初めての。
教室に戻ると、既に授業は始まっていた。
「浅倉〜!お前、普通に入ってくるなよ。すいませんとか言え。」
「あ、ごめんなさい。」
国語の教諭はしれっとした清児の態度に、しょうがない奴だと苦笑して、出席簿に何かを記入した。
自分の席の隣に件の彼女がいる。
心臓が、胸の中がざわめく。
一つだけ出た、一番後ろの清児の席だったが、今は可愛い女の子が隣にいるのだ。
何か話したい。でも何を?
清児は席に着くなり、考え込んだ。
「浅倉、黒川に教科書見せてやれ。」
国語の教諭の一言に顔を上げた。
「お前、置き勉(教科書を置いて帰ること)しとるやろ?教科書持ってないとか?」
「持ってまーす!」
清児は教科書を取り出し、教諭に見せた。
黒川小夜子が大きな瞳で清児を見た。
目が合うとドキッとして、思わず目線を下げてしまった。
「何を緊張しとるとか、早く見せてやれ!」
クラスに笑い声があがった。
清児はいそいそと机をつけて、真ん中に教科書を広げた。
「お前、今から出席なら自己紹介してなかったな?ついでに軽くしておけ。」
教諭はそういうと授業を再開した。
「浅倉清児です…。」
「黒川小夜子ですぅ、大阪の河内長野から来ました」
関西弁がよけいに可愛いと思った。
「黒川さん、チェリーパイ好き?」
「ナンパはするな!」
またクラスに笑い声があがる。
「先生!人聞きの悪いこと言わんで!」
「うるさい!授業きけ。」
「わかったって!」
そのやりとりに小夜子も笑いを堪えていた。
清児は、ばつのわるそうな顔で頬杖をついた。
ふと、小さな紙切れがこっそり差し出された。
《チェリーパイ、食べた事ないです。》
胸がきゅっとした気がした。
この紙とっときたい!と思った。
《美味しいんだ。今度あげるよ》
こっそり小夜子の書いた紙を自分の方に引き、新しい紙に返事を書いて渡した。
紙を受け取ると、こそこそとかきこみ、また清児に渡した。
開くと
《ほんまに?ありがとー★》
と書かれていて、ちらっと小夜子の表情をうかがった。
小夜子は嬉しそうに微笑んだ。
清児は気がおかしくなりそうになった。 |