17話:休日と評価と訓練と炎
お袋来襲から早2ヶ月たった。
とりあえず、手紙は40通を超えた。
何を書くかかなり困ったが、日常の事をつらつらと書いて送ったら大変満足してたようだ。
なんで解るかって? ジーンさん経由で知ったんだよ!!
ジーンさんもアルフォードもお袋と親父経由で俺の事を知り尽くしてるんだ!!
ある意味、怖い。怖すぎる。
「今月は12通送ったんですね、しかし、あの事件の事を書かないのはどうかと。私の方で補足しておきました」とか言われるんだ。
秘密も何もあったもんじゃない。
まあ、重要な秘密はちゃんと隠されてるが、それでも、ねえ?
ジーンさんはジーンさんで色々とお袋にモノを送ってるみたいだし。
アルフォードは何でか知らんが、筋肉が増した。
アルフォードはあれだ、親父の筋肉に憧れているらしい。
フンッ、って掛け声で服が吹き飛ぶアレだ。
お前は服何着破けば気がすむのよ。それにその吹き飛ぶ事にどんな様式美があるのよ、お前は脳筋ってワケじゃないのに、行動だけ見てると本当脳筋にしか見えないってどうなのよ。
そんなアルフォードの希望もあり、俺は休日に手合わせをしている。
平日は自主鍛練、体造りは略終わっていると思ったが、これに終わりは無いのだそうな。
あと、型の確認と更なる熟練を目指している。
そして休日になるとアルフォードを誘って訓練室を借り、手合わせ。
今の所20戦12勝3敗5分。
さすがに俺だ、アルフォードも強い事は強いのだが、正統派の武術を習っていたかどうかと言うのは大きい。
力は強いのだが、俺の体術は基本柔術なのでむしろ合わせやすいのだ。
当初は俺とアルフォードだけだったんだが、一ヶ月も経てばどこからか話を聞いた人が沢山参加してきた。
現在は総勢30名ほどで手合わせしている。
15:15で別けてやったり、トーナメント形式にしてみたり色々だ。
これには上級生だけではなく、教官の一部の人も参加している。
まあ、一部はお目付け役なのだとは思うが、いつの間にか巻き込まれている。
てか巻き込んだ。
変人、変人と言われる割には何故か人が寄ってくるこの不思議。
ジーンに言わせれば
「貴方は、そう、眩しいんですよ。誰もがそう在りたいと願う、そんなある種の理想の姿を体現していますから」
らしい。
俺は良く解らないが、皆変人になりたいって事ですね!!
そう言ったら、アルフォードには笑われ、ジーンさんには溜息を付かれた。
凄く、不満です。
でもしゃーねーじゃん。俺は良く解らん、俺は俺のしたい事をしているだけなんだが。
「お前はそれでいいぜ。呆れるほど自由奔放に駆け回れ、障害があるなら俺が壊してやる、敵がいるなら俺が殺してやる、お前はただ自由に在れ」
これはアルフォード。
でも、まあ
「障害があるなら飛び越える、敵がいるならシカトする、自由ってのは行動に縛られないって事だろ。俺とつるむならお前も自由で在れ、アルフォード」
ははは、それが出来たらな。
アルフォードらしからぬ、どこか達観した笑みでそんな事を言われた。
アルフォードは頭が良い。
外見は本当脳筋なんだが、こいつは頭が良い。
ジーンには及ばないが、それでも十分すぎる。
4ヶ月で錬金術の基本をマスターする脳筋がどこに居る。
4ヶ月で国家資格を取れと薦められる奴がどれほど居る。
まあ、まだ短い付き合いだ、込み入った事を聞くのは憚られる。
あいつが話したくなったら話してくれるだろう。
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ともあれだ、今日も今日とて俺他多数の生徒と組み手をする。
いつの頃からか、ジーンとルールールーが見学に来るようになったので怪我とかは気にしなくなった。
「アルフォード、今日はどうするね」
「さてな、俺としてはパンツ一丁にコート着て校舎を走り回れっての以外ならなんでも来いだ」
「あーあれはね、違うのよ。俺だけ変態扱いされるのは寂しいだろ? だからほら同胞を作ろうかと」
「おまっ、筋肉モリモリの男12人があの姿で走り回ってる姿を想像してみろ。地獄だろーが」
「……もう、言わないヨ?」
解るだろうが、負けた側の罰ゲームだ。
しかしまあ、あれは正に地獄だった。
提案した俺も青褪めるような変態集団だった。
幸い休日だった事もあり、目撃者は少数だったが、ちょっとしたトラウマになった子もいるんじゃないだろうか。
