作戦開始
思わず顔がにやけるのを堪えて清児は珍しく授業に集中しているようだった。
(実際は上の空で小夜子に振る話題を考えている。
)ほのかに漂ってくる何かの香りは小夜子のものらしい。
−甘い。
でも爽やか。
花の香り?
でもどこか、官能的。
清児はこれだ!と思い、紙をちぎった。
《いい匂い。》
いかん!何かキモくね?
清児は文字の上からシャープペンで塗り潰した。
《香水つけてる?》
だけん、なんやって!
また塗り潰した。
清児は机に突っ伏す。
ちゃっかりわからないように小夜子の香りを嗅ぎながら。
「寝るな!浅倉!」
「寝てねーっつの!」
「お前朗読させるぞ!」
「誰も聞きたくないって」
また皆が笑い出す。
ききたーい!と野次が飛ぶ。
「嫌だ!」
ケチ!
言い返されて清児は肩を竦めた。
授業終了のチャイムが鳴った。
「終わるぞー!」
教諭の声を号令に、
「起立、礼」
が行われた。
昼休みなのでざわめきがずっと大きくなる。
食堂や売店に行くものや、固まって弁当を広げるもの、それぞれだ。
清児は小夜子に話し掛けた。
「お弁当?」
「うん。浅倉くんは?」
「俺、売店でパン買う。」
「お!清ちゃーん!この娘が転校生か!!」
龍と山崎とイチが教室に入って来た。
まったく柄の悪い三人組で清児は溜息をついた。
「あー!もぅ!お前らみたいなんが来たら黒川さんが怖がるやろーが!散れ!」
清児が三人をまとめて教室から出ていく。
「なんだよ〜!」
「独り占めはよくねーよ」
「黙れ!」
騒がしいのが遠ざかるのを唖然として小夜子は見送った。
「黒川さん。」
話し掛けたのは、中山沙織だった。
「中山さんやったよな?」
「うん。覚えてくれたん?うれしー!一緒にご飯食べよ?」
「ええの?嬉しぃわ。」
沙織の申し出に小夜子は笑顔で応じた。 |