ウォーターリリィ
「清ちゃーん!」
肩までの黒髪をオールバックにして一つにまとめた、柄シャツに制服のズボンという明らかに校則違反な、格好をしているのは、イチだ。
彼は龍のバイク友達で、清児とも仲が良い。
「俺、ちゃんと学校来たのに清ちゃんいねーんだもん。」
「ごめーん。寝坊した。」清児は笑いながらイチの肩を叩いた。
「結構、イケるぜ、これ」
イチは黒いビニルに包まれた例のものを清児に渡した。
「あはは!ありがと!」
「あ、転校生がきたよ。」
あの娘、とイチが指差した。
「黒川小夜子ちゃん。可愛いぜ。」
イチがこそっと耳打ちをする。小夜子がちょうど顔を上げた。
髪形はパルプフィクションのヒロインの様な黒髪、おかっぱで、違うのは前髪をサイドと同じ長さであげている。
清児は目を見張った。
か、可愛い…!
大きな二重の瞳、小さいが鼻筋の通った鼻。
清児の好きな薄い上唇に、ぽてっとした下唇。
どちらかというと、童顔だ。
…ウォーターリリィ…
それは山の上の溜池に咲く可憐な睡蓮の花の名前だ。
彼はもちろん、その花がそれなのか知らない。
だが、彼はそんなことは気にしていない。
「清ちゃん?」
イチが清児の肩を叩く。
「イっちゃん、俺、」
清児はイチの肩に腕を回し、隅にひっばった。
「何?何?どーしたよ?」
イチが苦笑しながら清児をなだめる。
「イッちゃん!俺、ドキドキする。」
イチは清児を見た。
「おぉあっ?!!」
イチが奇声を上げた。
「龍ちゃーん!!やまちゃーん!!」
清児の腕を払いのけイチが教室から駆け出した。
「ちょッ!!イッちゃん!」
清児は慌ててイチを追う。
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