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水色
作:森本エリ



血祭りの後


生徒たちも教師達も、固まった。
「救急車!!」
龍が清児を抱え、叫んだ。イチが携帯を取り出す。
「こちらから行った方が早いわ!」
中原優子がワゴンの運転席から顔を出した。
龍は清児を抱き上げて運んだ。
イチと山崎が後ろを開ける。
「先生、俺らも行っていい?」
「頼む!いや、お願いします!」
「ぜぇんぜ〜っ!うっく…うぅっ!ずびっ」
「山ちゃん何泣いてんだよ!汚ぇ!」
「いいから早く乗って!置いてくわよ!」
「「「はい!!」」」
「…いいんですか?校長先生。」
教頭が校長を見る。
「駄目だと言えるか?」
「…。」
二人がそんな会話をしているのにも関わらず、ワゴンは出発をしていた。
負傷した教師4人、一番ヒドイ顔をした富田がよろよろと立ち上がる。
「君達も病院に行くべきだ。」
「こ、校長…あいつら…退学ですよ…!!」
富田が怒りに震えながら言った。
「ふむ…富田くん、君は少々やりすぎた、病院に行って身体と精神を休めなさい。」
「校長…っ!」
「私は君の行き過ぎた生徒指導に疑問を感じていた。いい機会だ、少し休んでみたら如何かな?」
校長はそう言うと辺りを見回した。
「彼等の処分は一先ず、浅倉君の回復を待ち、教員会議で決定をする!親御さんとの話し合いもしなければならない!とにかく全員授業を再開させなさい!」
                                    校長の一喝により、生徒たちが6時間目の準備にとりかかる。
始まりの鐘が鳴り響く。
グラウンドにいた教員も生徒もぞろぞろと校内へ戻って行った。
                                    保健室にいた小夜子はどうなったかも分からないままそこにいた。
試しに清児の携帯に電話をかけてみる。
            ブーッブーッブーッブーッ清児のポケットからバイブが鳴る。
「誰よ?」
「お前じゃないの?」
「俺じゃネー!」
「違う。俺、携帯もってきてねーもん」
「あ!」
イチが清児の制服のポケットをまさぐる。
「小夜子ちゃん…!」
「忘れちゃいけない人忘れてるよ!」
「もしもし?!」
清児じゃない声に小夜子は驚いた。
「…誰?」
「一瀬くんです。」
「…あれ?何で?」
「…えっと、清ちゃん意識飛んじゃって…今、中原先生に病院連れていってもらってる。」
つくわよ!!中原優子の声がした。
「あ、はい。ごめん小夜子ちゃん、後でね。」
「どーゆー事なん?!どこの病院?!」
「後で迎えに行くよ。じゃあね!」
プッ!ツーツーツーツー…小夜子は携帯電話を握りしめた。
嫌な胸騒ぎでいっぱいになる。
                        『俺、今はこんなんやけど小夜子ちゃんと小夜子ちゃんの笑顔を守れるような男になるけん。』
                        …清児くん。
                        …清児くん。
                        お願い、無事でいてや。
                        小夜子の胸の中にはそれだけが繰り返された。
小夜子は震える足を踏み締めて、保健室を出た。
身体が硬直してしまいそうで、歩きにくい。けれど学校にはいたくなかった。
たいしたことない。
清児くんは大丈夫。
自分に言い聞かせて学校を出た。
どこにいけばいいのかわからない。
右に行くべきか、左に行くべきか。
清児くん何処におるの?
清児くん、うちはどこに行けばええの?
何だか盲目の人の気分になる。
周りは全て違う星の人で自分だけが取り残されたような気分。
小夜子は泣きそうになってしまう。
学校にはいたくない。
清児が目覚めるのを見たい。
マヌケな声で、また夢物語のような愛の言葉を吐いてほしい、と思う。
富田と殴り合う最中に見せた残酷な眼差し。
自分に向けられる柔らかな眼差し。
青い空を見つめる真剣な眼差し。
それは全て透き通った黒い石の様に綺麗だった。
小夜子は空を見上げた。
校門の煉瓦の前にしゃがみ込んで、空に奇跡も神様も何もないことを知っていたけれど、祈る。
−清児くんを連れていかんで。とても綺麗だった眼差しを、奪わんで。
空は残酷さを感じるくらい美しい。
「あんた、めちゃめちゃキレイやん…。うちから…あのキレイな眼差しを奪わんといて…」
ブーッブーッブーッブーッ小夜子はすがるように携帯を取り出す。
『着信中:清児くん』
小夜子は軽く錯乱していた。
「清児くん?!清児…」
『…落ち着いて。』
「た、高村くん…?」
『今、どこ?』
「校門の煉瓦のとこ…」
『右に行くとうどん屋があるやろ?』
「…うん…」
『そこで待ってて。』
「清児くんは?!どうなったん?!」
『まだ、わからん。』
「何で?」
『検査中やけん、…小夜子ちゃん、落ち着いて?』
「無理や!うちも行く!」
『迎えに行くよ。今から。15分くらいでつくから、待ってて。』
「……。」
『いい?じゃあね。切るよ』
「…ん。ごめん。」
電話をきる。
小夜子は深呼吸をして、歩き出した。
ドライブインのうどん屋は長距離トラックが3台くらい停まっている。
黒の艶消しされたアメリカンバイク。
背もたれだろうか?スチールパイプが光っている。
その隣には赤のメタリックなガソリンタンクのついたアメリカン。
その隣のバイクには緑色のガソリンタンクに白い文字で『山』と書いてある。
小夜子はそれを見て少し笑った。
緑色のバイクにかけてあった青いメット、てっぺんに大きな白い☆マーク。
『清ちゃん専用』
という小さく書かれた汚い文字に縁取られている。
「ダサかろ?」
小夜子は驚いて不意にかけられた声の方を見る。
リーゼントが崩れて、少し気の抜けた龍が苦笑している。
「…高村くん…」
「お待たせ。」
「どーやってきたん?」
小夜子の問い掛けに龍は顎で何かを指した。
ミニパトが迂回をしている。
「?!」
「知り合いなんだ。」
「高村ー!スピードには気をつけろよー!!」
初老の警官が窓から怒鳴っている。
「はいはい!ありがとー」
龍はしっしっと手を振る。
「なんの?」
小夜子が驚いて龍を見る。
「俺とイチの所属してるバイクチームの先輩の保護なんたらっての?なんかそんなんで俺達の面倒も見てくれるんだよ。管轄もこっちだし。」
龍はバイクの鍵を取り出してかけてあったメットを取ると小夜子に投げた。
片側にあるメットを被りマシンに跨がり、エンジンをかけた。

「パトカーはいいね!めちゃくちゃ、スピード出してもらったおかげで、早くついた!」
龍は笑いながら言うが、小夜子は龍にしがみついていた。
かなりのスピードが出ている。
龍も、本当は焦っていた。












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