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こちら討伐クエスト斡旋窓口  作者: 岬キタル@鬼他
第二章【転換期編】
17/82

伯爵からの手紙

刻印について


僕の書き方が悪かったので、刻印について色々感想頂きました。

主人公の場合、精霊に関する事=刻印です。

今度書き足します。


 昨日は飲み過ぎた。

 目が覚めると、太陽は大分高く昇っていた。今日の仕事は休みだ。

 頭は痛くないが、若干体が重いな。

 久しぶりに、街で買い物でもしようか。魔法ギルドの図書館を利用するのも良いな。

 少しだけ、鑑定所に顔を出そう。最近あまり顔を合わせていないし。


「あ、ノアさん。こんにちは」


「や、ユージン」


 鑑定所の事務室の扉は、開け放たれていた。

 ムッスは昼飯に行って席を外していたが、もうすぐ帰ってくるらしいので、ここで待つ事にした。

 ユージンが、実物と資料を見比べながら、アイテムの特徴の把握に努めている。


「ノアさん、今度一緒に露店を回りませんか?」


「いいよ。ユージンは勉強熱心だな」


 露天には、掘り出し物のアイテムが稀にある。

 胡散臭い物や、ガラクタの中から本物を見つけ出すのは良い訓練になる。

 鑑定士の目を鍛えるには、やはり実物を多く見るのが一番だからな。

 俺は資料と睨めっこするユージンに、見分け方のコツや、間違えやすい似たアイテムについてアドバイスした。

 しばらくして、ムッスが帰ってきた。


「あー! ノアさんここにいたんですか!」


「いきなりなんだよ。どうした?」


 パタパタと走ってこちらに駆け寄ってくると、ムッスが手紙を俺に押し付けてきた。


「支部長から預かって来たんです。ノアさんに手紙が届いたからって」


 昼食に食堂を利用するついでに、宿舎の俺の部屋まで行ったらしい。

 そしたらもぬけの殻だったと。


「ありがとう。でもそんな急がなくてもいいだろう?」


「送り主を見て下さいよ!」


 俺は改めて、渡された手紙を見た。


「あ、おじさんからか……」


「伯爵様からの手紙ですよ! そりゃあ急ぎます!」


 ムッスは何だか興奮している。伯爵の手紙に触れたのが嬉しいらしい。

 蜜蝋で封をされたそこには、エセックス伯爵の指輪の紋章跡が押してある。

 それにしても、手紙なんて久しぶりだな。

 手紙の封には魔法が使われている。解除キーは、今回は俺の魔力だ。

 事前に指輪に触れて魔力を登録、認識させてある。無理やり他人が開けようとすれば、燃えてしまう。便利だよな。


「解除」


 蜜蝋に触れて少し魔力を込めると、中の羊皮紙を取り出す。


「あー……」


 サッと読んで固まった俺をムッスとユージンが不思議そうな顔をして見てきた。


「悪い、ユージン。しばらく一緒に出かけられないかも」


 おじさんからの手紙には、久しぶりに城に来いと書いてあった。

 出不精と言うか、旅嫌いな俺が嫌がるのを見越して、迎え(護衛)を寄越すとも書いてある。

 更に支部長には許可を取ったとか。さすがおじさん。やる事に無駄がない。行くしかないじゃないか。

 

 迎えって、一体誰なんだ?

 答えはすぐに出た。


 職員に呼ばれ、ギルド正面入り口に向かう。何だか騒がしい。


「ノア」


「ナイジェル……?」


 なんでナイジェルがここに?

 だって、彼はもうただの傭兵じゃない。

 「フィンブルの一年」の時の功績が認められ、おじさんに忠誠を誓い、獣人ながら騎士の位を手に入れた。

 今は城で獣人達をまとめ、隊長をしている筈。

 驚いた。

 ナイジェルはゆっくりこちらに歩いてくる。

 ライカンスロープのナイジェルはすごく大きい。その額には、大きな傷跡。

 「フィンブルの一年」の時に負った傷だ。他にも沢山の傷が体に刻み込まれている。


「どうした? 元気だったか? 風邪は引いてないか?」


「ちょ、ちょっと! 大丈夫だって! 元気だよ!」



 恥ずかしい!

 ナイジェルにとって俺は、何時までも小さい頃のイメージから卒業出来ていないみたいだ。

 一番最初に会った時、俺は寝込んでいた。

 何週間もそのままで、その後も体が普通に戻るまで、ずっと看病してくれていたのだ。

 そのせいか、とても過保護になってしまった。

 俺は年の離れた弟みたいなもんで、確かにそんな感じで世話になったけど。


 想像してみて欲しい。

 二メートル近い厳つい戦士のライカンスロープの男が、満面の笑みを浮かべながら母親みたいなセリフを言っている様を。


 兎に角、何時までもギルドのエントランスで話すのはやめよう。

 俺はナイジェルを引っ張って、ギルドを出る。適当な酒場に入り、話しを聞いた。


「ナイジェルが迎え?」


「ああ、そうだ。他にもいるけどな」


 王都の騎士団と、伯爵の騎士団で合同演習をするらしい。

 その迎えに、ナイジェルと数名で王都まで来たそうだ。今は王都の騎士団と合流して、エセックスの城に戻る途中だ。

 ナイジェルは、その帰りに俺を連れて来るよう言われたと話した。


『旅は安全なものになる』


 手紙の最後にそう書いてあったのが、頭を過ぎった。


 騎士団一行は、物資の調達に今日一日、街に留まる。

 ナイジェルに、明日の朝には出発するぞと告げられた俺は、急いで準備を始めた。騎士団に囲まれて馬車での旅だ。

 ここからエセックスの城までは、八日程だろうか。比較的安全だと思う。

 もしモンスターに襲われたとしても、跳ね除ける位の力をナイジェルは持っている。騎士団の実力は知らないが。


 予想外の事が起こらない様、精霊に教えてもらいながら進ませてもらおう。

 俺はブレスレットを指で触りながら、ギルドの宿舎で眠りについた。



2015/01/10 修正

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