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駆除人 作者:花黒子

~駆除業者の日常~

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1話

 エルフの薬屋の掃除が終わったのは夕方を過ぎ、すっかり日が落ちた時だった。
 カミーラという薬屋の店主は、眼光の鋭い腰が折れ曲がった老人で、齢800と少しだそうだ。エルフの金髪と長い耳が特徴的だ。
 俺は報酬を受け取って、店を出ると満天の星を見て深呼吸をした。

俺がこの世界にきてから3週間。
どうにかこうにか、自分の生活が成り立ち始めた頃だ。
地球にいた頃は、清掃員兼害虫駆除の仕事をしており、ゴミ屋敷の崩れてきたゴミによって圧死したところを、この世界の神に拾ってもらった形だ。
初めは何がどうなったのかわからなかったが、ここがゲームのRPGのような世界だということに気づいてからは、この世界に馴染み始めた。
冒険者ギルドに入り、ひと通り戦闘の訓練を受けたが、剣の才能も魔法の才能もなかった俺は、基本的に地球の頃と変わらず、清掃員と害虫駆除をメインに生活を成り立たせることに決めた。
今日も冒険者ギルドに行って、掃除の仕事を見つけてきた。
魔物や魔獣の討伐ではない仕事は人気が無いため、いくらでもあるらしく、毎日ヒマしない。
俺がいる町は王都からも離れており、ココらへんの魔物や魔獣は弱いため、あまり冒険者の数もいないらしい。
それでも200人ほどは登録されているという。

薬屋清掃の仕事で10ノットの銀貨を5枚手に入れた。
ノットというのが貨幣の単位らしい。
他の国のことは知らないが、この国では1ノットが銅貨、10ノットが銀貨、100ノットが金貨だ。
ちなみに、俺は国の名前をまだ知らない。
まぁ、その内知ることになるだろうと、焦らずゆっくり地盤を固めようと思う。

冒険者ギルドの受付で依頼完了を伝える。
ギルドに宿屋も併設されている。
宿の代金が20ノットだから、30ノットが余る。
早いところ自分の部屋を借りたいので、貯金に回す。

宿の部屋に戻ろうとしたところ、受付の狐の女獣人に呼び止められた。

「ナオキさん!ちょっと待って!」
「なにか?」
「あなたに依頼があるんだけど」
「依頼?俺みたいな初心者に依頼なんてあるんですか?」
「ええ、あなたはほぼ清掃と害虫駆除の依頼しかしてないわよね?」
「ええ、ほとんど町の外には出てないですよ」
実際、この世界に来て、一番近くのこの町に入ってから一度も外にでていない。
ゴブリンやワイルドベアなどと戦う冒険者達とは違う。
影で笑われているのかもしれないが、ほとんど言葉がわからないので気にならない。
先程の受付嬢との会話もジェスチャーを交えた会話だ。

俺に来た依頼というのは地下水道にネズミの魔獣が繁殖してしまったので駆除してほしいというものだった。
依頼人は町の役人からだそうで、実入りもいいという。
地下水道の場所がわからないので、受付嬢に地図を描いてもらった。

翌日、役所に行って、片言でギルドから来た者でネズミを駆除しに来たと言うと、全身を見られ、「そんな格好で大丈夫か」と聞かれた。
今の俺の格好は上下青のつなぎで、地球での清掃員の格好そのままだ。
「まぁ、大丈夫です」
と片言で喋ると、役所の人は鼻を鳴らして、地下水道の地図を渡してきた。

期限は9日で、出来るだけ多くのネズミこと「マスマスカル」という魔物を退治してくれとのこと。
報酬は1匹に付き、5ノットだそうだ。
100匹狩れば500ノット。
夢の賃貸生活に手が届きそうである。

早速、昨日清掃に行ったエルフの薬屋に行って殺鼠剤はないかと聞いてみた。
身振り手振り、絵も交えてカミーラ婆さんに聞くと、ネズミだけ殺す薬はないが、だいたいの魔物にダメージを与える薬はあるという。
あるだけ欲しいと言うと、100ノット請求された。
まけてくれと頼むと、たまに来て掃除してくれるなら10ノットでいいらしい。
一気に10分の1だ。
商売っけのない老婆を騙して、大きめの缶詰ほどの毒薬を手に入れた。
ちなみに、ここら辺で空いている部屋はないか聞いてみると、薬屋の2階が空いているそうだ。
掃除をすれば、住めるとのこと。
家賃は30日で150ノットにしてくれるという。
仮予約して、店を出る。
どうやら、カミーラには気に入られたようだ。

 宿に帰る前に、粗い小麦粉と水、はちみつなどを調達し、肉屋で捨てる魔物の血や脂をただで貰う。
 営業スマイルで果敢に攻めたのが功を奏したのか、ただ気味悪がられたのか、わからないが、肉屋の店主は桶にいっぱい血と脂をくれた。
 ギルドに行くと、さすがに冒険者たちから引かれ、裏手の井戸の方に回れと指示された。

 井戸の脇に布を敷き、そこで特製殺鼠剤を作成する。
 ホウ酸団子みたいなものだ。
 小麦粉と毒草で団子を作り、そこに魔物の血と脂で、臭いを整える。
 計100個ほど作ってみて、明日、威力を試すことに。
 まだまだ、材料は残してある。

 殺鼠団子を袋にしまい、ギルドの食堂でいつもの味のしない肉定食を食べ、今日は寝ることにした。
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