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彼と獣人

※第三者視点です。


閑話二つ挟んで、次章に入ります。

あらすじとタグも整理します。

反応が気になりますが、全体の雰囲気が崩れない程度に第三者視点を入れていきたいと思います。

 今日もギルドは様々な種族で賑わっている。

 窓口に座るのは、濃紺の髪の若い男性だ。

 列をよく見れば、種族の比率には獣人が多いのが分かる。

 獣人は人族に比べると、社会的地位が低い。

 その命は軽く見られがちで、生活も豊かでは無い。

 そんな獣人達から、窓口の彼は慕われていた。

 彼の一言は、彼が思っているより周りに影響を及ぼしていたが、本人はその事を知らない。

 

 獣人はひと昔前まで、奴隷のような扱いを受けていた。

 前回の暗黒期に入る前に比べれば、今はましになった方である。

 そうなるまでには長い歴史があるが、獣人達はひとつの文明が長く発展しなかったので、記録は人族の残した書物から紐解く他ない。

 獣人は、様々な分野に特化している。それぞれが個性的な発展を遂げ、人族の様にまとまった集団にはなれなかった。異種格闘、本気縄張り争いである。


 人族は獣人の様に力が強くなかったが、長い文明を維持し、強固な社会基盤を作り上げ、経済を発展させた。

 徐々に生活圏を伸ばし、縄張り争いに明け暮れる獣人をよそに、どんどん数を増やしていった。

 いつの間にか、力有る獣人を人族が雇用する社会の仕組みが出来上がっていた。

 社会に溶け込もうとすると、どうしても人族の作ったルールに縛られるが、それでも豊さを求めた獣人は数多くいた。

 その仕組みが見直されたのは、長い歴史から言うと最近である。


 今から五年程前、魔物が大量発生し、街に押しかけた。

 これをこの世界では、暗黒期と言う。

 暗黒期はこれまで幾度も繰り返されており、その度に人々は国をこえて団結し、自らの土地を守ってきたのだ。

 五年前の暗黒期は特に酷かった。

 毎日毎日、魔物に脅かされ、戦いの日々が続いた。

 『フィンブルの一年』と呼ばれ、今でもその時の被害の爪痕が残っている。


 その時、エセックス辺境伯が、獣人をまとめ上げ、その英知と勇気を持って、長い長い暗黒期を終わらせた。

 そして彼は、獅子王と呼ばれるようになったのだ。


 エセックス伯爵のお陰で、獣人の存在が見直され、差別的だった人族も減ってきたように見える。

 しかし、根強い差別は中々無くならないものだ。

 そんな世界で、このエセックスの名を頂くギルド職員の窓口係は、獣人達にとって特別な存在であった。

 血の繋がりが無いのは、皆が知っている。

 本人がエセックス伯の身内だと必要以上に畏まられたり、騒がれるのを嫌っているのも知っている。

 しかし、噂は止められないものである。

 彼は英雄の身内だという事を偉ぶりもせず、獣人であろうと無かろうと、利用者に平等に接する。


 実際の所は、誰にでも笑顔で丁寧なのは、生まれ変わっても日本人気質が抜けないせいである。また、ライカンスロープのナイジェルをはじめ、多種族に囲まれた城での生活で、獣人に対するの差別の意識など無く育った事も関係しているが、そんな事はギルド利用者達は知らない。

 彼は普通の優しさを持ち、平凡なギルド職員であろうとした。しかし、自分が思っているよりも普通では無かったのだ。

 獣人だからと足元をみられ、商業ギルドにアイテムを安く買い叩かれていた者を救った事もある。

 多種族混合のパーティーは、種族の違いから喧嘩が耐えない。

 彼は多様な種族の特性を知っており、気軽に相談に乗って、いくつもパーティー解散の危機を防いでいる。

 彼の「鑑定士」の本当のスキルを知る由もないので、誰も真実を知らない。しかし、彼の助言によって、才能を開花した者がたくさんいる。

 同じギルド職員のムッスも、その内のひとりである。


 一年前まで、ただの獣人の小娘だったムッスが、スキルを身に付けて、ギルドの正職員として働いているのだ。

 実力主義はエセックス辺境伯と同じなのだと、獣人達はそう思っていく。

 獣人達は彼の名前を聞き、まず特別視する。そして実際に彼の仕事振りや態度に触れて、ますます好感度が上がる。

 トドメにギルド利用者の先輩達から、実話に基づいた彼の噂を聞き、尊敬の念で彼を見るようになる。

 年下の者は兄貴のように慕い、長い付き合いの者は良くできた弟を可愛がるように接する。

 たまに現れる騎士崩れのアホを蹴散らす彼を見て、良くやってくれた! と内心拍手喝采しているし、窓口だからと彼を馬鹿にする奴がいれば、キッチリ話しをつけに行くのだ。


 勿論騒がれるのが嫌いな彼の為に、表沙汰になるようにはしない。


 毎日命を掛けている自分達の事を誰より真面目に考えてくれている。

 獣人達は本気でそう思っていた。


 今日はどうやら彼を散々馬鹿にして、手を出したものがいるらしい。

 立場の弱さを補う為、獣人達は、独自のネットワークを持っている。

 その不快な二人組の噂はすぐに広まり、エセックスの名を持つ彼を守る為、獣人達は密かに行動を開始するのだ。



2015/01/10 修正

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