幸福な時間
何とか駅についた時にはもう空が淡い淡い紺色に染められていた。
「空ってキレイやね。」
清児は制服が血で所々汚れている。
「うん。地上にはない色やわ。」
小夜子も空を見上げる。
電車が来るまで20分ある。小夜子の降りる駅はここから5つで清児の駅は11こだ 。
少しでも長く小夜子と居られるのが清児は嬉しかった。
「あ、明日、何時にする?」
「ん〜…11時…早すぎ?」
小夜子は考えながら言った。
「わかった。」
「ん…。」
「好きだよ。」
清児が小さな声で言った。
「え?!」
小夜子が慌てて聞き返す。
「ん?」
清児はしらばっくれた顔で小夜子を見る。
「なんも…あらへん…。」
小夜子がうつむく。
「小夜子ちゃんが好きだー。」
また小声で言った。
「なんか言うてるやろ?」
小夜子が清児を少し睨む。
「え?」
また清児はしらばっくれた。
「清児くんのアホ。」
「あ。」
「なん?」
「今、俺を名前で呼びましたね?」
「しらへんわ!」
「清児くんのアホ!って言いましたね?」
小夜子が赤くなる。
「言うてへん!」
「じゃあ言って。」
「なんでよ。」
小夜子が少しむくれている。
「名前で呼んでたら、愛着湧くって言うやん?」
「何言ってん。」
「言霊のチカラを知らんね?俺の名前呼んで、好きって言って、早く好きになってよ。」
「清児くんが好き。」
小夜子はそう言って清児を見た。
清児は耳まで真っ赤にして両手で顔を覆っている。
それを見て小夜子は大笑いした。
「清児くんアホやわ!あははははは!」
「本当に言ってくれるって思わんかった…。」
参った、と清児は右手で口を押さえた。
「あ、電車がきたで。」
電車には人が疎らで、清児達が乗った車両はがら空きだった。
電車に揺られながら二人はぼんやりしていた。
「小夜子ちゃんの不意打ちは強烈やん…。」
溜息をつきながら呟いた。小夜子は悪戯っぽい笑いを見せる。
「今日も…疲れた…。」
清児は呟く。
「…うちも。」
清児は小夜子の肩に頭を乗せた。
「…なんかええな…こーゆーの。」
小夜子がはにかんだ。
「ん…。」
清児は眠り半分で頷いて、そのまま寝息をたて始めた。
(寝るの早ッ!暗くなったら寝てまうって子供みたいやわ。)
小夜子は苦笑いしながら思った。
|