対に痛い目になんかあいたくないんだ。ベルサはいろんな植物の種を持っていて、唐辛子のような香辛料の種も保持していることを俺は知っている。
『まぁ、いい。その洞窟にいる人たちの仕事は見つけておくよ。ちょっとこっちに人手が足りないから、たぶん大丈夫だけど……』
「さすがベルサさんです!」
『その人たちへの報酬となる金か食料が心配だね。足りないかもしれないからアイルに頼んでみて。どうせコロシアムで稼いでるだろうから』
「はい!ありがとうございます」
『あ、それから、モラレスの北東の畑、アルマーリオが10頭も獲れたって農家のおじさんが喜んでたよ。肉はリタとボウに渡したけどいいんだよね?』
 そうだった。俺たちがマッピングしている間、ベルサが依頼を受けているのだ。
「うん、ありがと。なにからなにまで助かるよ」
『あとで返してもらうから、いいよ』
 あとが怖い。
 俺は通信袋を切り、アイルに連絡する。
「俺だけど」
『なに?』
「アイル金貸して。食料でも良いんだけど」
『あぁ?何言ってんの?』
「いや、だからちょっと金か食料が必要になりまして」
『どのくらい必要なんだ?』
「結構、必要ですね。何十人かが雨期の間、暮らせるくらい……?」
『ナオキ、お前、また何やらかしたんだ?』
「何って、まぁ……そのぉ……」
 俺はアイルに包み隠さず現状を話した。
『どうせメルモに言われたんだろ?』
「そうです」
『相変わらずだなぁ。ベルサには?』
「話した。ベルサは仕事を用意してくれるらしいんだけど、金と食料が足りないかもしれないらしくて……」
『ベルサも何かやるみたいだな。まぁ、金の心配はするな。こっちはコロシアム荒らしながらマッピングしておく。ナオキも仕事サボるなよ』
 アイルは男前だなぁ。
「はい、ありがとうございます」
 俺は通信袋を切って振り返ると、メルモが食器と寝床を片付けながらこちらを睨んでいた。
「すまない。悪気はない。ただ痛い目にあいたくないだけなんだ」
「ここの人たちが助かるなら良いんですけど」
 うちの社員が大人で助かった。
 洞窟を出る時、老人に仕事が用意できそうだと言っておいた。
「本当か!?無理はするなよ。期待しないで待ってる」
 そう言って老人は俺たちを送り出してくれた。

 街道は崖で行き止まり。俺たちはグレートプレーンズの南側の平原を探索しながらマッピングすることに。
 西に行けば山脈があるはずだ。崖の上のアマゾンから平原を見た時には、西側に目立つものは見えなかったので、とりあえず東へと向かう。

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