「頼むぞ……アレが癖になった馬鹿も居るからな」
「マジで!?」
「ああ、2回生のB班班長だったか。夜な夜なコート着て街に出てるらしいが……」
「うわぁ」
それはマズイ。
今度血祭りにあげておこう。
我が業、かくも深き物であったか……
「ご心配には及びません」
「ん? 何故」
「私とミリアリアで罰して置きましたので」
「え?」
「おそらく近日中にでも警邏にしょっぴかれると思います」
……何やったんだ。
「ああ、お前等派手にやらかしたらしいな」
「シグルドほどではありあませんが、程ほどに」
「え? ちょっとアルフォードさん。何があったか知ってんの?」
「まあな。割と有名だが」
アルフォードはチラリとジーンを見る。
ジーンは目を瞑って知らぬ顔をしている。
「まあ、あれだ。その変態を昼の衆人観衆の中でお披露目させたらしい」
「……どうやってだよ」
「そこまでは知らんが、もう可哀想になるくらいにリンチされたらしいぞ」
さもあろうよ。
町人が許さんだろう。
しかし、どうやってそんな変態行為を昼行わせたのか……悪魔の頭脳だなあ。
「まあ、いいや」
「いいのかよ」
「いいだろ。素質のある奴ってのはいつか発症するもんだ、俺等が対処出来る環境で発症したんだから儲け物だと思っておこう」
「…そんなもんか」
「そんなもんだ。でだ、罰ゲームだが、今回はアレだ、負けた方は“ロイ・マスタングをおちょくる”って事で。手段は任せるが、ロイに発火布を抜かせるくらいにおちょくる事」
「そりゃ楽だな」
「でもまあ、あれだ、焼かれないように気をつけよう」
あの人たまに俺の部屋に来て「焼かれないか?」とか言ってくる。
研究しすぎで頭沸いてきたんだろう。
いつもヒューズさんに連行されて帰っていく。
まあ、この罰ゲームもロイの気晴らしと皆の挑発技能を向上させる為の物だから悪い物でもない。
他の意図はないヨ?
あわよくば俺以外を標的にしてくれとか、ロイ・マスタング苦しめよ、お前も苦しめよ。とかそんな事は全然思ってない。
研究しすぎで疲れてるだろうから気晴らしした方がいい。
その為の標的だ。
「それならば問題ないでしょう。では合図しますよ」
「あいさー」
「おう」
ジーンさんが見学しに来だしてから、罰ゲームの中身を判断するのは彼女の役目みたいになってる。
変態騒ぎがよほど嫌だったのか、それとも仲間外れにされてそれを理由に乱入したかったのか……
まあ、彼女がいると落ち着くので問題ない。
「では、始め!!」
合図と共に俺率いる10名とアルフォード率いる13名が駆け出す。
集団戦は楽しい。
連携やらなんやらを駆使するのは本当心が躍る。
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そんな感じで俺達は休日を過ごしている。
たまに街に出て買い物をしたり、友人と飲みにいったり、かなり有意義な学校生活をすごしている。
最近ではアルフォードやジーン・ルーなどの意外な一面を発見したりと、毎日が楽しい。
錬金術の研究は正直言って学校で得る物はなかった。
やはり戦場に出ないと目的を達成する事は難しいようだ。
ただまあ、俺専用の人体練成陣はすでに完成間近。
人体練成と言っても、治療だが。
あれは分類すると人体練成だと思うんだ。だって内臓とか骨とか、まんま人体じゃねーか。
概要はローコストでの治療と、ヘイフリックの限界の消耗を如何にして減らすか。
俺に対しての治療ならば、比較的簡単にできる。
ただ、他人の体になると難易度が跳ね上がる。
持病の事であったり、手術を受けていたり、疾患かと思えばそれは個人の特色であったり、そう言った事で様々な知識と技術を要求する分野だ。
医者と言う職業の難易度の高さを思い知った。
まあ、何故そんな事が解る? と聞かれれば、休日訓練で治療しているのは俺とルーだからだ。
人体実験? まあそうだが、本人の了承を得ているので問題ない。
それに動物で試して成功した物しか使ってないのでまあ、マシだと思う。
動物に関してはちょっと悪い気がする。
死体だったり、怪我している動物を使ったりと、まあ、外道と言えば外道だが、助けたのも居るので問題ないだろ。
ニャンコが居なければ動物を効率的に捕まえてくるのは難しいが、今の所は問題ない。
俺専用練成陣も完成の目処が立ったので、次に研究するのはずばり!!
