甘酸っぱいのか!?この野郎!
清児は沙織のお陰で龍とイチと山崎が来た事を知った。
放課後。
一人で帰り支度をしていた沙織に清児は声をかけた。
「な、中山!」
いきなり声をかけられて沙織は驚いて清児を見た。
「な…何?」
「あ…色々、ありがとう!俺、お前を誤解しとった。今まで…なんか…ごめん」
照れ臭そうに頭を掻きながらもう一方の掌を差し出した。
「…何?」
「仲たがい解消には握手やろ?…嫌?」
ブンブンと頭を降る沙織。
おずおずと手を握り返す。清児はニカッと笑って沙織の手を強く握った。
(かっ、可愛い!!)
思わず赤面する沙織。
「今までごめんな!!」
そう言って小夜子の方に走った。
「小夜子ちゃん!帰ろーぜー!!」
小夜子が沙織の方に歩いてくる。
「い…一緒に帰らへん?」
沙織が小夜子を見た。
「え?」
「なんか、変な感じすんねんけど…うちが始め一人の時、声をかけてくれたん、沙織ちゃんやん?」
「…。」
「…同情とかやないよ?」
「…うん。」
「皆で帰っぺ!」
「わ!ビックリした〜!山崎くんいつ来たん?!」
「だってさ!清ちゃんだけズルいやん!きゃわいい女の子独り占めなんて!」
「…あはっ!」
沙織が笑い出す。
「さすが元祖トモダチ戦隊!そういって沢山友達作るんやね!あはは!」
「え?何で美少女ちゃんがソレ知ってんの?」
「秘密!あはは!」
「沙織はいいよねー!主犯だった癖に、可愛いからうまく取り込めて!」
木下こずえが他の女の子4人のとりまきに言った。
「…。」
「いいかげ…」
小夜子が言いかけた時、
「悔しかったら整形でもすればー?木下コケシちゃん?まずは根性からな。」
イチがこずえの肩を抱いて耳元で言った。
「!!」
こずえが顔を真っ赤にしてイチを睨んだ。
−バシッ
イチの頬をこずえが撲った。
「死ね!」
半ベソで木下こずえが言った。
「やなこった。性格ブス」
イチがおちょくった顔で舌を出した。
「一瀬!」
沙織がイチをこずえから引き離す。
「てめぇな、お人形じゃねーんだろ?たまにはてめぇから戦え!」
イチが沙織の鼻の先がつくくらい近くで囁いた。
−ちゅっ
沙織がイチの唇に自分の唇をあてた。
「?!」
「あ…」
その瞬間教室中が騒いだ。「…何…してんだ…よ?」
「ごめ…、あんたが何か、カッコ良すぎて…」「ヒューヒュー!中山やるーぅ!」
清児が楽しそうに歯笛を吹いた。
「っ!中山ちょっと来い!」
イチが沙織の手を引いて教室を出た。
「続きするなよー!」
「お前どうゆー事や?!」
「…ごめん。怒った?」
「バカ!お前清ちゃんが」
「振られてるし。」
「や!そういう…」
「だって、下心なしで慰めてくれたの、あんただけやもん。」
「は…?」
「今まであんな慰め方してくれたの、あんただけ。」
「…そーかぃ。」
「浅倉も今まで周りにいないタイプの男の子やったけんね。」
「くだらない男ばっかやったんやな」
「そうやね。」
「お前、清ちゃんの事、好きなんやろ?」
「わからん。意地になっとっただけかも。」
「そんなんでいいとや?」
「溜まりっぱなしの水は腐るやん。」
「は?意味わからん。」
「あんた彼女とかおるん?好きな女は?」
「おらん!」
「マジで?」
「おう!って自慢できる事やないけどさ…」
「じゃあ、アタシ、一瀬を好きになる!」
「はぁ!?お前意味わからん!」
「いいの!あんたなら浅倉みたいに極端な対応しなさそうやし。」
「いいのって…よくねーよ!」
「…友達でいい。」
くるんと丸まった睫毛、フロストピンクの濡れた唇。艶っぽい瞳。甘い香り。
第二ボタンまであいたシャツから見える、なだらかな曲線が沙織の呼吸と共に上下する。
(…いかん。)
イチは思わず魅入ってしまう。
「中山…。俺、お前が弱ってる時につけこんだつもりはねー。んで、清ちゃんの替わりにもならん。落ち着け。とにかくお前は今、なんかおかしい。」
「…戦えって言ったの、」
「あ?」
「あんただよ。一瀬。」
イチの手を取り、唇をつける。そのまま上目使いにイチの目を見る。
甘えてない。挑戦的な眼差し。
「あんた相手なら戦える気がする。」
「な…っ!なめんな…!」
「イチーー!?中山ぁ!」
清児の声がして、二人は物陰に隠れる。
「なにやってたの?」
「べっ!別に!!」
隠れたのも虚しく、清児がひょこっと顔を出す。
二人して焦る。
イチの手が沙織の手を強く握っていた。
イチも咄嗟にしたらしく、自分で気づいていない。
清児も気づいていない。
「早く帰ろーよー!」
清児が子供っぽくごねる。沙織だけが顔を真っ赤にして笑っていた。
「おう!」
イチがやっと気付いて手を離した。
「なんしよったん?お前ら怪しいよ?」
「なんも怪しくないよ!?なぁ?!中山!」
「ふふっ。さあ?」
「ってめー!!」
「ヒューヒュー!」
教室に戻ると、龍と山崎と小夜子に散々冷やかされた。
イチはどう反応していいのか途方にくれる。
沙織は笑って
「怒られた」
と言っていた。 |