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駆除人 作者:花黒子

~東方見聞する駆除業者~

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108話



 フリューデンの母親は顔がテッカテカで真っ黒く日焼けしていた。
 手紙を渡し、船を貸してくれるよう言うと、
「あんたたち漁師になるきかい?ん~足腰は丈夫そうだ!うちので良ければ使っていいよ!あと息子にあったら、たまには帰ってくるよう言ってくれるかい!?あのボケ、全然顔見せなくてよ、見つけたらふん縛って見合いさせなきゃならねぇんだ!好きな娘がいるって話聞くかい?そうだろうよ!アイツは色恋にはとんと縁がねぇもんだから、こっちはおちおちくたばってらんねぇのよ!」
 フリューデンの母親は、まくし立てるようにフリューデンへの愚痴をほとんど息継ぎなしで話し続けた。海女をやっていたらしく息は長いんだという説明も愚痴の間に挟んでいた。
時間も限られているので、船の場所を聞くと、話もそこそこに船へと向かった。
フリューデンの家の漁船はボロかった。
それでも、海には浮かぶようなので、使うことにした。
船体に衝撃吸収のため魔力をゴムのような性質にする魔法陣を描く。衝突する際、俺が魔力で船体をコーティングすれば、ほとんど破損しないだろう。続けて、風魔法の魔法陣を船尾に描く。水流を生み出す魔法陣よりも早く移動できる気がしたから、今回は風魔法の方にする。なんでも試してみる。
「セス。舵を頼む。アイルは地図と羅針盤を見ていてくれ」
俺は魔法陣の方に集中する。
「OKっす!」
「ん、了解」
 少し、沖に出たところで、船を東に向け、一気に魔法陣に魔力を通す。
ボンッ
船尾から放たれた風は爆発のような音を立てて船を進ませた。魔力でコーティングした船体が、海面を何度かバウンドし、さらにスピードが増す。
イーストエンドは、あっという間に通り過ぎ、360度、陸が見えなくなった。
セスからの「舵が利かない」というクレームを受け、ようやく魔法陣に魔力を流すのを止めた。魔力を止めても、船は余韻で進んだ。スピードが遅くなったら、少しずつ魔法陣に魔力を込め、舵が効くくらいのスピードで進んだ。
魔物はあまり現れなかった。行く手の邪魔そうな魔物は、アイルが木刀を素振りし、風圧で警告すれば、すぐに海の中に潜っていった。
2時間くらい経っただろうか。前方に島影が見えてきた。
「あれが、たぶん西の端の島だと思う!」
 アイルが指差しながら叫んだ。

