嵐の夜が来て、僕らの気持ちは闇の中。
「お兄ちゃん達、終点よー?」
バスの運転手のおじさんに声をかけられて、ようやく目が覚めた。
「あ…すんません。」
イチと清児が先に目を覚まして、小夜子と沙織を起こし、荷物をまとめてバスを出た。
蝉の声が聞こえる。
蜃気楼が少し遠くに舞い上がっている。
「夏やねぇ。」
清児とイチは上半身裸になってダラダラ歩いている。
「なぁなぁ、清児くん。うち荷物自分で持てるよ?」
「いーの。持つ!」
「一臣、ガンバレ。」
「オメー少しは小夜子ちんを見習え!!」
沙織のLOUIS VUITTONのボストンバッグと自分の荷物を持ってイチは喚く。
「ちっ!ダメか!」
沙織が呟く。
「わかりましたー。自分で持ちますぅ。」
思い切り棒読みをしながら沙織は両手を広げた。
「こんな重いの持って倒れられたら余計重くなるからいーよ。」
「そんなヤワじゃないもーん!」
「ち!可愛いげのない。いーから歩け。」「なんだかんだ言って優しいねぇ?イッちゃん。」
清児がニヤニヤしながらイチの横腹を突く。
「違うって!!」
「はいはい。」
「あんな重い女が荷物になったら困る!」
「なによ!そんなに重くないっつの!」
「あ、胸ないからな。」
「ムカつく!!バカ!!」
「バカで結構。」
「アハハ!仲良いね。」
「おたくらもな。」
清児と小夜子は荷物を二人で持っている。というよりむしろ手を繋いでいる。
清児はニコニコしながら咄嗟に離そうとした小夜子の手を強く握った。
「もー!清児くん!」
「いーやん、いーやん」
清児が小夜子をなだめる。
「民宿まだかなぁ?」
沙織は先頭を歩きながら辺りを眺め回す。
白いワンピースにつばの広い白の帽子を被っている。
ぱたぱたと手で扇ぎながらふぅっと一息ついている。
「おいコラ。お嬢様、地図はオメーが持ってなかったや?」
「あ、そか。」
沙織は揃いのLOUIS VUITTONの小さめのハンドバッグから地図を出した。
「山道わかんない。」
「なんだと!このバカ!」
「バカバカ言わんで!」
「あの山道から入るんやない?」
清児が10メートル程先にある山の入口を指差した。
「あ、看板になんか書いてある。」
沙織がてけてけと走っていく。
「ねーねー!柊荘入口って書いてあるよー!」
「そこやねー!」
清児が叫んで応えた。
「なぁ、清児くん、雲行き怪しいで?」
小夜子が空を見上げる。
さっきまでの青空に黒い雲が侵食し始めていた。
「山の天気は変わりやすいっていうけんねぇ。」
清児はのんびりとした口調で言った。
みるみると辺りは薄暗くなる。
「雨降ったらヤバイぜ。」
イチがうんざりしている。沙織嬢はイチの隣に戻り、イチの袖を掴んでいる。
「なんか気味悪いね。」
「しおらしいお前が気味悪い。」
そう言って沙織嬢の鉄拳を喰らったりしていた。
雫が落ち始め、四人は少し道を急いだ。
随分歩いてようやく民宿にたどり着いた。
そこは民宿と言うより、隠れ家的な旅館。
と言った感じの風情あるたたずまい。
四人とも濡れ鼠の様になっていたので、そこに入るのは少々気が引けた。
「あらーいらっしゃい。浅倉様の息子さん達ね。清児くん大きくなったねー。」
深緑の落ち着いた着物を着たおばさんがニコニコ笑って出迎えてくれた。
清児は全く彼女の事を知らない。
キョトンとした顔の清児を見ておばさんは笑った。
「そうよねぇ、オシメしてたものー。さ、すぐタオル持ってくるからねー。」
そう言って奥に行ってしまった。
「オシメ替えてもらったりしたんやない?」
イチが笑っている。
「全然、記憶ない。母さん言ってくれればよかったのに!」
清児は少し悔しそうに言った。 僕は浅倉清児17歳。年を越して18歳になる。
今僕は宮崎の山奥の旅館で、世界で一番大好きな女の子と友達とその彼女と一緒にいる。
しかし、なんということだろう、部屋はご丁寧に別々だ。
修学旅行ではないので男子女子別れているのではなく、男女ペアで別々の部屋だ。
僕の友達はしゃあしゃあと彼女と温泉に行きやがった。
きれいな畳の青い匂いがする。
すっきりとして涼しげな和室に卓袱台の上には、しょうもないお菓子とか。外は嵐が来ています。
