表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
こちら討伐クエスト斡旋窓口  作者: 岬キタル@鬼他
第三章【騎士団編】
30/82

狂信者 2

サブタイトル変更です。

前中後で終わりそうにないので、数字にしました。


GWなんて都市伝説組です。旅行行きたい。

「もういい。気にしていない」


「いや、女性に野郎だなんて! 本当にすまない」


 アリスが素っ気ない返事をするので、フランはまだ気まずそうにしている。

 彼女は本当に気にしていないと思う。多分、元からああいう話し方なのだ。

 仕切り直して、俺はソル達を紹介した。


「アリス・ルルーだ。冒険者をやっている。よろしく」


 アリスが自己紹介をして、俺達は駐屯地に向かって歩き始めた。

 俺はアリスにこれからどうするのか尋ねた。


「しばらくはギルドで金を稼ごうと思う」


 実家の母には手紙を出したそうだ。

 今日もいくつか簡単な依頼を受けて、とりあえずの宿代はあるらしい。

 これまでは、ニコルの借金を返す為稼いでいたが、今度は自分の為、母や村の為に依頼を受けるのだと、アリスは言った。

 アリスなら、ランクをすぐに上げられるだろう。


「そう言えば、ノアさんとアリスさんはどうしてあそこにいたんっスか? ノアさん、馬車降りてましたけど……」


 俺は、先程道であった事故の事、たまたまアリスと居合わせて、助けてもらった事をソル達に掻い摘んで話した。


「そんな事があったのか……。少し気になるな。商人の名前は分かるか?」


 ジェラードが俺達に聞いた。


「名前は分からない。確か、荷台に斧のマークが描いてあったような……」


「私も見た。二振りの斧が交差していたな」


 ジェラードは、何か思案した顔のままで頷いた。地元に詳しい人間なら、商人の特定も可能だろう。


「ま、ただの事故ならそれでいいんだが」



 しばらく雑談しつつ歩いて、俺達は駐屯地に到着した。


「今更なんだけど、騎士団に女性を入れても大丈夫なのか?」


「特にダメって言う規則は無いっス。騎士団の知り合いの人間なら、訓練場の出入りは平気っスよ」


「昔は女騎士もいたくらいだしな。団員の家の者も出入りするし、その辺は厳しくないんだ」


「まあ、兵舎に近づかなきゃ大丈夫だろ」


 ソル、ジェラード、フランが順に説明してくれた。訓練場に入ると、他の騎士や見習いと目が合う。



「お前達、やっと帰ってきたのか」


「「「隊長!」」」


「こんにちは、スミス隊長。彼らは俺に付き合ってくれていたんです」


 スミス隊長とは何度か話した事がある。

 いつも柔和な顔で、たまに顔を合わせると、声を掛けてくれる。ソル達見習いにも評判が良い。


「ああ、ノアくんの護衛か。ご苦労さん。見回り組の他の者達は帰ってきているのに、お前達だけ戻って来ないから、気になっていたんだ」


 ソルの肩をポンポン叩きながら、スミス隊長は笑って言った。


「い、いた……!」


 ソルは少し肩を庇うようにして、後ろに下がった。


「そんな強く叩いてないぞ?」


「あ、いえ。少し痛めたみたいで。大丈夫っス!」


 スミス隊長が驚いた顔をした。

 俺も驚いた。本当に大丈夫なのか?