 船を島につけ、下りてみたが、どうも地図と地形が違って見える。一番西の島には入江があるようなのだが、この島には入江がない。
 アイルが、垂直に空中を駆け上がって、高い場所から周囲の島を見て戻ってきた。
「間違えた!」
 アイルは地図を広げながら、群島の中の一番南の島を指し、
「ここっぽい。なんでだろう?ずっと真東に向けてきたんだけどなぁ」
「海流で流されたんだろ?」
 北からの海流で流され、一番南の島に辿り着いたとすると、家庭教師の死体を乗せた船は、もう少し北の方の島から流されたのかもしれない、と予測した。
 船に戻ろうとした時、森の中から、丸い緑の魔物がふらふらと歩いて出てきた。どうやらその緑の魔物は鳥の魔物らしく、顔はフクロウに似ている。飛べないのか、飛ばないのかはわからないが、テトテトと2本の足を使い、丸い身体を揺らしながら歩いている。歩くのに向いてないんじゃないか、とすら思う。憎めない愛らしさがあり、俺たち3人は目を奪われてしまった。
 今度は森から四足の尾の長い魔物が現れた。顔は小さく、身体は港町でよく見るネコの魔物と同じくらいの大きさほどで、緑の鳥の魔物を追っているらしい。前の世界で言うとイタチとかテンという動物に似ている。どう見ても、次の瞬間にイタチの魔物が緑の鳥の魔物を捕えると思ったが、突如空から一本の矢が降ってきて、イタチの魔物の身体を貫いた。
 すぐに俺は探知スキルを展開し、警戒するも、人の反応がない。魔物が矢を放ったのだろうか。まさか、精霊か?
「周囲警戒!上からの攻撃に気をつけろ!やばかったら、すぐに船に乗って逃げろ」
 俺は2人に指示を出して、イタチの魔物を貫いている矢を確認する。魔法で作った矢ではないが、矢羽に魔力の残滓のようなものがあった。魔力を使って威力を上げたようだ。魔物だとしたら脅威だな、と思っていたら、探知スキルに人の反応があった。探知スキルの範囲外から矢を放ったとすると、1キロメートル以上先の獲物を仕留めたということだ。化物か?
 その化物はこちらに向かってきているようなので、待つことにした。
 森から出てきた化物は、あごひげが長く、鼻輪のようなピアスをした赤毛の人族だった。眉間には深いシワがあり、年齢は4、50代だろうか。筋骨隆々とまではいかないが、ガッチリとした体型。服は汚れていたが、イーストエンドの人たちとあまり変わらない服装をしていた。肩には湾曲した弓を担いでいた。
「お前ら、変な魔物を連れてきたんじゃないだろうな?」
 男は挨拶もなしに、俺たちに聞いてきた。
「連れてきてませんよ」
「本当か?このビーセルやマスマスカルは船底に身を隠す。連れてこられると困るんだ!」
 イタチの魔物はビーセルというらしい。
「大丈夫です。俺は『探知』持ちですから、船に魔物が乗っていたら、わかります」
 男は島の生態系を守っているのかな?
「っ!そうか……疑って悪かったな。いつもの海賊かと思ったんだ」
 男は俺たちに謝りながら、イタチの魔物から矢を引き抜いた。すでに、緑の鳥の魔物は森へ消えている。
「この島の生態系を守っているんですか?」
「セイタイケイ?」
 生態系ってわからないか。
「島の魔物たちを守ってるんですか?」
「ああっ!いや、ガガポと言ってな。見ただろ?緑色の丸い魔物。あれをどうにか保護しようと思ってるんだ」
「魔物学者なんですか?」
「自称だ。別に誰かに認められたわけじゃない。俺は自称魔物学者のシオセと言う」
「清掃駆除業者のナオキです」
「同じくアイルだ」
「同じくセスです」
 それぞれ自己紹介をした。
「清掃駆除業者ってのはなんだ?」
「家の掃除をしたり、マスマスカルやバグローチを駆除したりする業者です」
「そんな仕事があるのか?」
「作ったんです」
「そうか」
「シオセさんはなんでまた、ガガポを保護しようと?」
「元々この島に住んでいたのはガガポだ。それなのに人間が船で乗り付けた時に、ビーセルやマスマスカルなんかが一緒に下りてきちまって、ガガポを食い殺しちまうようになった。ガガポは飛べない上に走るのも下手だからな。恰好の獲物なんだ」
 飛べないし走るの下手ってよく生きてこれたな。
「ただな。ガガポの肉はめちゃくちゃ美味い!俺は元々船乗りで色んな所に行って、それなりに魔物の肉を食べてきたと思ってるんだが、その中でも一番ガガポの肉が美味い!」
 ガガポの話をするとシオセさんは熱くなるようだ。
