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水色
作:森本エリ



何気ない前夜


「ただいま〜。」
清児は玄関を開けて、靴を脱ぐとキッチンに向かった。
「お帰り。遅かったね。あんた帰宅部でしょうが。」
母親が笑いながら清児を見た。
「帰宅部の一環として寄り道しよった。」
清児は冷蔵庫を開けて、中を物色した。
「チェリーパイやん!」
母親が作る、チェリーパイは彼の大好物だ。
「ご飯の後にしなさいよ」
「ちっ!」
清児は牛乳をコップに注ぎ込み、それを持って、
二階の自分の部屋に上がった。
机の上に牛乳を置いて、制服を脱ぎ捨て、よれよれのカーキのシャツとお気に入りのジーンズに着替えて、ベッドに腰掛けた。
CDコンポの電源を入れて、再生をした。
彼の好きな、“ルースターズ”ベスト版を最近、親友の龍に借りて、録音したものだ。
タイトル通りどうしようもない恋の唄を口ずさみながら、清児は数学の宿題を思い出した。
彼の通う私立の高校は、はっきり言って、悪ガキのたまり場だ。
小学校の頃からの付き合いがある龍こと高村 龍哉も 悪ガキだ。
バイクと音楽が好きで、最近、中免をとった。
休みでもない日に、仲の良い4人で、海を見に行ったりする。
清児は、数学が嫌いだ。
出来ればなくなってもらいたいほど、嫌いだ。
誰かに写させてもらおう。そう決めて、煙草を取り出した。
彼は未成年で今、法律を犯している。
清児は火を付けて窓を開け、煙を吐いた。
「月、キレー!」白く浮かぶ三日月に彼は魅入った。
ブランキージェットシティの”ガソリンの揺れかた”が鳴った。
龍からのメール受信音だ。『件名なし』
『イチが兄貴から裏モノAVをパクった。お前見る?』
それだけかよ!
清児は思わず笑った。
『Re:件名なし』
『お前みた?』
返信。
しばらくしてまたブランキージェットシティが鳴る。
『Re:Re2:件名なし』
『女けっこー可愛いぜ。』清児は頷いて、また返信する。
『Re:Re2:Re:件名な』『じゃあ見る。お前明日の数学の宿題、やってる?』〜送信。
いきなり、着信が鳴る。
『ロメオ』は龍の着信音だ。
「もしもし?」
『やってねぇよ。清児もしてねぇよな?』
「うん。明日誰かに写させてもらおうと思ってる。」
『やっぱな。あ、明日転校生くるらしーぜ。』
「マジで?!」
『中山が言ってた。』
「ふーん。」
『中山って聞いたら素っ気なくなるよな、お前。』
「あの女は好かん。」
『まぁまぁ、そんなん言うなって。じゃ、俺も宿題は明日誰かに写させてもらおう。また明日な。』
「おう。」
コイツまた酒のんでるな。清児は苦笑して携帯をたたんだ。












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