表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
こちら討伐クエスト斡旋窓口  作者: 岬キタル@鬼他
第一章【異世界の日常編】
10/82

俺の同僚

10,000PV突破しました!

初連載なので比べようもないんですが、読んで頂けて嬉しいです。



 アルフォンスさん達が駆除したゴブリンは、巣穴にたんまりとガラクタを溜め込んでいたようだ。

 しかし、一見するとガラクタの山の中に、稀にマジックアイテムが混ざっている事がある。

 殆どは屑鉄扱いの刃こぼれした剣や、綺麗なだけの石だ。

 それでも、屑鉄も綺麗なだけの石も、鍛冶屋に原材料として買い取ってもらえば、お金になる。

 依頼分の報酬は、一旦依頼者からギルドが預かり、ギルドから契約者に支払われる。

 討伐の報酬金は、ギルド、ひいては五大国から捻出されている。

 それ以外のアイテムについては、フリーである。

 レアなマジックアイテムであれば、自分のものに出来るのは旨味だが、必要ないものに関しても手に入れた者が捌かなければならない。

 冒険者やベテランの傭兵なんかは、各自で売りさばくルートを持っている者もいる。


 しかし皆が皆、ルートを確保できる訳ではないし、量が多ければ、ひとつにまとめて引き取って貰う訳にもいかない。

 商業ギルドに持って行って、安く買い叩かれる者もいたとか。

 こうした契約外のアイテムについて、頼まれれば鑑定所が仲介する場合がある。

 今回は量が多いので、アルフォンスさん達の意向もあり、ギルドが仲介する事になった。

 ボランティアではないので、ちゃんと仲介料はもらう。

 それでも利益の出るアイテム数なのでお互い得がある。


「これと、これ。あとこれも。マジックアイテムだな」


「待って、待って下さい! 先輩速すぎます!」


 チェックが追いつかないと怒られた。


「ダメだ。俺、全然分かんない」


「うーん、これがマジックアイテムなのは分かるんだけど」


 ムッスがチュンチュン言ってる後ろから、ゴブリンの討伐部位のカウントを終えた新人二人がやって来た。

 全然分かってないやつは、バイトみたいなもんで、まだ見習いである。傭兵だったが、足を悪くして困っていた所を俺が誘った。

 名前はユージン。まだまだ経験不足だが、コイツの勘はかなり鋭い。「危険察知」のスキル持ちで、呪われたアイテムなんかは、誰より早く分かる。触るな危険。

 マジックアイテムの見極めまでは出来る方が、有名な武器商人の娘で名前はマリー。彼女は父に認められる為に、親元を離れて修行中らしい。

 ユージンと同じく見習いだが目が肥えている。スキルが発現するまでもう少しといった所か。


 見習い達がマジックアイテムを別グループに分ける。

 見習い二人とムッスは、一緒にレア度について検討を行い、最後に俺が答え合わせをして、ゴブリンのガラクタについては鑑定が終わった。


 残るはワームだ。ワームの討伐部位は既にアルフォンスさん達が捌いてくれていた。

 ワームは手足が短く、蛇のような体型をしている。

 細長い図体が三枚卸しにされて、馬鹿でかい鰻みたいだ。久しぶりに鰻の蒲焼き食いたいな。

 しかし、竜種の鱗をものともせずに切り裂くとは、一体どんな切れ味なんだ、あの双剣。討伐部位の剥ぎ取りに手間取るだろうと思っていたが、割と早く結果が出そうだな。


 モンスターの討伐部位は規定があるので、それに沿って報酬が決められていく。

 重さや大きさもマニュアル化されているので、簡単である。

 アルフォンスさんとソフィアさん立ち会いの下、鑑定を済ませて結果と報酬についてリストを見ながら話し合う。

 引き取りたいものがあれば、リストから除外したりする。

 お互い納得の上で、サインの代わりに、ギルドカードに総合的な報酬額を焼き付ける。

直接的な金銭のやり取りは此処ではしない。

 ギルドカードと提携している銀行へ行けば、引き落とせる仕組みになっている。

 クレジットカードみたいなもので、大変便利だ。


「ありがとう。他の支部にも行った事あるけど、この支部はとっても親切だね」


「そうですか? 他をよく知らないので比べようがないですが、今日は暇だったので」


 こちらも見習い達の為に多少丁寧にやって時間を掛けさせて貰ったが、余所はそんなに違うのだろうか?


