ぴっかぴっかの♪三年生☆
波乱の2年生が終わる。
問題があり過ぎてつぶれてしまった学祭。
あれから何事もなく、日々が過ぎて行った。
中間・期末・学年末テストという大きな壁を越えて、皆、無事に三年生になった。
清児、龍、イチ、山崎は先生達からの同情もあり、どうにか進級した。
因みに前回の事件で清児が二人を助けられたいきさつを説明しておこう。
あの日、腹を壊した清児はトイレに行ったものの、男子便所が満室だった。
しかたなく、誰もいなかった女子トイレに入った彼は至福の一時を過ごしていた。
そこに何も知らない木下こずえ一味がやってきて、
「体育館倉庫」
の事をせせら笑いながら話したのを聞いたのだ。
さすがにそのままでていけず、ちゃんと流してからお面を被り、赤レンジャー出動と相成ったのだ。
勿論、この真相は誰にも話していない。
不思議そうに小夜子に尋ねられた時は
「小夜子仕掛けのオレンジなんだ。」
と適当な事を言った。
あれからイチと沙織が付き合い始めた。
小夜子と沙織はめちゃくちゃ仲良しになった。
時折、頼子のグループともつるんでいるようだった。木下は転校したらしい。
男子5人は自主退学していった。
割れてしまった赤レンジャーのお面は小夜子と沙織が半々にして家に飾ってあるらしい。
イチが部屋に飾ってあったと言っていたので本当なんだろうと思う。
相変わらず、清児と小夜子の仲はキス止まりの甘酸っぱいままだ。
「ね、小夜子。」
黒髪にして大人っぽさと色気を増した沙織が小夜子に耳打ちした。
「なに?」
「あのさ…今度の土日…四人で旅行しない?」
小夜子はキョトンとした顔で沙織を見た。
「4人?さおちんとうちと?」
「清ちゃんと一臣。」
「えええッ?!」
小夜子の顔が赤くなる。
「ちょっ…!シーッ!」
「…お泊りすんの?」
沙織が頷く。
「だって!聞いて!アイツ…あ、一臣ってば!手ぇ出してこないし、幼なじみの女の子が邪魔しにくるの!アイツ先月からお母さんが再婚して一人暮し始めたんだけど幼なじみの女の子が遊びに来るとよ?!」
「ええ?!それ、おかしくない?」
「やろ?小夜子もそう思うやろ?!」
「怪しいな…。」
「お!お二人さん!」
すっかり6人のたまり場となった屋上に山崎が入って来た。
「「山ちゃん!!!」」「ええッ?!」
両腕をがっしり捕まえられて、ソファーに強制連行。
「ね!一臣って、本ッッ当にあの幼なじみの娘と何にもないの?!」
沙織が山崎ににじり寄る。
「え?一臣?」
「…イッちゃんや。」
「あ、そうか!」
ポンッと膝を叩く。
「いやぁ〜昔はしらねーけどよ、沙織ちゃん一筋だろ?」
なっ!と言いながら沙織の肩をぽんぽんとする。
「女の子っつーのは、惚れた相手を信じられないのか?」
「うっ!」
沙織が頬を引き攣らせる。
「お、昼間っからイメクラごっこか?」
イチが入って来た。
「は?何言ってんの?」
沙織が隣にムリヤリ腰を降ろしてくるイチの尻を叩く。
「いって!何すんの!」
二人を見て小夜子と山崎が笑う。
「仲ええやーん!」
「ねぇ!」
いつの間にかイチの膝の上に沙織が座っている。
「何かヤラシイ…。」
小夜子は思わず両手で目を覆った。
耳元で囁き合う二人が今にも事に及びそうでヒヤヒヤする。
「こんなイチ初めて見るよ…。」 こちらは吹奏楽部室。
龍がサックスで『STAND・BY・ME』をアレンジして練習していた。
椅子に跨がり、清児が真剣な眼差しで見つめている。
一通り演奏を終わらせ、龍が清児を見た。
「…どうや?」
「どうって…お前上手いやん。」
「最近、殆どしてなかったけんね。」
「いや、まだ時間あるし大丈夫やろ。」
「次、お前歌え。」
「アカペラで?」
「ギターで弾きながら歌えよ。」
龍に促されるまま、清児は立ち上がり、ギターをアンプに繋ぎ、電源をいれた。
キィー…ンっとアンプがノイズをたてた。
控めに『STAND・BY・ME』のイントロを弾きながら、清児は囁くように歌い始めた。
龍が、じっと眼を閉じてそれを聴く。
Aメロの部分でいったんフェードアウトする。
一、二、三!
清児が手拍子でカウントするとスタンバイしていた龍がサックスを吹き始める。曲調がスカ調になる。
清児もギターを合わせていき、今度は激しくスピードを上げて歌い出す。
ドラムとベースがなくて少し走り過ぎた。
清児は気持ちを落ち着かせてみる。
だが龍の唸るようなサックスの音色にどうしても気持ちが高ぶってしまう。
焦っているうちに歌詞を間違えてしまった。
「…おつかれさん。」
龍がタオルを清児に渡す。
「…ん。」
清児が心なしか落ち込んでいる。
椅子に跨がったままぼんやりとしている。
「何、落ち込んでんの?一回間違えただけやろ?」
「…。」
−飲み込まれてしまった。清児は自分にがっかりしてしまう。
龍の熱は完全にサックスと融合していたのに…。
「あの…」
音楽室のドアから二人組の女の子が声をかけて来た。
「三年の浅倉先輩と高村先輩ですよね。」
「…おう。」
龍が答える。清児は俯いたままだ。
二人組の女の子達は嬉しそうな顔をしてお互いを見合う。
「あ、あの!すっごくかっこよかったです!いつも放課後お二人で練習してますよね!」
眼鏡をかけた黒髪ロングの方が興奮しながら言った。
「が、学祭に出るんですか?!」
「…うん。」
「あの!あたし、2年の金森泉です!」
「あたしは前池めぐみです!」
「はい。」
「学祭、見に行きます!」
「ありがとう。」
「頑張ってください!」
二人はそう言うと頭を下げた。
−ガン!
眼鏡をかけた方の金森と言う女の子が頭をぶつけた。
「ぷっ…大丈夫ぅ?」
清児が少し微笑みながら声をかけた。
「は…はい!!」
金森が真っ赤になって答えた。
「失礼します!!!」
そう言って二人はバタバタと走って行った。
「きゃー!浅倉先輩笑ってたー!」
「超可愛かったねー!!」
「素敵すぎ!王子様って感じ?!」
はしゃぎながら渡り廊下を走っていく二人とちょうど小夜子と山崎とイチと沙織がすれ違った。
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