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こちら討伐クエスト斡旋窓口  作者: 岬キタル@鬼他
第三章【騎士団編】
29/82

狂信者 1

以前からご指摘受けていました字下げや「…。」について、先日まとめて修正しました。

また誤字脱字等ありましたら、ご指摘下さい。


ちょっと短いんですが……次話早めにアップします。


 俺は仕事終わりに馬車に揺られ、騎士団の駐屯地に向かっていたが、急に馬車が止まった。……あれ、まだ着いてないよな。


「トムさん、どうしたんですか?」


「ああ、商隊の荷物で道が塞がっていてね」


 トムさんは、シュテルン家専属の御者だ。いつも俺の送り迎えをしてくれている。

 俺は小窓から顔を出して、前方を確認した。

 荷物が横倒しになっていて、しばらく通れそうも無い。

 トムさんは、回り道をする為に馬首を方向転換させようとしたが、すぐ後ろに別の馬車が詰めてきしまった。

 その時、馬が突然暴れ出した。


「どう、どう! こら、落ち着け!」


「うわ、わ、わ」


 荷台が激しく揺れ、俺は荷台の床にへばりついた。

 トムさんがなだめているが、馬は言う事をきかない。


「あ、君! 危ないから下がって!」


「大丈夫だ! よしよし、落ち着け!」


 聞いた事のある声が響き、しばらくして馬は落ち着きを取り戻した。俺は馬車を降りて、声の主を確認する。


「やっぱり、アリスさん!」


「ノアじゃないか。大丈夫だったか?」


 俺は頷いた。

 なぜ彼女がここに?

 あの事件の後、とにかく一度実家に戻ると言っていたはずなのに。


「お知り合いの冒険者ですか? いや、助かりました」


 俺は馬車の中で何があったのか分からなかったので、トムさんが説明してくれた。

 足元に突然何かが転がって来て、馬は驚いてしまったようだ。

 トムさんが馬をなだめ様としていた所に、アリスさんが来て、あっという間に大人しくさせてしまったらしい。


「そうだったんですか。アリスさん、ありがとうございました」


「馬の世話は昔からしていたから、大した事じゃない。それよりノア、私の事はアリスと呼んでくれ」


「はい、分かりました」


「かしこまった話し方も止めてくれないか? 私の方こそ、君に返しきれない恩がある」


 あれは俺だけの力で解決した訳ではないし、最終的に頑張ったのは彼女である。そう伝えたが、アリスの言い分は変わらなかった。

 結構頑固だよな。


「これが転がって来たみたいだ」


 アリスが馬の足元から拾い上げたのは、商隊の積み荷の一部のようだった。


「先程積み荷が崩れた時、私もすぐ側にいたんだ。危うく下敷きになる所だった」


 危ないな。

 きっと、持ち前の反射神経で回避したに違いない。無事で何よりだ。

 しかし、何で突然荷物が転がって来たんだ?

 荷物を取りに来た商人の部下が、申し訳なさそうに頭を下げた。

 商品を放り投げたりはしない。しかし、確かに自分達の荷物であるし、道を塞いでしまった事も重ねて申し訳ないと謝られた。

 アリスさんが事故に巻き込まれかけた後、商人から話を聞いたそうだが、詳しい事は分からなかった。

 積み荷を縛る紐は、強度や緩みを何度も確認しているはずなのだが、と本人達も首を傾げていたと言う。


「悪い人達では無いみたいなんだけどなぁ」


「ああ。その時も、とても丁寧に謝ってもらったよ」



 特に怪我人はいなかったようだ。

 俺はアリスに、何となく王都にいる理由を聞いてみた。


「実は、旅費を盗られてな。一文無しになったんだ」


「盗られたって、一体どうして?」


 アリスは旅の準備を整え、門に向かっていた。

 彼女は道端に倒れ込んだ少女に気をとられ、手持ちの荷物を地面に置いて介抱に向かったらしい。

 その隙に荷物を足の速い少年に盗まれたと話した。


「その倒れていた少女もグルだったよ。追いかける気にならなくて、諦めたんだ」


 幸い、ギルドカードや必要最低限大事な物は身に付けていたらしいが、現金化していた旅費や消耗品を失ったそうだ。

 何というか、運が悪い。

 弟を亡くしたり、詐欺にあったり、旅費を盗まれて帰れなくなったり。


「人が善いと言うか、不運と言うか……」


 苦笑いした俺に、少し恥ずかしそうな、諦めたような顔でアリスさんは言った。


「昔からよく言われる」



 そうこう話している内に、とりあえず積み荷は道の脇に寄せられ、馬車が通れる道が出来た。


「あれ、ノアじゃん!」


「ノアさん、こんにちはっス!」

 後ろから声を掛けてきたのは、いつもの見習い三人組だった。見回りからの帰りらしい。

 彼らがいるなら、歩いて駐屯地まで向かおう。アリスも騎士団を見学してみたいと言う。

 俺はトムさんに、先に行って下さいと頼んだ。

 フランが早速アリスに声を掛けている。というか、挨拶もそこそこに肩に手を回して、叩き落とされた。


「馴れ馴れしい」


「何だよ堅い野郎だな。ノアの友達なら俺の友達だろ?」


「フラン、アリスは女性だ!」


 そう言うと、フランだけで無く、他の二人も驚いていた。

 確かに顔は中性的だし、旅装束で体のラインは見えないが。

 一度知ると女性にしか見えないので忘れそうになるが、半年の間、誰にも女性である事を悟られなかったのだ。パッと見た感じだけだと、彼女は男性の冒険者に見える様だ。

 謝り倒すフランと、気にするなと言うアリスを連れて、俺達は駐屯地に向かって歩き出した。


2015/01/11 修正

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