タイムリミット
6時間目、無駄に疲れて清児は寝ていた。
まったく、何しに学校に来ているのかと思われるだろうが、清児自身にも何のために学校に来ているかわからないのだ。
小夜子がこっそりと清児のシャツを引く。
小夜子センサーが過敏に反応して清児は目を覚ます。
一瞬なにがなんだかわからなくなり、混乱したが、小夜子の困ったような優しい微笑みが正気にしてくれた。
『怒られるで!先生チェックしてたよ。』
『ありがとう。』
清児は眠い眼を擦りながら、重い頭を掌で支えた。
ちらっと小夜子を見る。
小夜子も清児を見た。
お互い、少し笑いあった。
小夜子の三つ隣、ドア側の一番後ろの席の中山沙織が二人を見ていた。
そして小夜子を冷たい眼で見ている。
「超ムカつく…」
小さく呟いた。
清児の笑顔が向けられるのは、あの三人以外になかった。
クラスの女子と自分から話すことなんてしたことなかった癖に。
(小夜子が羨ましい。)
生まれて初めて他人を羨んだ。
そして清児の事をこんなに好きになっていたのかと自分でも驚きだった。
小夜子と話す時の清児は、無防備な顔だ。うろたえていて、いたいけで、熱っぽい。
こんな色気づく少年の顔が沙織の心を余計に激しく掻き乱す。
沙織の隣の席にいたイチは沙織の異変に気付いている。勿論、清児が気付くはずがない。
彼に余計なものに目を向ける余裕などない。
イチは少し、嫌な予感がした。
(こぇーな。美少女ちゃん)まぁたいしたことにはなるまいと高を括った。
(つーか居眠りを始めた。)
6時間目が終わり、ホームルームが始まった。
清児の緊張は高まる一方だ。
「浅倉君は数学の先生から宿題を出すように言われてます!しっかりやってくださいね!」
脂肪の塊が刺々しい口調でいう。
清児はそれに構う余裕もない。大人しく頷いた。 |