「残念ながら、わざとレアアイテムを見逃して、ご自分の物にしようとした方がいらっしゃいましたの」


 ソフィアさんがフードの下から困った顔で言った。

 そんな事をしても、パーティーの中にスキル持ちや、目利きがいればすぐ不正だと指摘されるだろうに。

 マリーのように、レアアイテムを見慣れた人間なら、それに価値があるとすぐ分かる。

 「鑑定士」のスキル持ちはあくまで補助だ。スキルのレベルが高ければ、アイテムのレア度が一発で分かるし、人によったら製造者や造られた時期、原材料も分かる。だからこそ、スキル持ちは信用度が高い。

 アイテム鑑定所の査定をする職員は、鑑定士のスキル持ちを必ず一人は常駐させる。

 不正をしたやつは、きっと取り返せない程の信用を失っただろう。


「そんな事をしても、どちらも損をするだけなのに」


 俺は独り呟いた。

 そいつのせいで、ギルドの信用まで落ちるのだ。


「そうだね。だから、しばらくはこちらの支部を利用する事にしたよ」


 アルフォンスさんはにこやかに言った。


「どうぞご贔屓に、よろしくお願い致します」


 俺がアルフォンスさんとがっちり握手をしていると、他の利用者が査定にやって来た。


「あれー? ユージンじゃん。何してんのこんな所で」


「うわ、本当だ。まだ傭兵やってんのかよ。早く諦めろよ。死ぬぜ?」


 不快な笑い声が響く。

 ユージンはなるべく目を合わない様に言った。


「俺、今ギルド職員の見習いやってるから」


 彼らはユージンと昔パーティーを組んでいた。スキル持ちのユージンを利用するだけ利用して、怪我をして使いものにならなくなったら放り出したのだ。

 確か同じ村の出身だった筈だ。


「はぁ? 学もなんも無いお前がー?」


「なら俺もなるわ。死ななくてすむしな!」


 なれるかアホ!

 ユージンは黙って、彼らが乱暴に置いた査定品を仕分けしている。

 その間もアホ共は、ユージンを馬鹿にするのをやめない。

 詳しい状況は知らないが、ユージンはこいつらを庇って足を怪我したんだろう。で、なければ「危険察知」を使えるユージンが致命的な怪我を真っ先に受けるとは思えない。


「ムッス、早く終わらせよう」


「は、はい!」


 いつまでも聞いてるのは気分が悪い。酷い空気に固まっているムッスに声を掛けて促す。


「あんた、窓口の人間じゃん。良いよなーあんた。あそこに座って適当に仕事してりゃ食えるんだから」


 二人してゲラゲラ笑っているけど、無視だ無視。ギルドを利用しているクセに見下しているものは未だにいる。


「ノアさんを馬鹿にするな!」


 無視だって。

 こういう奴らは、こちらが反応すればする程うるさくなるのだから。


「はぁ? なんだこいつ」


「まじうるせぇ。お客様に対してその態度は無いんじゃねぇの?」


 確かに利用者はお客様とも呼べるかもしれないが、ギルドと利用者は対等な立場な筈なんだが。

 後から文句言われるのも面倒なので、頭を下げる。


「申し訳ありません」


「ノアさん!」


 俺は声を上げるユージンを手で制する。まあ、落ち着けって。

 査定が終わり、ムッスがリストを持ってくる。

 しかし、今度は査定額にいちゃもんを付けてた。

 リストとアイテムを見比べるが、間違いは無い。

 アホ共がムッスを突き飛ばそうとしたので、間に入る。


「彼女はスキル持ちです。鑑定に間違いはありません。」


「窓口は引っ込んでろよ」


 俺は笑った。

 アホ共が胸ぐらを掴んで来たが、動じない。


「確かに、私はただの窓口係です」


「は、ビビったか」


 嘲るアホ共を見据えて、俺は笑顔を崩さない。


「ですから、あなた達が受けた依頼先で何があっても知りません」


「「ああ?」」


「レッドベアーを狩りに森に入った先で、サーペントに襲われたとしても、ゴブリンを駆除しに行った帰りに、ワームに鉢合わせしたとしても」


 胸ぐらを掴む手に、魔力を込めた俺の手が重なり、バチリと音を立てて弾かれる。


「いっ、痛ってぇ!」


「お前……!」


「明日の天気や、持っていくべき装備、遭遇した事の無いモンスターの攻撃パターンの予備知識。どれも必要無いですよね?」


 ギルドの周りに、いや、俺の周りに風が強く吹いた。

 精霊が俺の魔力に反応して、心配してくれたらしい。

 さっきまでの勢いはどこへやら、後退るアホ共に一歩近づいて言った。


「私はただの窓口です。モンスターの危険性を一番お分かりになられているのは、あなた方ですものね?」


 アホ共はムッスの監査額通りの報酬を受け取ると、すごすご帰っていった。

 ユージンが謝って来たが、気にするなと背中を強めに叩いておく。

 アルフォンスさんとソフィアさんが歩み寄ってくる。

 少し離れた所で、こちらの様子を心配してくれていたのは分かっていた。


「酷くなるようなら、と思っていたけれど。必要なかったみたいだ」


「お騒がせ致しました」


 ソフィアさんが、初めて会った時のように、じっとこちらを見ているが、目が会うと笑って何でもないと言われた。気になる。

 しばらく雑談をして、アルフォンスさん達と別れた。しばらくこの街にいるから、と宿の名を言って、何かあったら訪ねてくれとも言ってくれた。

 全く、とんだ昼休みだ。



2015/01/10 修正

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