1話:人体練成されるらしい。
よし。
今起こった事を説明しよう。
俺は朝起きて、歯を磨いて、顔洗って、飯くって、よしっ仕事がんばるぞっと。
てな感じにいつもの日常を謳歌しようとしていた所だった。
そんな日常だったんだが、どうやら非日常になった。
なんせ俺の目の前にはデカイ門があるんだ。
自宅の扉を開ければ、あら不思議。そこにはもう一つ門がありました。
それなんて不思議なんだろう。
この世は摩訶不思議奇想天外ですね。
珍しい体験したなー、とスルーしようとしたんだが。
突然門が開いてなんかウネウネした手に掴まれた。
抵抗らしい抵抗もしないままに俺は門の中に入った訳なんだが。
「よう。さすがのお前でもこの事態には……びっくりしてねーな」
門の中には、生意気に話す人型が居る。
形なんて人っぽいってだけで、人じゃない。
むしろ影って感じだ。
「まあ、いいか。所でちょっとした提案があるんだが、いいか」
影は頭を掻きながらさも面倒そうに話しかけてくる。
「まあ、聞くだけなら」
俺も面倒だったので適当に返した。
しかし、あの仕草はどこかで見た事ある気がする。
「そうか。大した事じゃねーんだがな、とある別世界でお前を人体練成しようとした人間がいるんだが練成されてもらっちゃくれんか」
なんだよとある別世界って。
しかも召喚じゃなくて練成ってなんだよ。
中途半端にファンタジーしてんじゃねーよ。
「だが断る」
とりあえず言ってみたかった事を言ってみた。
「へえ。理由はなんでだ」
「すまん。ちょっと言ってみたかった」
「まあ、お前ならそんな所だろうな」
なんか、こいつムカつくんですが……。
さもお前の事は解ってんだぜ、って言い草が腹立つんだが。
「で、本音は?」
変わらぬ面倒そうな仕草で促す影。
まあ、俺もあれだ、中二病というのにかかった時期もあった事から、このような事態は興味があるんだが……。
当事者にはなりたくない。
故に。
「中途半端にファンタジーなのが嫌だ」
……とりあえず遠まわしに断っといた。
「ふーむ。なかなか面倒な理由だな」
「でもな召喚じゃなくて練成なんだぞ。テンションガク落ちしてしゃーあんめー」
「つまり召喚されるならOKなんだな?」
「ばっか。仮に召喚されてもその世界が中途半端にファンタジーじゃ意味ないだろ」
「ならお前限定でファンタジーにしてやる。だから練成されてくれ」
こいつ俺の話聞いてるんだろうか。
「はあ? お前俺の話聞いてる? 世界がファンタジーじゃなきゃ嫌だっつってんでしょ」
「ならそう言う事で、練成されてくれ」
「ちょっ、おまッ」
突如感じる脱力感。
ほんじゃな。と手をブラブラと振る仕草は如何ともしがたく俺に似ている。
「ちなみに、お前のファンタジー能力は“ありとあらゆる物と契約出来る程度の能力”だから」
ついでとばかりに言われたセリフにはちょっとニヤケそうになったが、ッハと気付く。
「東方に練成されんのかーーーー!?」
「そんな訳ないだろ間抜け」
そんな声と共に俺の意識は途切れた。
そんで目を覚ませば目の前には、どこかで見た事のある超絶美女。
なんか血反吐吐きながら微笑んでくれています。
「ほぎゃーーーーーふぇ(こええぇぇぇぇっぇえええ、え?)」
「ああ…シルバ師よ、感謝します」
匍匐前進してくる美女と、ビックリして叫ぶ俺。
美女は俺を抱きかかえると感無量とでも言うべき表情をして気を失った。
気を失う間際。
「シグ、もう一人の私の子。ごめん」
なんて声が聞こえた。
そしてバタンッてな感じで吹き飛ばされる扉とその先に立つ野獣。
練成だか召喚だかされて即効死ぬのか……そんな事を思いつつ俺は気を失った。
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