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第七話 その2
 「では、この日付に届ければよろしいのですね。
 …ああ、お代は届けに来るブラドに払ってくださいね。」

 愛想良くモンスター相手に接客を終わらせて、今日の営業を終わらせる。

 まあ、これで自分の店での仕事が終わったワケではない、これから注文を受けた商品の作成、すなわちワナをこれから作るのだ。

 ブラドに材料を運ばせて、ダロタが材料を呪われてないかチェックする。
 チェックを終えた材料をブラドがツボに放り込み二人がよく混ぜ込む。

 そして、それを見た自分は指輪を通して注文通りの品物を作る。

 作業量的に楽をしている様に見えるが、実はコレが一番重要な作業だ。

 一つを作るワケではないので、慎重にイメージを構築しながら意識を集中する。

 たまに雑念…、腹が減ったやら、あの客として入ったモンスターって、倒したら経験値がすげえ入るんじゃね?…など考えてしまうと放り込んだ材料を無駄にするだけではない。

 自分が黒コゲになってしまうからだ。

 まあ、どんな様かというと、この二人のモンスターが本気で心配するくらいだ。
 …まったく、良く生きてるよ。

 今回は上手くいったようで『ポンッ』と軽快な音と共に落下地点とテープを貼っているトコロにカラカラと、数量通りのスイッチが落ちてくる。 

 「ふ〜ん、上手くなったじゃない。」
 「まあ商品は、大してオレんトコと変わんねえ出来だな。」

 再度、ガタゴトと注文されたワナを作る為に材料を確認していると、カイリがそんな事を言ってきた。

 「なあ、それなのにどうして繁盛してるんだ?」
 「繁盛って、ですけど今日は客足が少なかったですから、そろそろ客が減って行くと思いますよ?」

 まあ、客足が少ない理由は今日ずっと店内で監視に近い見学していた。この魔王(2名)のおかげで本日の売り上げが通常の半分だったというのはあるのは…。

 「あら、どうしたのシュロ?」

 …黙っておく。

 「だけどよ。セリカに聞いたけど、実質2回しか営業をしていないのだろう。
 オレんトコの店なんか最初から客なんか来なかったんだよな。
 絶対、何か秘密があるハズだって。」

 『どうだ』と確信を突いたようにコッチを向くが、それが自分にとっては確信とはとても思えなかった。

 「そう言われましてもね…ああ、忘れてた。」
 「何かあるのか?」
 「違いますよ。ただ今日の帳簿を付け忘れてまして。」
 
 「そんなの付けてたの?」
 「もしセリカさんに報告する事があったりすると、いざ役に立ちますからね。」

 そういって帳簿を取り出し、ブラドから伝票を受け取り、その帳簿に数字を記入していると、魔王に挟まれた。

 「…で、何ですか二人とも?」

 「あら、見てるだけだけど?」
 「いや〜、帳簿の書き方に何かしら秘密があると思って…なあ?」

 『気にするな』を声をハモらせて言いなさる二人の魔王は、見ている事が作業の負担になる事を知らないのだろうか、まるで宿題をみる親のようにじっとみていた。

 「だけどさ、シュロ、そんな帳簿の書き方は良くないぞ。」
 「どうしてです。お父さん?」
 「何だ、それ?
 まあいいや、良くないってのはさ。この数字の書き方だよ。」

 そう言ってカイリは数字を指差すが、自分はそれが何故『間違い』なのかわからなかった。

 「いや、だからさ、この数字を元に戻さないといけないだろう?」
 「カイリ、あなた何言ってるの?」

 彼女もカイリの言っている事が解らないのだろう。
 『ちょっと見せてもらうわね』と、帳簿と伝票を重ね合わせて見ていた。

 「ホークマン 落とし穴 530、機械人形 スプリングフロア 180…。」

 セリカは、そう口ずさむように伝票を読み上げ、続いて帳簿をしばらく見て、2つを自分に返しながら言った。
 
 「…合ってるじゃない。」
 「合ってますよね?」

 「オレが言いたいのはさ、この落とし穴を530Gで売っているというワケないじゃないだろう、ケタを直せって事だよ。5,300,000Gにさ。」
 「えっ、530万Gって、冗談キツイですね。」

 「……。」
 明らかに驚きの表情を見せた魔王 カイリ。
 ホントに何かおかしいトコロがあったのだろう。 

 「お、お前、ホントに言ってるのか?」
 「はい、それが何か?」

 よほど自分の『おかしい』反応を見て、カイリはセリカに答えを求めた。

 「お、おい、セリカまさか…?」
 「まあ、そういう事になるわね。」

 セリカも普通に答えるが、カイリが聞こうとしている事が解っているのだろう。
 サラサラの長い金髪を弄りながら素っ気無く答えた。

 『マジかよ。』とカイリが自分の顔を見る。

 「カイリさん、もしかして…。」
 その一連の事で、自分でも何となく気付いた事を聞いた。

 「こんなに安く提供すれば、どおりでこの店が繁盛するはずだよな。」
 「やっぱりですか…。」
 「気付いてたのか?」
 「はい、何となくですが…。」

 気付けばそれは、この商売を始める前の話に遡る。

 自分が外にお金を持って出て行くと、色々疑われるからアイテムにしてほしいという話だったので、セリカが相場を決めておいたという話だったのだが…。

 セリカが決めた相場表を見ると、力の指輪やら、ドラゴンキラーなど高価なモノが目立ったのだ。

 「こんな高価なモノを、低い階層で拾えるワケがないですよ…。」

 そう言ってセリカには悪いと思ったが、自分でその相場表を書き換えたのだった。
 
 そしてその事が彼女の気分を害しただろうかと思い、セリカの方を見ると呆れながらこう言ったのだ。

 「…ホントにいいの?」

 その時の真の意味がここにあったのだ。


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