「出来れば、保護して繁殖させたいんだが、なかなかうまくいかなくて。俺がこの島に来て7年くらい経つが、成果は檻を作って、どうにか保護らしいことをしてるだけだ」
「魔物をテイムするスキルは持ってないんですか?」
「ああ、持っていてもあまり変わらないと思ってな。取ってない」
 そうか。テイムしても基本的にガガポの能力が上がるわけではないか。
「その弓矢は相当なスキルのようだが?」
 アイルが聞いた。
「ああ、まぁ、この島の中だけだ。弓スキルを上げれば、遠距離攻撃はできるんだが、風向きや風の強さがわからなければ、当たらない。俺は7年のうちに、この島の風は読めるようになったからな」
「それでも、1キロ以上先から動く的に当てるっていうのは尋常なスキルじゃないと思いますよ」
「経験だ。経験」
 経験でどうにかなるレベルなのか。シオセさんはどう考えても弓の才能があるように思うが、まあ、好きなことと得意なことってのは違うからな。
「駆除業者ってことは、この島のビーセルを駆除出来たりするのか?」
「どうですかね?ビーセルにだけ効く毒とかは知らないし、罠張るくらいですかね。それでもこの島のビーセルを全て駆除できるとは思えませんけど」
「そうか」
「でも、これ使ってみます?ベタベタ罠といって、魔物を捕える罠なんですけど」
 俺はアイテム袋から、ベタベタ罠を取り出して、シオセさんに渡した。
「魔力を流すと、ベタベタになるんです」
「おおっ!こりゃいい!ガガポを囮にして、これを仕掛けてみたいな!」
 シオセさんがベタベタ罠を触りながら言う。
「売りましょうか?」
「いいのか?ちょっと待ってくれ」
 シオセさんは自分の財布を逆さまにした。銀貨と銅貨がジャラジャラと出てきた。
 ベタベタ罠が売れるなんて思っていなかったから、どのくらいの値段にするか決めていない。実際、木の板に魔法陣を描いただけなので、元手はほとんどかかっていない。
「銅貨5枚でベタベタ罠10枚とかでどうです?」
「そ、そんなに良いのか?」
 あれ?安すぎたかな?
「なら、これで、頼む」
 シオセさんが銀貨を3枚渡してきたので、ベタベタ罠を60枚渡すことになった。足りなくなることはなかったが、結構持って行かれたので、あとで補充しておかなくては。
「いやぁ、良い取引をした。また来てくれ」
「そうですね。今度群島を通るときに寄ります。うちの魔物学者にも会わせたいし」
「魔物学者がいるのか?」
「ええ、社員に」
 などと談笑していたら、
「社長、本来の目的忘れてません?」
と、セスが言われてしまった。
「そうだった。あの実は人探しをしているのですが、この人見ませんでしたか?」
 俺は王子の似顔絵をシオセさんに見せながら、聞いた。
「いやぁ、見てないな」
「そうですか」
「金髪イケメンだな。干物屋にも聞いといてやるよ」
「干物屋?」
「ああ、船に住んでて干物を売りに来るんだ。あいつなら、群島の隅から隅まで回ってるから、今度来た時に聞いといてやるよ」
 今度がいつなのか知らないが、明日までには間に合いそうにない。それでも、いいか。見つからなかった時のために保険として頼んでおこう。
「ありがとうございます。頼みます。じゃ、俺たち行きますんで」
「おう!罠、ありがとうな!海賊に気をつけろよ!あいつらはバカだから!」
「はーい!」
 俺たちは北の島へ向けて出港。帆も立てずに出港したので、シオセさんは口を開けて驚いていた。

 北の島へ向かっている途中に海賊に遭遇。船を横付けし略奪しようとしてきたので、アイルとセスが返り討ちにしていた。海賊は全部で16人。全員捕縛。拠点は群島の西の島の入江だそうだ。
正座させ、王子の似顔絵を見せ、
「こいつを見てないか?」
と、聞いてみた。
「し、知らねぇよ!」
「そうか、じゃ、全員の鼻でも削ぐか?」
 アイルが容赦なく言う。
「ま、ま、待ってくれ!待ってくれ!お、お、親方なら知ってるかもしれねぇ!」
 海賊たちは拠点にいる親方に聞いてみるという。拠点までは案内するというので、ついていくことに。十中八九、罠があると思うのだが、気に入らなければ海賊船を壊して、全員海に放り投げよう。
 すでに、夕方。海賊の拠点に着く頃には日が落ちていそうだ。
「早くしろよ!こっちは寄り道しすぎたんだから!」
 アイルは海賊に容赦ない。
「へ、へい!」
 寄り道はこっちの都合なのだが、海賊たちは理不尽な状況に慣れているようで、返事していた。

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