そして、僕の心にも。
小夜子と二人きりの部屋でびしょ濡れのまま、
「俺たちも風呂に入ったほうがいいよね!」
と言えないまま、座っている。
清児は胡坐をかいている。小夜子は立ち上がり、縁側の方に行った。
「雨、えらいこと降ってる。」
小夜子は景色を見る為の、板張りになっている、籐の椅子二脚と小さいテーブルセットが置かれた場所の窓硝子にそっと手をあて、外を眺めている。
水色のシャツワンピースがぐっしょり濡れていて、下着の線が出ていた。
「うちらも、お風呂、いかへん?」小夜子に見惚れていた清児は少し焦った。
「あ!う、うん!」
「うち、浴衣に着替える。覗かんといてな?」
小夜子が悪戯っぽく睨む。
「ん、じゃあ…」
場所交代をして清児は籐の椅子に腰掛け、テーブルに両足を投げだし、煙草を吸い始めた。
竹林が雨に打たれて修行している僧の様に凛々しく見える。
でかいな。清児は魅入っていた。
ふと、清児は隣をみた。襖の下半分が磨りガラスで小夜子の白い足がぼやけて見えた。
清児はのそりと立ち上がり、音を立てないように端っこの襖を少し開けた。
そしてまた位置を変えた椅子に座る。
微妙に見えそうで見えない所が焦らされているようで余計興奮する。
清児は両足を両手で抱え込み、じっと視線を向けた。
小夜子がほとんど何も纏っていない状態で、押し入れの中の浴衣を取る。布が擦れる音が聞こえる。
雨が激しく窓硝子を打っているけれど、清児の聴覚は小夜子に集中していて聞こえなかった。
「清児くん着替えへんの?」
小夜子が声をかけてきた。振り向く前に清児は開けておいた襖から顔を出した。
「着替える。」
小夜子は驚いた顔をして振り向いた。
「着替える途中やったらどないするん!清児くんのアホ!」
「小夜子ちゃん、襟、逆だよ。」
清児は自分の胸元を指差しながら示す。
「え?」
「それじゃ、死んだ人。」
清児が小夜子の帯を引っ張って解いた。
「やっ…!!」
−はらり。
小夜子の白い肌が露わになる。
まだ初々しい乳房が片方だけ浴衣から露出され、真っ白なふとももが辛うじで浴衣を挟み込んで秘部を隠していた。
僕は浅倉清児(17)年を越して18歳になる。
今僕は宮崎の山奥の旅館で、世界で一番大好きな女の子と友達とその彼女と一緒にいる。
しかし、なんということだろう、部屋はご丁寧に別々だ。
修学旅行ではないので男子女子別れているのではなく、男女ペアで別々の部屋だ。
僕の友達はしゃあしゃあと彼女と温泉に行きやがった。
きれいな畳の青い匂いがする和室に卓袱台の上にはしょうもないお菓子とか。
外は嵐が来ています。
僕の心にも。
僕は彼女を襲いました。
だって、余りにも綺麗すぎて許せなかったのです。
残酷な気持ちを掻き立てるくらい、容易に、彼女は美しく、いたいけに見えたのです。
清児はぼんやりと考えていた。
小夜子と二人きりの部屋で泣きじゃくる彼女を慰めもせずに。
燃え尽きた様に座り込んでいた。
雷が凄い音を立てているのに、イチと沙織は戻ってないようだった。
清児はぼんやりと考えていた。
小夜子と二人きりの薄暗い部屋で。
「…小夜子ちゃん。」
清児は畳に視線を落としたまま呟くように小夜子を呼んだ。
返事はない。
「ごめ…ごめんなさい…」
清児は両手で顔を覆い、鼻を啜り、鳴咽を漏らし始めた。
清児は小夜子を脱がせて、まだ青さの残る乳房に口づけした。
唇を貧った。
したのはそれだけだ。
小夜子が泣き出して清児は我に還った。
小夜子は泣きながら浴衣をたくし上げ、その場にしゃがみ込んだ。
「ごめん…。」
清児はそう言って部屋を出ていこうと立ち上がった。
「…待って…っ!」
小夜子が立ち上がり清児の背中にしがみついた。
「…勝手な…事ばっかり…せんといてや…。」
「…小夜子…ちゃん…」
清児は振り向いて小夜子を見た。
抱きしめたいけれど、手が伸びなかった。
「…愛してるんだ。本当に。失うなら、俺は死ねる」
清児は小夜子の手をゆっくり離して、部屋を出た。
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