初デート
清児は家を飛び出し、赤いママチャリに跨がった。
母親のミニクーパも同時に発進した。
「いってらっしゃーい!」
窓から顔をだし、クラクションを2回鳴らした。
清児は振り向きもせず、手だけを振った。
いつものかったるい坂を越えるのも、全然平気だった。
あっと言う間に高宮駅に着いた。改札口までの階段も二段飛びで登った。
10時45分。清児はぜいぜいと肩で息をして時計を見上げた。
柄シャツを捲くり、両手のレザーのリストバンドを見た。
−完璧。清児は壁にもたれ、大きく息を吐いた。
売店でミニッツメイドのマンダリンオレンジを買った。
「あれ〜?浅倉じゃーん」
そう声をかけて来たのは、中山沙織と板倉美樹だった。
−げ。清児は舌打ちをしたい気分だった。
「私服初めて見た〜!」
「濱マイク意識してんの?」
板倉の言葉にムッとする清児。
「…してねーよ。」
「なんしよーと?うちら今から天神いくっちゃ〜ん」
−聞いとらん。清児はそう思いながら改札口を見た。
「…誰か待ってんの?」
沙織が聞いた。
「うん。」
「高村くんたち?」
「関係ないでしょ?」
「やなやつ。」
「ありがとー。」
「アハハ!浅倉ウケる!」
いきなり人が多くなり、次々と改札から出てくる。
その中に清児の愛しいおかっぱ頭が見えた。
「じゃあね!」
小夜子が改札から出て来て辺りを見回している。
清児は二人の間を擦り抜けて、小夜子の所に走った。
清児を見つけ小夜子が微笑んだ。
「嘘。あいつら付き合ってんの?」
美樹が驚いて沙織を見た。
沙織の顔は凍り付いていた。
清児と小夜子は逆の西出口から駅を出て行ったのを沙織と美樹は見ていた。
「…沙織?」
美樹が沙織を呼ぶ。沙織の顔に怒りが浮かんでいた。
「ごめんな、待たせたやろ?」
小夜子が申し訳なさそうに清児を見た。
「んんん。まだ約束の時間まで10分ある。」
「いつから待ってたん?」
「さっき。」
「ほんま?」
「うん。」
「清児くん、お洒落やね」
「小夜子ちゃんも超可愛い。」
「お…おかしくない?」
「すごく似合ってるから大丈夫。」
「…。」
シルバーチェーンがじゃらじゃらと清児が歩く度鳴る。
「…清児くんもかっこええよ…。」
二人とも顔が赤い。。
「雑貨屋、寄っていい?」
「あ、うん。」
「ここら辺、初めて?」
「うん。」
小夜子が頷いた。
「ん。」
清児が手を出す。
「…暑いかな?」
「…ええよ。」
小夜子が清児の手を握る。繋いだばかりなのに二人の手は少し湿っていた。
「俺の手、気持ち悪くない?」
「んん。うちの手かて…」
「柔らかくて気持ちいい」
二人は照れ臭そうに俯いた。
雑貨屋は冷房が効いていた。
二人とも体が火照っていたので一層気持ち良かった。
清児は座布団を買った。
財布を取り出す以外、ずっと手を繋いでいた。
清児の頭の中にはエンドレスリピートで忌野清志郎の
「サンシャインラブ」
が流れていた。 |