“レントゲン”だ。
なにもX線を使おうなどとは思ってない。
ようは人体練成の応用で、対象に陣を書いて人体の情報を頭にちょくせつ映し出せないかと言う試みだ。
かなり難航しているが、この陣が完成すればお袋の治療対策がかなり進歩する。
他の人の治療をする際にも必須の陣となるはずだ。
契約とのコラボも考えてはいるのだが、なかなか難しい。
意思のある物との契約は相互に関係を結べば結ぶほど強くなる。人に対しての契約は今まで一度もしていないのでどうなるか本当にビビッてるからなあ。
順風満帆と言って良い毎日。
そんな中、ある無能がこんな事を言い出した。
「カーティス。君は休日に訓練を行っているらしいな」
「ん? ああ、ロイか。してるけど参加する?」
「ああ、参加したいな」
「え?」
おかしい。
なんだこのロイは? おかしい、おかしすぎる。
「発火布はなしだぞ?」
「無論だ。人に向かってアレを使う気はない」
「オイ!! 俺につかったやろうが!!」
「お前は人外だ」
断言しおった!!
否定したいが、微妙に人と違うので否定できない!!
ちくしょう!!
「でだ、参加するのはいいのだがな、君達は今まで体術しか駆使していないだろう? よくて軍刀レベルだと聞いている」
「まあ、銃を使うわけにもいかんだろ?」
「それは弾丸があるからだ、そうだろう?」
「ああ、怪我は良いけどさ、さすがに死人はねぇ治せないから」
「……安心したまえ!! 良い物を持ってきた!!」
そう言って出してくるのは軍に正式採用されているライフル。
それを俺に向かって構え、撃った。
俺は半身なってそれを避ける。
「て、おい!! 殺す気か!!」
「ッチ。いや、殺す気は無い。みたまえ」
顎で促される先を見る。
そこには黄色の絵の具がぶちまけられている。
「おお。ペイント弾か」
「ああ、これで銃撃戦も可能だ」
なるほど、これならもっと本格的に訓練できる。
今やっているのはあくまでも体術だからな、卒業後有効かと聞かれれば首を捻ざるを得ない技術だしな。
「こちらからは50名までなら用意できる。序でに再来週の日曜に野外訓練場の予約をとっておいた」
「用意万端ですね」
マジで。
何か企んでるとしか思えない。
「50対50での対抗戦と行こうじゃないか」
「ふむ。と言う事はアレですか上級生対俺達みたいな?」
「いや、私は関係なく有能そうなのをかき集めたが」
「にゃるほど」
「ちなみに君の取り巻きには断られた」
「でしょうねー」
「で、どうする?」
「ふーむ、よし。やりましょう!!」
「そうこなくてはな」
そんなこんなで対抗戦イベントが立ちました。
この企画がまさかあんな事になるだなんて……俺には予想も出来なかった。
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