「ならいいが。さて、お隣の方は見ない顔だけど、どなたかな?」


「彼女はアリス。俺の知り合いです。騎士団の訓練を見たいと言うので、連れて来ました」


 見学させてくれと言うと、スミス隊長は快く受け入れてくれた。


「なんなら、少し訓練に混ざるかい? 丁度、何人かで立ち会いをする所だったんだ」


 アリスは無言でコクコクと頷いた。彼女なりに喜んでいるらしい。


 剣先の潰してある剣を持ち、スミス隊長の元に十人程度が集まって来た。


「フラン、アリスと組んで。ソルは今日は見学だ」


 スミス隊長が指示を出す。

 ジェラードは同じ見習いを見つけてすでにペアを作っていた。


「フラン、頑張れ」


 アリスのソロランクA相当の実力を知っているので、俺は心の中でフランにエールを送った。



「始め!」



 スミス隊長の掛け声で、それぞれが剣を振りかざす。

 鋼のぶつかり合う高い音が響く。

 フランは普段、明るくノリのいい性格である。

 しかし、剣を持つと全くと言っていい程、雰囲気が変わる。

 アウロラ流という貴族が好んで学ぶ流派。その優雅な型をお手本の様に使いこなす。

 対して、アリスは特にこれといった型を学んで来た訳ではない。

 父親が冒険者だった時に学んだ我流の太刀筋を元に、さらに実戦で半年間磨きを掛けた戦士の戦い方だ。


 最初は、フランの繰り出す隙の無い剣に翻弄されていたアリスだが、その内タイミングを掴んだのか、一気に勝負に出た。素晴らしいスピードでフランの剣を捌き、絡め取る様に下に払い落とすと、体勢が崩れたフランに一瞬で詰め寄り、首元に剣を突き付けた。


「参った。強いな、アリス」


「フランの剣は美しいな。勉強になった」


 両手を上げて、フランが負けを認めた。

 どちらも全く違う戦い方で、見ていてとても格好良かった。

 フランの美しい剣も凄いが、アリスの対応力がずば抜けていた。




「おいおい、見習いが女冒険者に負けているぞ」


 マロース・フロスト。

 例のナンバースリーが、取り巻きと共に現れた。

 なんとも高飛車な物の言い方だ。


「もうすぐ騎士になるんだろう? 騎士団の恥を晒すなよ」


「手加減でもしてやったのか?」


 取り巻きが口々に勝手な事を言うと、他のやつらも馬鹿にした様に笑った。

 フランが弱いんじゃない。アリスを馬鹿にするな。

 そう言いたいが、戦っているのは俺ではない。


「ならば、騎士の強さをご教授願おう」


 アリスは声を荒げるでもなく、マロース達に向かって言った。

 他の団員もそれぞれ決着が付いたようで、スミス隊長がこちらにやって来た。

 止めようとする隊長を手で制したマロースは、取り巻きの一人の名を呼ぶ。


「ハンス、行け」


 アリスとハンスが向かい合う。

 ハンスが腰の剣を抜いた。真剣だ。


「待て! 真剣はダメだ!」


「私は構わない」


 スミス隊長が止めようとするが、アリスが平気な顔でそう言った。

 その一言でマロースサイドから強い視線がバシバシ飛んでくる。

 本人にその気が無くても、すごく挑発的に聞こえる言葉だった。


「始めろ」


 マロースが開始の合図を出す。

 両者が静かに向かい合い、半時計周りにゆっくりと回る。

 先に動いたのはハンスだ。

 力強く足を踏み出し、間合いを詰めに掛かると、素早い振りで剣を横にないだ。

 その瞬間、アリスは消えて見えた。

 大きく前に出たハンスの左横に、突然現れたアリスの剣先が、彼の首にピタリと向いていた。

 斜め右に飛び上がる様にしてハンスの剣を避けたアリスは、一閃、フェンシングのように剣を突き出したのだ。

 完全に相手の動きを予測したとしか思えない。


「っな……!」


 ハンスは勿論の事、マロースと取り巻き達も驚きに目を見開いている。

 凍り付いた空気を壊したのは、バルドの快活な声だった。


「おう、面白そうな事やってんじゃねぇの」


 バルドは試合を見ていた団員の輪を越えてアリスに近付くと、ニカッと笑って言った。


「俺は副団長のバルドだ。良かったら相手してくれるか?」


 アリスはまた頷いた。

 

 バルドとアリスの試合は本当に凄まじかった。

 両者とも目で負えないくらいのスピードで何合も打ち合い続けた。

 バルドは見た目から、もっと力業を得意とすると思っていたが、繊細な剣捌きでアリスの素早さに対応していた。

 その内、アリスの眉間にシワが寄りだした。額に汗が滲む。

 本人達にしか分からない力の均衡が、少しずつ崩れ出しているのだろう。

 とうとうアリスの剣が宙に弾かれた。



2015/01/11 修正

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